はじめに
「ペットシッターにお願いしてみたいけれど、実際にどんなことをしてくれるのか分からない…」
初めてペットシッターを利用する方の多くが、そんな不安を感じているかと思います。
ペットのお世話を他人に任せるのは、愛情深い保護者さんほどハードルが高いもの。だからこそ、どんな作業を、どんなふうに、どのタイミングでしてくれるのか――その『中身』を知ることはとても大切です。
この記事では、ペットシッターが実際に訪問してから、どんな流れで作業を行い、どんなふうに報告をして帰るのか、リアルな仕事の流れを詳しくご紹介します。
依頼を検討している保護者さんだけではなく、

ペットシッターとして働いてみたいけれど、実際にどんな流れで仕事をするのか想像できない
など、ペットシッターを目指している方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
※ペットシッターの仕事の流れ・やり方はシッターによってさまざまです。
ここでは、わたしが行う仕事の流れをまとめていきますが、このとおりに進めなければならない、というわけではありません。ひとつの参考としてお読みいただければ幸いです。
保護者さんとの連絡手段について
事前打ち合わせの段階で、保護者さんとの連絡手段を決めておきます。
連絡手段には①LINEなどのSNSツールを利用する、②ショートメールを利用する、③PCメールを利用するなどの方法がありますが、わたしのおすすめは①LINE。
動画や写真がリアルタイムで送信できますし、こちら側も【既読】がつくことで見ていただけたことを確認できるので、返信がなくても安心して作業を進めることが出来ます。

LINEで登録しておけば、初回以降のご予約はLINEで行うことが出来るようになります。保護者さんからも「ラクでいい」と喜んでいただけています。
ラクに連絡が取れると、リピーターになってくださる確率も上がります。あとは、容量の関係で、「写真はどのくらいお送りして良いか」「動画はお送りして良いか」などもお尋ねしておくと間違いないですね。
到着後、すぐにすること
わたしが到着して最初にしていることは、お世話を依頼されている動物の目視確認および保護者さんへの到着連絡です。
動物の状態を確認する
到着したら、まずは今回お世話の依頼を受けた動物の状態を確認します。
ケガをしていないか、何かおかしな様子はないか、吐いていないか、など、ざっと目視で確認できる範囲でチェックします。
このとき何か異常を発見したら、到着連絡と同時に保護者さんへ連絡を入れるようにします。
今、到着したことを伝える
動物の状態の確認ができたら、事前の打ち合わせで決めた連絡手段で、保護者さんに「ただ今、到着しました」という報告をいれます。
このとき、動物の状態について、何かお伝えしておくべきことがあれば伝えますし、元気そうであれば「元気にしっぽを振ってくれています」「さっきまでベッドで寝ていたようです」など、保護者さんが知りたいであろう状況もあわせてお伝えするようにしています。
LINEのように送った時間がメッセージの横に表示されない場合には、念のため、時間もあわせて入力しておきます。
ペットシッターの業態として、訪問時間を決める方法と、訪問時間を決めない(訪問時間はシッターにまかせる)という方法があります。
訪問時間を決めないというのは「1日2回、朝夕に訪問します」とだけ決めておき、朝の到着が7時になるか8時になるかは、シッターの自由裁量にゆだねるという方法ですね。
シッター側としては、(とくに繫忙期は)時間が自由に調整できるというのはありがたいですが、わたしはお引き受け時に訪問時間を決めてお伺いするようにしています。

決めた時間にお伺いすると、保護者さんも時間の予測がつくので、こちらからの連絡メールを確認しやすいようです。
どちらの方法にするかは、実際に保護者さんとの打ち合わせで決めていくことになりますので、要望があるときはお互いにしっかり話し合うことが大切です。

周囲の様子で伝えるべきことがあれば伝える
到着時に急いで伝えた方が良いと思われる事態が起こっていれば、そちらもあわせて伝えます。
たとえば、ペットが水をひっくり返していた、ペットがカーペットにおしっこをしていたなど、これから急いで処置をしても跡が残ってしまいそうなことは、発見ししだい、早急にお伝えします。
これはペットシッターの責任問題の証明にもなりますので、写真をお送り出来ないショートメールなどで報告をする場合でも、かならず写真を残しておくようにしています。
LINEなど画像が送れるものは画像も送る
LINEなど、写真を送れるもので到着報告をする場合、写真も一緒に送ります。
送る写真は以下の2パターン。
- 動物をアップ目に撮った写真
- 動物を中心に、まわりの環境(例えば、クーラーや電気の状態など)も一緒に写した引きの写真
❶は動物の状態をチェックできるように、❷は(住人ではない)わたしでは気づけないような、ちょっとした異変や出かける前との違いに気づいてもらうために送ります。

