はじめに:ペットシッターで成功するには?
動物が好きな人にとって、「ペットにご飯をあげて、散歩をして、それでお金がもらえる仕事がある」と聞けば、うらやましく感じるかもしれません。
たしかに、わたし自身も動物が大好きです。動物と過ごす時間がそのまま仕事になるというのは、本当にありがたいことだと思っています。
それに、個人開業であれば、基本的にすべてをひとりで行うため、自分の考えで仕事を組み立てられる自由さもあります。
ですが、ペットシッターは、動物の命と、保護者さんの大切な家(財産)を預かる仕事です。
責任は決して軽くありません。
ただ『動物が好き』という気持ちだけで、長く続け、成功するのは難しいと感じています。
ちなみに『ペットシッターとして成功している』の定義は人によって違うと思いますが、わたしにとっての成功とは、『ペットシッターの仕事だけで生活を成り立たせながら、ご依頼くださった保護者さんとそのペットに安心を与えられている』状態のことを指します。
今回は、わたしが現場で学び、考える『ペットシッターとして成功するために大切だと感じている心得』を5つご紹介します。
興味があればお付き合いください。
心得その1:動物ファーストの姿勢を持つ
何よりも優先すべきは、ペットの安全と健康です。
保護者さんがペットシッターに最も期待しているのも、そこに尽きるでしょう。
たとえば、事前の打ち合わせで『散歩に連れて行くこと』が決まっていたとしても、当日が豪雨だったり、日差しが考えていたよりも和らいでいなかったりすることがあります。そのとき優先すべきなのは、約束そのものではなく、動物の安全です。
外の状況が悪ければ、室内遊びに切り替える。保護者さんのご要望であっても、動物たちの健康や命に関わる可能性があることは避ける。
もちろん、その際は保護者さんには現状を丁寧に説明し、納得していただく姿勢が大切です。
動物の気持ちを読む力を磨く
もうひとつ重要なのは、動物の気持ちを理解しようとする姿勢です。
言葉にすれば簡単ですが、実際にはとても難しい。「これは嬉しいときのサイン」と一般的に言われている動作でも、すべての子に当てはまるとは限らないからです。
一般論をそのまま当てはめると、かえって見誤ることもあります。
では、どうするかというと……。地道に観察し、試行錯誤を重ねるしかありません。
たとえば、

水飲み台のそばに行くのに飲まない

水を替えてほしい? お湯にしてほしい?

眠そうなのに寝ない

ベッドの位置が落ち着かない? 何か気になるものがある?
こうした小さな違和感に気づき、仮説を立て、確かめていく。
残念ながら、動物の声を直接聞くことはできません。けれど、彼らは案外わかりやすく表情や仕草で気持ちを表現してくれます。
その一瞬を見逃さないために、シッティング中はその子だけに神経を集中させること。
保護者さんとの契約に盲目的に従おうとするのではなく、目の前の動物の一挙手一投足にすべての意識を向け続ける。動物ファーストの姿勢を持つことこそ、ペットシッターに一番必要な心得だと、わたしは思っています。

心得その2:保護者との信頼関係を築く
わたしが言うのも何ですが、見知らぬ人を自宅に招き入れるのですから、ペットシッターを頼むというのは、かなり勇気のいる行為だと思います。
たとえ契約をしていただけなかったとしても「この人は自宅に呼んでも良い」という判断をしてくださったわけですから、誠心誠意その信用を裏切らないよう対応しなければなりません。
とはいえ、はじめての顔合わせ・打ち合わせで、いきなり100%の信用を得ることは、まず無理です。
じつは、わたし自身、簡単に人を信用しない(できない)性格。だからというわけでもないのですが「自分だったら、この話し方で信用できるだろうか」など、常に自問自答しながら対応しています。
初回打ち合わせで心がけていること
わたしがとくに意識しているのは、次のような点です。
さらに、細かいことですが、
こうした姿勢も、積み重ねれば信頼につながると感じています。
ペットとの初対面も大切
また、可能であれば、本格的に仕事を引き受ける前に、保護者さんがいる状態でペットと会わせてもらいましょう。ペットシッターに相対したときのペットの反応を保護者さん自身に見てもらうことが大切だからです。
犬さんは会ってすぐに懐いてくれる子も多いのですが、猫さんや鳥さんなどでは、逃げたり隠れたりしてしまう子もしばしば。
ペットシッターと言えば、
というイメージをもたれる方も多いかと思いますが、さすがに会ったその日にすべての動物と仲良くなれるわけではありません。
はじめての対面時、動物たちが隠れてしまうような反応でも、まったく問題はありません。
その状況を実際に目の前で保護者さんに見ていただき「この様子だと、わたしひとりのときは隠れてしまうかもしれません」と事前に共有しておけば、後日の報告メールで同じ状況になっても、「やっぱり、あのときと同じね」と安心してもらえます。
このように『予測を共有しておく』ことは、不安の軽減につながります。

