ペットシッターの仕事では、訪問先に着いてから帰るまでのあいだに、たくさんの確認や作業を行います。
ひとつひとつは難しい作業ではなくても、限られた時間の中で行うとなると、思った以上に気を使います。
とくに開業したばかりのころや、はじめてのお宅へ訪問するときは、「何から始めればいいのか」「どのタイミングで報告すればいいのか」と迷うこともあるかもしれません。
そのようなときに役立つのが、自分なりの訪問ルーティンを決めておくことです。
預かる動物の種類や頭数によっても仕事の内容は変わりますが、お世話の開始時と終了時に必要な流れは毎回同じです。
この「同じ流れの部分」をルーティン化するようにしておけば、作業漏れや報告漏れを防ぎやすくなります。慣れてきたころのうっかりミスを減らすためにも、訪問時の流れはあらかじめ決めておくと安心です。
この記事では、ペットシッターを目指す人に向けて、到着後から退出までの訪問ルーティンと、報告の考え方について整理していきます。
ペットシッターの仕事はルーティン化しておくと安心
ペットシッターの仕事は、毎回まったく同じ内容になるわけではありません。
犬のお世話では散歩が中心になることもありますし、猫のお世話ではトイレ掃除や食事の管理が中心になることもあります。小動物や鳥、爬虫類、魚などの場合は、温度管理や餌の内容など、犬猫とは違う確認が必要になることもあります。
ただし、動物の種類や依頼内容が違っても、基本の流れには共通する部分があります。
たとえば、以下のような流れです。
このような流れを自分の中で決めておくと、お世話時に迷いにくくなりますし、作業のし忘れや漏れも予防できます。
もちろん、実際のお世話では予定どおりに進まないこともあります。ペットが隠れて出てこなかったり、フードを食べなかったり、トイレ以外の場所に排せつしていたりすることもあります。
それでも、基本のルーティンがあれば、「まず何を確認するか」「次に何をするか」を落ち着いて考えやすくなります。
ルーティンは手抜きではなく、ミスを減らすための仕組み
「毎回同じ流れで作業する」と聞くと、機械的な印象を持つ人もいるかもしれません。
しかし、ペットシッターの仕事におけるルーティンは、手を抜くためのものではありません。むしろ、丁寧に仕事をするための仕組みです。
たとえば、帰る前の確認を毎回同じ順番にしておけば、「窓は見たけれど、空調を確認し忘れた」というミスを防ぎやすくなります。
慣れてくるほど、作業は早くなります。
しかし、慣れてくるほど、確認が雑になることもあります。
だからこそ、最初のうちから自分なりの訪問ルーティンを作っておくことをおすすめします。

家の間取りはさまざまでも「玄関を開けて入る」「窓がある」「水道の蛇口がある」「エアコンなどの電気機器がある」「鍵を閉めて帰る」などは、どの家も共通です。
到着後のルーティン
訪問先に到着したら、まずは、ペットの状態確認と室内の様子の確認をします。
到着直後の状態を見ておく(できれば撮影もしておく)ことで、「訪問前からあったこと」と「訪問中に起きたこと」を分けて考えやすくなります。
まずペットの様子を確認する
到着したら、最初にペットの様子を確認しましょう。
確認したいのは、たとえば以下のようなことです。
もちろん、短い時間ですべてを詳しく診断することはできません。ペットシッターは獣医師ではないため、病気の判断をする立場でもありません。
ただし、「打ち合わせで聞いていた状態と違うかもしれない」と気づくことは重要です。
たとえば、「いつも玄関まで走ってくると聞いていたが来ない」「人が来ると隠れると聞いた猫が、部屋の真ん中でじっとしている」など、普段との違いがあれば注意して見ておきます。
室内やケージまわりの異変を確認する
ペットの様子を確認したら、あわせて室内やケージまわりも見ておきましょう。
たとえば、以下のような点です。
もし到着時点で水がこぼれていたり、カーペットに排せつしていたりした場合は、片づける前に記録を残しておくと安心です。
あとから「いつ、どのような状態だったか」を説明しやすくなります。
到着報告をする
ペットと室内の様子を確認したら、LINEやメールなど、事前打ち合わせで決めておいた方法で保護者さんへ到着報告をします。
