ペットシッターになりたいと思ったとき、
「動物が好きならできる仕事なのかな」
「未経験でも目指せるのかな」
「どんなスキルを身につけておけばいいのかな」
と、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
ペットシッターは、保護者さんの代わりにペットのお世話をする仕事です。
動物が好きな気持ちは、とても大切です。けれど、仕事として続けていくためには、動物への愛情だけでなく、観察力や判断力、保護者さんとのやり取り、スケジュール管理など、いくつかの力が必要になります。
この記事では、ペットシッターに必要なスキルや、開業前に身につけておきたい考え方について解説します。
ペットシッターは「動物が好き」だけでは難しい
ペットシッターを目指すうえで、動物が好きという気持ちは大切です。
犬や猫と関わることが好き。
動物の様子を見るのが好き。
動物が安心して過ごしている姿を見るとうれしい。
そうした気持ちは、ペットシッターとして働くうえで大きな支えになります。
とはいえ、動物が好きという気持ちだけで、仕事として続けていけるほど楽な仕事でもありません。
ペットシッターが関わるのは、ペットのお世話だけではありません。
保護者さんの留守中の暮らしや、ご自宅の安心にも関わる仕事です。
そのため、動物への愛情に加えて、責任感や慎重さも必要になります。
好きな気持ちは大切だが、それだけでは仕事として続けにくい
動物が好きな人は、ペットシッターの仕事に向いている面があります。
ペットの小さな変化に気づきやすかったり、動物のペースに合わせて待てたり、怖がっている子に無理に近づかずに見守れたりするからです。
一方で、仕事として考えると「動物が好き」だけでは足りない場面もあります。
たとえば、次のような場面です。
ペットシッターの仕事は、かわいい動物と楽しく過ごせばいいだけではありません。
汚れ仕事もしますし、悪天候や長距離の移動などでも地味に体力を削られます。人によっては、保護者さんとのやり取りや散歩先での他人への対応などがストレスになる人もいるかもしれません。
動物が好きという気持ちは仕事を始めるにあたっての重要な土台となる部分ですが、仕事を続けていくためには、その土台の上に「スキル」という柱をしっかり立てていくことが大切です。
命を預かる仕事としての責任感が必要
ペットシッターは、ペットの命を預かる仕事です。
ひとつひとつのお世話は、日常的なことに見えるかもしれません。けれど、そのどれもがペットの健康や安全につながっています。
水の交換を忘れてしまえば、ペットが十分に水を飲めないことがあります。
トイレの状態を見落とせば、体調の変化に気づけないことがあります。
散歩中の確認が甘ければ、脱走や事故につながる可能性もあります。
今、わたしがしようとしていることは、ペットにとって安全か。保護者さんの希望とずれていないか。
そうしたことを考えながら、責任感をもって慎重に行動することが、ペットと保護者さんの「穏やかな、何でもない日々」を守ることにつながります。
ペットシッターに必要な基本スキル
専業ペットシッターのわたしが考える「ペットシッターに必要な基本スキル」は、特別な資格や才能ではありません。
日々のお世話を正確に行う力。
ペットの様子をよく見る力。
異変に気づいたときに、必要な相手へつなぐ力。
こうした努力で補える力の積み重ねが、ペットシッターとしての信頼につながる部分だと思っています。
動物の体調や行動を観察する力
まず、ペットシッターに必要な力のひとつが、観察力です。
ペットは言葉で体調や気持ちを説明できません。
そのため、食欲や排泄の様子、歩き方、呼吸、表情、しぐさなどから、「違和感はないか」「不自然に感じる部分はないか」を読み取る必要があります。
たとえば、次のような変化です。
こうした変化に気づくためには、事前の打ち合わせで「普段の様子」を丁寧に聞いておくことが大切です。
普段の様子を知らなければ、当日の変化にも気づきにくくなります。
また、犬や猫の行動心理や感情表現について学んでおくことも役に立ちます。
すべての動物が同じようなしぐさをしてくれるとも限りませんが、しっぽの動き、耳の向き、目線、体のこわばり、鳴き方などから、ペットの不安や緊張に気づけることもあります。
食事の用意・トイレ清掃・散歩などを正確に行う力
ペットシッターの仕事では、保護者さんから依頼されたお世話を正確に行う力も必要です。
依頼されるお世話は、食事の用意、水の交換、トイレ掃除、散歩など、どれも日常的なものです。ただ、日常的なお世話だからこそ、家庭ごと、ペットごとの細かな違いがあります。
こうした内容は、ご家庭によって違います。
お世話をする人が違う、という大きな違いがあるなかで、お世話の仕方も違えば、ペットにより大きなストレスを与えることになってしまいます。
「自分ならこうする」ではなく、「そのご家庭ではどうしているか」を確認して、ペットが慣れた方法で、いつもどおりのお世話を正確に行う必要があります。
たとえば、トイレ掃除ひとつでも、
など、各家庭によって細かな違いがあります。
ペットシッターに必要なのは、事前の打ち合わせで決めたことを、決められた方法で、丁寧に正確に行う力です。