ごくまれに、保護者さんがいない寂しさからか、事前打ち合わせのときは隠れていた子が近くに来て遊んでくれることもあります。これは嬉しい誤算ですね。保護者さんに写真を送ると、びっくりされると同時に喜んでいただけます。

報告・連絡・相談は最重要事項
ご依頼を受けたあとは、こまめな報告・連絡・相談が欠かせません。鍵の受け渡しから返却まで、保護者さんが不安を感じる時間が一秒も生じないよう、懇切丁寧に連絡を取るように心がけましょう。
ただし、複数のご家庭を回っている以上、常に即時返信できるとは限りません。
そのため、「他のお宅でお世話中は、そのご家庭の連絡を優先しています」とあらかじめお伝えしておくことも重要です。

Aさんの家のお世話に入ったときには、Aさんからの連絡しか取らないように、ほかの子のお世話に入っているときは、その子の保護者さんからの連絡しか取らないようにしているのでご容赦くださいね

了解しました!
先に伝えておくことで、不安や不満の芽を摘むことができます。
信頼関係は、特別な言葉よりも、日々の誠実な対応の積み重ねによって築かれるものだと感じています。
心得その3:トラブル対応力を身につける
ペットは生き物です。不測の事態は、いつでも起こり得ます。
体調不良やケガを見つけたときにどう対応するのか。これは必ず、お世話に入る前に保護者さんと話し合っておくべき重要事項です。
体調急変への対応
わたしの経験でいえば、特に言付けはなかったにもかかわらず、到着するとお世話対象の犬さんが血便をしていたことがありました。前日までは問題なかったとのことで、まさに急変です。
その日は幸いにも後の予定がなく、その子のかかりつけの動物病院も開いていたため、車で病院へ連れて行くことができました。
診察中は電話をつなぎ、獣医師と保護者さんとで治療方針を決めてもらいました。
しかし、これは『たまたま良い条件が揃った』ケースです。
こうした状況も十分にあり得ます。
だからこそ、
など、不測の事態への対応と責任の所在を事前に明確にしておくことが大切です。
鍵の管理は最重要事項
もうひとつ、トラブルになりやすいのが『合い鍵』です。
屋内飼育の場合、保護者さんの自宅の鍵を預かることになります。
鍵は小さく、紛失リスクも高い。だからこそ、徹底した管理が必要です。
また、契約日から依頼日までの間に鍵の受け渡しが発生しますが、スケジュールを詰めすぎて、受け取りの時間が確保できないという事態も避けなければなりません。
わたしの経験ですと、自宅の鍵が1本しかないというご家庭がありました。
こういう場合、保護者さんが自宅を出発して、市内を出るまでのタイミングで時間と場所を示し合わせて会う必要があるわけですが、これがなかなか限られているので大変です。
このときは、その方との契約をする段階で、その時間帯に別のお世話が入っていることが分かっていたため、事情を説明したところ、その現場まで鍵を届けてくださることになり、契約へと進みました。
もしも、この鍵の受け渡しができなければ、お引き受けをお断りしたと思います。
合鍵の保管にも細心の注意を
わたしも繁忙期などで仕事が重なるときには、10本近い合い鍵を同時に預かることもあります。
自宅で合い鍵を保管する際には、
など、最低限のセキュリティ対策は必要です。
ペットシッターは『動物の命』と同時に『保護者さんの財産』も預かる仕事です。自分のひと手間で避けられうるトラブルの芽はしっかり摘んでおく意識をもつことが大切です。

トラブルは起きないのが理想ですが、ペットの病気や天災など不測の事態はいつだって起こり得ます。トラブルが起きたときに慌てない準備こそが、プロとしての責任だと考えています。
心得その4:時間管理とスケジュール調整を徹底する
ペットシッターの仕事において、時間管理は生命線です。なかでも重要なのが移動時間の把握です。
働く地域によって、車・自転車・公共交通機関など移動手段はさまざまでしょう。どの手段であっても、実際にどれくらい時間がかかるのかを正確に把握し、余裕を持ってスケジュールを組むことが欠かせません。
遅延は必ず起こる前提で
どれだけ気をつけていても、交通事故や渋滞、悪天候などで遅れてしまう可能性は常にあります。
少しでも到着が遅れそうな場合は、必ず早めに保護者さんへ連絡を入れます。
『遅れた』という事実よりも、『連絡がなかった』ことのほうが不安を生みます。
また、到着が遅れたからといって、お世話の時間を削るわけにはいきません。そのぶん、後の予定がずれ込むことになります。以降のご家庭にも状況が分かり次第、連絡を入れましょう。
『事故などの不測の事態さえ起こらなければ10分前には着いている』くらいの余裕を持って行動できるのが理想ですね。
キャンセルとの向き合い方
また、キャンセルについての考え方ですが、わたしは常連の方からはキャンセル料をいただかないようにしています。
生き物が相手ですから、急な体調不良はどうしても起こります。「予約しているから」と無理をさせるのは本意ではないからです。
なので、まれに自宅を出発した後にキャンセルの連絡が入ることもあります。
距離のあるお宅に向かっている途中で予定がなくなると、正直に言えば気持ちが沈むこともあります。
けれど、そういうときは「思いがけずに休みができた」と気持ちを切り替える。
メンタル管理もまた、長く続けるための重要なスキルです。