たとえば、次のような内容です。
「ただ今、到着しました。○○ちゃんはソファの上で寝ていた様子ですが、声をかけると起きてこちらを見てくれました。室内に水のこぼれや吐いた跡などは見当たりません。これからお世話を始めます。」
このように、到着したことだけでなく、ペットの様子や室内の様子も簡単に添えると、状況が伝わりやすくなります。

到着時の写真を残す
到着してすぐ、ペットと室内の様子を確認した際、あわせて写真も撮影しておきましょう。写真には、保護者さんに様子を伝える役割と、自分の記録として残す役割があります。
撮っておくとよい写真には、たとえば以下のようなものがあります。
なお、写真を撮るときは、ペットに負担をかけないよう気を配ることを忘れないようにしてください。
犬の場合は比較的写真を撮りやすいこともありますが、猫や小動物では、カメラを向けられること自体がストレスになることもあります。
無理に追いかけて撮影することはせず、その子の性格に合わせて、記録はできる範囲で残すようにしましょう。
お世話の順番はルーティンよりも「その子次第」
到着後の確認が終わったら、事前打ち合わせで決めた内容に沿ってお世話を進めます。
ペットシッターの仕事は多くの場合、お世話にあたる時間が限られているので、事前の打ち合わせでは最優先で行うことと時間が余ったらしておくことまで決めておくことが重要です。
たとえば、以下のような、優先順に並んだ「してほしいこと一覧」を聞き取り、
- 食事の用意
- 飲み水の交換
- トイレ掃除
- 散歩
- ケージやサークルの清掃
- ブラッシング
- 遊び相手
- 空調や照明の確認
- 郵便物や宅配物の確認
- 植物の水やり
そして、実際に訪問したとき、優先度の高いもののうちで、できそうなものから行っていくことになります。
犬であれば、散歩を先にするのか、食事を先にするのか。
猫であれば、食事を用意してからトイレ掃除をするのか、先にトイレを確認するのか。
小動物であれば、温度確認を最初にするのか、給餌を先にするのか。
動物の種類や生活リズムによっても、適した順番は変わります。
このあたりのことは「その子次第」で変わってきますので、ルーティン化というよりは「その子にとって安全で、無理のない流れ」を考えることを優先して当日の流れを組み立てます。
報告のルーティン
ペットシッターの仕事では、作業そのものだけでなく、保護者さんへの報告も大切です。
保護者さんは外出先にいるため、家の中の様子を直接見ることができません。そのため、ペットシッターからの報告が安心材料になります。
報告は保護者さんのためだけでなく、自分自身のための記録にもなります。
いつ、何を行い、ペットの様子がどうだったのかを残しておくことで、あとから振り返りやすくなります。
報告する項目を決めておく
作業の順番などは、その子によって変えなくてはなりませんが、「いつ、どのようなタイミングで報告するか」といった手順はルーティン化することができます。
また、訪問中に毎回その場で報告文を考えるのは、意外と大変です。
そのためにも、あらかじめ報告する項目をテンプレート化しておくのは時短のアイデアとして最適です。
LINE報告や報告書のテンプレートを用意しておく
報告の負担を減らすには、テンプレートを用意しておくと便利です。
たとえば、到着時の報告であれば、次のような形です。
「ただ今、到着しました。○○ちゃんは□□で過ごしていました。室内に水をこぼした跡や吐いた跡は見当たりません。これからお世話を始めます。まずはお散歩に行ってきます。」
食事の報告であれば、次のように書けます。
「夕ご飯は、○○を□□g用意しました。△△分ほどで完食しました。動画のとおり、残さずきれいに食べてくれました。」
トイレ掃除の報告であれば、次のような形です。
「トイレを確認しました。おしっこ跡が○か所、うんちが○か所ありました。便の硬さや色に大きく気になる点はありませんでした。」
帰るときの報告であれば、次のようにまとめられます。
「□時になりましたので、これで帰ります。食事、水の交換、トイレ清掃については済みです。空調と電気をご指示どおりに設定しました。○○ちゃんは現在□□で落ち着いて過ごしています。これから戸締まりを確認して退出します。」