「いつもと同じ」を守ることは、ペットの安心にもつながります。

異変に気づき、必要な相手につなぐ力
ペットシッターは、獣医師ではありません。そのため、病気を診断したり、治療をしたりすることはできません。
けれど、「これはいつもと違う」「動物病院に相談した方がよいかもしれない」という違和感をもったり、ちょっとした変化に気づくことができる力は大切です。
たとえば、
などの大きな異変はもちろん、
などの小さなことでも、それに気づき、保護者さんへお伝えすることができれば、必要に応じて動物病院へつなぐことができます。
ペットシッターに必要なのは、すべてを自分ひとりで解決する力ではありません。
小さな異変に気づき、必要に応じて保護者さんや動物病院など、適切な相手につなぐ力です。
保護者さんとの信頼を作るスキル
ペットシッターは、ペットと関わる仕事ですが、保護者さんとの信頼関係がなければ、仕事として成り立ちません。
保護者さんは、大切なペットと留守中の自宅をペットシッターに任せます。
そのため、
「この人なら安心して任せられそう」
「きちんと確認してくれそう」
「留守中も丁寧に対応してくれそう」
と思ってもらうことが大切です。
事前打ち合わせで聞き逃さない力
信頼を作るために大切なのが、事前打ち合わせで聞き逃さない力です。
実際のお世話はシッターひとりで行います。事前の打ち合わせで聞き漏らしがあると、その都度、保護者さんへの連絡が必要になったり、お世話が先に進めなかったりしてしまって、効率よく作業を進めることができません。
事前の打ち合わせでは、保護者さんから普段しているお世話の内容を聞くだけでなく、こちらから必要な部分の質問をすることも大切です。
たとえば、次のような内容は確認しておきたいところです。
保護者さんにとっては当たり前のことでも、初めて訪問するペットシッターにはわからないことはあって当然です。
命を預かる仕事では、丁寧な確認が安心につながります。事前にしっかり確認しておくことで、当日の迷いを減らすことができます。
確認や質問が多いと、保護者さんに面倒だと思われるのではないかと心配になる方もいるかもしれません。たしかに、同じ質問をくり返していたら不信感にもつながりかねません。
「初回打ち合わせで確認したいこと」など、自分なりのチェックリストを作っておくと質問のダブりも漏れもなく安心です。
わかりやすく報告する力
ペットシッターには、わかりやすく報告する力も必要です。
保護者さんは、留守中のペットの様子を見ることができません。
そのため、お世話の報告は、文章の書き方次第で、保護者さんに安心感を与えることも、不安にさせてしまうこともできてしまいます。
たとえば、「とくに問題ありませんでした」だけでは、保護者さんにはペットの様子は伝わりにくいです。
もちろん、本当に問題がないことはよいことです。ただ、保護者さんが知りたいのは「問題がないとはどんな意味か」「どういうふうに過ごしていたか」のはずです。
たとえば、次のように書くと、様子が伝わりやすくなります。
「朝の訪問時に用意していたごはんは半分ほど(□g)食べています。お水は器の目盛りで見ると、朝より少し減っていました。トイレにはおしっこが1回分ありましたが、うんちはしていません。訪問時は隠れていましたが、今は、すぐそばのソファの上でわたしがトイレ掃除をしている様子を見守ってくれています。」
文章が上手である必要はありません。
大切なのは、保護者さんが知りたいであろう情報を、わかりやすく伝えることです。
写真を添える場合も、ただかわいい写真を送るだけでなく、ペットの様子が伝わるものを選ぶとよいでしょう。
約束を守り、勝手な判断をしない力
保護者さんとの信頼の構築に、特別なサービスは必要ありません。ペットシッターとして、そして人として基本的なことを丁寧に続けることで少しずつ作られます。
たとえば、
こうしたことです。
どれも当たり前のように見えるかもしれません。
けれど、留守中の他人の家に入るペットシッターの仕事においては、この「当たり前」がとても大切です。
特に注意したいのは、勝手な判断です。
「この方がよさそうだから」
「前のご家庭ではこうしていたから」
「少しくらいなら大丈夫だろう」
という判断で、保護者さんの許可なく行動してしまうと、後々トラブルにつながることもあり得ます。よかれと思ってしたことで、保護者さんに不安を与えてしまっては本末転倒です。
だからこそ、迷ったときは確認することが大切です。
約束を守る。
勝手なことをしない。
必要なことは確認する。
この積み重ねが、保護者さんからの信頼につながります。
ひとりで働くために必要な管理スキル
会社に所属して働く場合は、予約管理や問い合わせ対応を会社が行ってくれることもあります。
しかし、ひとりで開業する場合は、問い合わせ対応、スケジュール調整、鍵の受け渡し、移動時間、報告、請求、記録管理なども自分で行うことになります。
そのため、動物のお世話以外の自己管理に関するスキルも大切です。
スケジュールを管理する力
ペットシッターにとって、スケジュール管理は何より重要です。
なぜなら、同じ時間にふたつの依頼は絶対に入れられないからです。
新しい依頼を受けるときは、単にその時間が空いているかどうかだけでなく、次のような点にも気を配る必要があります。