でもまあ、正直に言うと、キャンセル料ゼロは結構痛手です。これからペットシッター業を始めようという方には推奨はしません(笑)
ダブルブッキングは絶対に避ける
件数が増えてくると、最も怖いのがダブルブッキングです。
「その日時で大丈夫です」と伝えた瞬間から、保護者さんは旅行や予定の準備を進めます。あとから「やはり無理でした」は通用しません。
訪問時間が絶対に重ならないよう、契約の段階で慎重に確認すること。
カレンダー管理は二重三重にチェックするくらいでちょうどいいと感じています。
時間を守ることは、信頼を守ること。
ペットシッターにとって、時間管理は技術ではなく責任の一部です。
心得その5:リピーターを増やす工夫をする
どれだけ新規のお客さまを集められたとしても、その方がリピーターになってくれなければ、事業として安定させるのは難しいものです。
依頼の連絡をいただいたら、とにかく丁寧に、真摯に対応すること。
ひとつひとつのお世話に手を抜かず、保護者さんのご希望は一言一句漏らさないようにメモを取る。
「またお願いしようかな」と思っていただけるかどうかは、特別な演出ではなく、基本姿勢の徹底にかかっています。

慣れが最大の敵
最初のうちは、誰しも必死です。
ところが、件数が増え、依頼が安定してくると、どこかで慣れが生まれます。
初心忘るべからず、です。
常に、目の前の保護者さんを『一人目のお客様』だと思って向き合うこと。
リピーターになっていただくための一手間を惜しまないことが、結果的に事業を支えてくれます。
リピーターが増えると何が変わるか
リピーターが増えると、収入が安定しやすくなるのはもちろんですが、仕事そのものが圧倒的にやりやすくなります。
動物の性格や癖が分かっているため、お世話の段取りも組みやすく、時間の予測も立てやすいですし、動物にとっても、何度も会っている人間のほうがストレスは少ないはずです。
さらに、リピーターがつくと、広告費がほとんどかからなくなります。なぜなら、リピーターさんたちが無意識のうちに雑談でペットシッターのことを宣伝してくれるようになるからです。

あれ? 今日はワンさんはお留守番?

今日はね、シッターさんに見てもらってるのよ
実際、わたしが広告として持っているのは無料のブログのみ。
繁忙期には月にほとんど休みがない状態になることもありますが、広告に大きな費用をかけたことはありません。ごくまれに、必要な方へチラシをお渡しする程度です。
リピーターが増えれば収入が増えるだけではなく、広告費などの経費も減らすことができるようになるわけです。
リピーターの確保は事業継続の絶対条件であることが分かってもらえるかと思います。
もし開業初期に広告を出すなら、わたしは紙のチラシをおすすめします。
『手元にあって、いつでも好きな時に読める』のはもちろんのこと、デジタル化が進んでいる今だからこそ『次に見たときにも修正や改ざんがされている恐れがない』というのは安心材料になるのではないかと思うからです。
チラシはCANVAなどを使って自作するのも良いですし、わたしのようにココナラなどを使ってプロに依頼するのもひとつの方法です。
ただし、広告には注意も必要です。
開業したばかりの頃は「必ず儲かる」「確実に仕事につながる」といった甘い言葉で近づいてくる輩がどこからか湧いてきます。媒体を選び損ねれば、お金だけかかって実益がほとんど出ないこともあります。
事業を続けるためのお金を無駄に使わない判断力も大切です。
まとめ:心得を意識して長く続けよう
ペットシッターは、『信用』がなければ続かない仕事です。
どれだけ動物が好きでも、どれだけ知識や技術があっても、信頼を得られなければ、事業として成り立たせることはできません。
その信用を得るために、わたしが日々心がけているのは、
この5つの心得でした。
もちろん、仕事を続けていくなかで、それぞれの経験から『自分なりの心得』が生まれてくるはずです。
その心得を磨き、実践し続けること。誠実に積み重ねた信用と信頼は、いずれ確実に安定した仕事につながっていきます。
最後までお付き合い、ありがとうございました(’ü’)






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