このように、基本の文章を作っておけば、訪問先ごとに必要な部分だけ変更できます。
文章を考える時間が短くなれば、その分ペットの様子を見る時間に使えます。

わたしはスマホのメモアプリに、このページの最後にある表のようなテンプレートを用意しておき、それを書き換えながら報告文に使用しています。
報告は安全を確保してから行う
保護者さんからできるだけリアルタイムでの報告を希望されているとしても、すぐに送ることだけを優先しすぎないよう気をつけなければいけません。
たとえば、散歩中にスマートフォンを操作すると、犬の動きや周囲の車、自転車、ほかの犬への注意が薄れてしまいます。
そのため、散歩中の報告は、できるだけ安全な場所に戻ってから行うようにしてください。
また、室内でも、玄関のドアが開いている状態や、ペットが興奮している状態でスマートフォンを操作するのは避けるように注意しましょう。
保護者さんへの報告は大切です。しかし、最優先はペットの安全です。
「今すぐ送る」よりも、「安全に送る」ことを意識しましょう。
トラブル時は通常報告とは別に連絡する
訪問中にトラブルが起きた場合は、通常の報告とは分けて考えるのがおすすめです。
たとえば、以下のような場合です。
このような場合は、できるだけ早めに保護者さんへ連絡します。
緊急性が高い場合は、メッセージではなく電話で連絡することも必要です。
そのため、事前打ち合わせの段階で、緊急時の連絡方法を確認しておくことが肝心です。
「通常の報告はLINE、緊急時は電話」など、連絡の優先順位を決めておくと、いざというときに迷いにくくなります。
帰るときのルーティン
依頼された作業が終わったら、最後にペットと家の状態の全体を確認していきます。
作業中は問題がなくても、シッターが帰った後はペットだけになります。
そのため、ペットだけになった後でも危険がないかを確認してから帰る必要があります。
お世話の抜けがないか確認する
まず、依頼された作業に抜けがないか確認します。
確認したい内容には、以下のようなものがあります。
作業が多い場合は、頭の中だけで確認していると、漏れが起こりやすくなります。チェックリストなどを用意して、確認自体をルーティン化しておくと安心です。
特に、はじめて訪問するお宅や、多頭飼育のお宅では、作業内容が多くなりやすいです。
頭を使うべきことはたくさんあります。
「頭を使わなくていいこと」まで覚えておく必要はありません。
ルーティン化できるところはルーティン化して機械的にこなしていくほうが、ミスの防止につながります。
窓・鍵・電気・空調を確認する
帰る前には、室内環境と戸締まりも確認します。
たとえば、以下のような点です。
空調の設定は、季節によって特に重要です。
夏や冬は、エアコンの設定ミスがペットの体調に関わることもあります。温度、風向き、運転モードなど、保護者さんから指示がある場合は、そのとおりになっているか確認しましょう。
また、退出後に「鍵を閉めたかな」「エアコンは合っていたかな」と不安になることもあります。
そのような場合のためにも、最後の状態を写真に残しておくと安心です。

最近では「スマート家電」のおうちも増え、「エアコンや電気はこちらがスマホで稼働させるので大丈夫です」と言われることも増えてきました。こういう場合も、シッター側がどこまで確認すべきか、事前に決めておくと安心です。
ペットだけになったときの危険を確認する
帰る前には、ペットだけになった後に危険がないかも確認します。
たとえば、以下のようなものです。
あるいは、お世話中に使った物が、そのまま危険物になることもあります。
たとえば、ウェットティッシュ、ビニール袋、フードの袋、掃除用具などです。
作業後は、自分が使った物も片づけ忘れることがないよう気を付け、ペットが届かない状態にしてから退出しましょう。
最後の報告を送る
すべての確認が終わったら、最後の報告を送ります。
最後の報告では、作業が終わったことだけでなく、ペットの現在の様子や、確認した内容も伝えると安心です。
鍵を預かっている場合は、返却方法についても確認します。