ペットシッターの仕事は、動物のお世話をしている時間だけが仕事ではありません。移動時間、準備時間、連絡時間、記録を書く時間も含めて考える必要があります。
予定を詰め込みすぎると、ひとつの遅れが次の訪問に影響します。
時間に追われると、確認が雑になったり、報告が遅れたりすることもあります。
安全に仕事を続けるためにも、無理のないスケジュールを組む力は欠かせません。

自分の体力とキャパシティを把握する力
ペットシッターとして長く働くためには、自分の体力とキャパシティを把握することも大切です。
依頼が入るようになってきたとき「できるだけ引き受けたい」と思う気持ちはわかります。特に開業したばかりの時期は、せっかくいただいた依頼を断るのが不安になることもあります。
けれど、仕事を詰め込みすぎると、体力だけでなく判断力や注意力も落ちてしまいます。
ペットシッターは、ペットの命を預かる仕事です。
無理をしすぎてミスをしてしまえば、ペットにも保護者さんにも迷惑をかけてしまいます。
そのため、
といったことを、自分で考えておく必要があります。
これは、体力だけでなく、メンタル面の余裕も同じです。時間的には入れられそうでも、気力や集中力に不安がある場合は、無理をしない判断も必要です。
仕事を長く続けるためには、「頑張ればできる」ではなく、「心に余裕をもって働けるか」を基準に考えることが大切です。
対応範囲を決める力
ペットシッターには、対応範囲を決める力も必要です。ここでいう対応範囲とは、対応エリアだけのことではありません。
こうした「事業上の線引き」のことです。
たとえば、犬と猫を中心に対応するのか、小動物や爬虫類にも対応するのかによって、必要な知識は変わります。
また、早朝や夜間、年末年始、長距離移動などをどこまで引き受けるかによって、働き方も大きく変わります。
対応範囲を広げれば、依頼の可能性は増えるかもしれません。けれど、自分が責任を持てない範囲まで広げてしまうと、トラブルにつながることがあります。
ホームページや名刺、事前説明の中で、対応できること・できないことをわかりやすく伝えておくと、後からの行き違いを防ぎやすくなります。
すぐに完璧でなくても、学び続ける姿勢が大切
ペットシッターに必要なスキルは、一度資格試験に合格すれば終わり、ではありません。
犬や猫の健康、行動、食事、住環境、老齢期のケアなど、学ぶべきことはたくさんあります。
また、実際に仕事を始めてみると、本を読むだけ、資格を取るだけではわからなかったことに出会うこともあります。
だからこそ、ペットシッターには学び続ける意欲と姿勢が大切です。
苦手な部分は専門家につなぐ
ペットシッターの仕事においては、自分ひとりで解決しようとする責任感も大切ですが、自分ではわからない、専門範囲外である部分を専門家につなぐ判断力も重要です。
病気やケガの判断が必要なときは、動物病院へ。
専門的なしつけが必要なときは、ドッグトレーナーへ。
法律や契約に関わることは、必要に応じて専門家へ。
たとえば、犬の引っ張り癖や拾い食いなどについて相談されることもあるかもしれません。しかし、専門的なしつけは、中途半端に関わるとかえって難しくなることもあります。
そのような場合は、無理に自分で解決しようとせず、訓練士などの信頼できる専門家を紹介する方がよいこともあります。
医療についても同じです。ペットシッターは獣医師ではありません。できるのは、異変に気づき、保護者さんに伝え、必要に応じて病院につなぐことです。
ペットに起こる全部のことを「自分で何とかしなければ」と抱え込みすぎないこと。
これも、ペットシッターに必要なスキルのひとつだと、わたしは思います。
経験を積みながら少しずつ身につければよい
ペットシッターとして働き始める前から、すべての知識やスキルを完璧に持っている人は多くありません。それに、経験を積んでいくことでしか身につけられない力もあります。
今回書き出した「わたしが思うペットシッターに必要なスキル」は次のとおりでした。
- しっかり観察する力
- 頼まれたことを正確に行う力
- 聞き逃さない力
- 正確に報告する力
- 予定を管理する力
- 自分の限界を知る力
- 学び続ける力
どれも特別な才能ではなく、努力したり、意識したりすることによって手に入れられるものばかりです。
最初から完璧である必要はありません。
大切なのは、自分に足りない部分を自覚し、少しずつでも身につけていこうという気持ちです。
動物が好きという気持ちを、仕事として形にしていきたい。
ペットが安心して過ごせる時間を支えたい。
保護者さんが安心して外出できるように手助けしたい。
そう思えるのであれば、ペットシッターを目指す価値は十分にあると思います。
自分に向いているかどうか不安な方は、ペットシッターに向いている人・向いていない人についてまとめた記事も参考にしてみてください。
また、未経験からペットシッターを目指せるのか不安な方は、未経験者向けの記事もあわせて読んでみると、開業までの流れを考えやすくなると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






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