ただし、鍵の返却方法はトラブルにつながりやすい部分でもあります。ポスト投函、宅配便、手渡しなど、どの方法にするのかは事前に決めておきましょう。
その場で新しく判断するのではなく、契約時や打ち合わせ時に決めた方法に従うことが大切です。
鍵の受け渡しや返却方法は、あとからトラブルになりやすい部分です。
訪問ルーティンの中で確認するだけでなく、事前の打ち合わせや契約時に決めておくと安心です。
報告文のテンプレート
わたしが使っているテンプレートはこのような感じになっています。
このようなものをスマホのメモアプリに入れておくと、変えるべきところだけ変えるだけで報告文が作成できるので、おすすめです。
| 到着したとき | ❶到着の報告 ❷ペットの様子 ❸周囲の様子 ❹次に行うこと | ❶ただ今、到着しました。 ❷○○ちゃんはケージの中でお利口さんに寝ていたようです。 ❸ケージの周囲に変わった様子はありません。 ❹これからお散歩に行ってきます/ご飯を食べさせます |
| 散歩から帰ったとき | ❶散歩終了の報告 ❷排泄物について ❸散歩中の様子について ❹次に行う作業について | ❶ただ今、お散歩から戻りました。 ❷おしっこを◯回、うんちを◯回しました。色や硬さにも気になる点はありませんでした。 ❸歩き方に変わった様子はありませんでした。/今日はいつもより早足でした。/途中で何度か抱っこを希望しました。 ❹これから食事にします。 |
| 食事が終わったとき | ❶食事終了の報告 ❷食べた内容 ❸食事の際の様子 ❹次に行うこと | ❶ただ今、夕ご飯を食べてもらいました。 ❷△△フードを□g食べました。 ❸いつもどおり完食してくれました/途中で一度休みましたが、またすぐに食べ始めて完食しました。 ❹これから清掃をしていきます。 |
| 清掃が終わったとき | ❶清掃終了の報告 ❷排泄物の確認 ❸行った清掃内容 ❹次に行うこと | ❶ケージまわりを清掃しました。 ❷トイレにおしっこ跡が◯か所、うんちが◯か所ありました。 ❸ケージ内のクッションは散歩中、日干ししました。 ❹これから食事にしていきます。 |
| 帰るとき | ❶作業終了の報告 ❷ペットの様子 ❸室内の様子 ❹鍵の返却について | ❶それでは、本日のお世話はこれで終了いたします。 ❷○○ちゃんはソファの上で落ち着いています。/ケージの中に入ってもらいました。 ❸窓の施錠確認済みです。電気とエアコンはご指示のとおりにしています。 ❹お預かりしていた鍵をお返ししますので、ご都合のよい日時をお知らせください。 |
訪問ルーティンは信頼を守るための仕組み
ペットシッターの仕事では、動物のお世話をするだけではなく、保護者さんが安心して任せられるように、確認し、記録し、報告することも大切な仕事です。
ここに「抜け」や「漏れ」があると、大切なペットと離れて過ごす保護者さんに不安を与える事態にもなりかねません。
こうした流れをルーティン化しておくことで、すべき作業やお世話を迷いにくくなります。
ペットシッターを始めたばかりのころは、ひとつひとつの作業に緊張するかもしれません。
それでも、自分なりのルーティンがあれば、落ち着いて動きやすくなります。
また、経験を重ねて慣れてきたときにも、ルーティンは役立ちます。
慣れは自信につながりますが、同時に油断にもつながります。
「いつもやっているから大丈夫」と思ったときほど、確認が抜けやすくなることもあります。
ペットシッターの仕事は、毎回違うご家庭、違うペット、違う状況に向き合う仕事です。
ペットシッターの仕事では、動物が好きな気持ちだけでなく、確認を続ける力や、状況に合わせて落ち着いて動く力も必要になります。ペットシッターに向いている人・向いていない人の特徴については、以下の記事でも詳しく整理しています。
その中で毎回安定したお世話を提供できるよう、自分なりの流れを作り、必要に応じて見直していくことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






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