おやつの歯みがきガムを机の上に置いておくのを忘れていたようです。いつもの棚にあるので、ひとつあげておいてください。

棚の上に置いていたはずの物が下に落ちているので、ネコの届かない場所に移動させておいてください。
などなど、このようなご依頼が滞在中にあれば、すぐに対応することができます。
そのためにも、保護者さんに連絡はできるだけすぐに見ていただくようにお伝えしています。

ちなみに、保護者さんには「既読だけしていただければOKなので、何かご要望があるときは返信ください」とお伝えしています。
写真は保護者さんに状況をお伝えするとともに、自分自身の行動の証明にもなるものです。到着後の様子はしっかり写真に撮り、しばらくはデータとして残しておくことをおすすめします。
(ちなみに、わたしは開業以来、写真のデータは全部残しています。)
お世話の流れ(動物の種類別)
イヌさんの場合
イヌさんのお世話は、ほとんどのケースで食事の用意とお散歩(トイレ)がメインになります。
あとは、事前の打ち合わせにおいて、
個別の状態を確認しながら、スケジュールを作っていき、当日はなるべく、そのスケジュールどおりに作業を進めていくことになります。
たとえば、イヌさん(大型犬)が3頭いて、「3頭とも30分はお散歩に連れて行ってほしい」という要望があった場合、『3頭を同時に散歩に連れて行くことができれば30分で済む』ことになります。
ですが、現実的に考えて大型犬3頭を一度に連れて歩くのは危険です。
なので、わたしからの要望としては、以下の2つの案をご提案する形になります。

わたしひとりで3頭同時のお散歩はお引き受けが難しいですし、それに3頭同時にお散歩をしたとしても全員自由に歩けないので、かえってストレスになりかねません。そこで、以下の2案を考えてみました。
- 1時間でのお世話であれば、それぞれを約10分ずつ、トイレだけしてもらう形のお散歩にする(※10分のあいだに外でしなければ、室内トイレでしてもらうことになる)
- 2時間かかってもよろしければ、それぞれを30分間、イヌさんたちの希望に沿ったお散歩を個別に楽しんでもらう
どちらでも対応可能です。
1時間と2時間では料金がちがってきますので、保護者さんと相談のうえ、決めていくことになります。
ほかにも、いっぺんにご飯を出してしまうと早食いする傾向があるイヌさんの場合だと、お散歩前に1/3、お散歩後に1/3、帰る前に1/3とご飯を分けて与えるようにすることもあります。
このように、お散歩前にご飯を食べさせる場合は、その後のお散歩では内臓を揺らさないように注意しながら、できるだけゆっくり歩くように気を付けなければなりません。
限られたお世話時間のなかで「その子にとって、どういう順番で、何に時間を使うのがベストか」を熟考し、自分の力で行うことが可能で、かつ保護者さんに納得してもらえるプランを考えるのがペットシッターの腕の見せ所だと考えています。

ネコさんの場合
ネコさんのお世話は、ほとんどが食事の用意とトイレの清掃になります。お散歩を希望されるケースは(今のところ)ありません。
ネコさんのお世話で気をつけることは、
イヌさんとは異なる配慮が必要となります。
ネコさんの場合、若い子だと「その場で出されたご飯を完食する」こともあるのですが、高齢になってくると「ぼちぼち食べるので、お皿についで置くだけでいい」という指示をいただくことが多くあります。
一頭だけの飼育であれば、べつに問題はないのですが、多頭飼育の場合、どうしても「どの子がどれだけ食べたか把握できない」という状態になってしまいます。
これに関しては、「どうしてもこの子に●gは食べさせたい」という要望がある場合には、『ふやかしたドライフードか缶詰などを強制給餌する』という対応をとることになります。
強制給餌となれば、一度にぎゅうぎゅう詰めにするわけにはいきませんから、一度に何g食べさせるか、1日に何回食べさせにくるか、などを保護者さんと相談して決めることになります。
また、ネコさんのなかには『ひとりで留守番をするよりも、知らない人が家に来る方がストレスにつながる』というケースも多々あります。
そういうときは、なるべく音を出さずにささっと作業を済ませ、ささっと帰るように気をつけているのですが、ネコさんが一頭のときなどは20分ほどで完了してしまうことも。
本来、【お世話1時間あたりで基本料金】をいただく設定なのですが、このような場合には、【基本料金の1/3の料金で20分だけ作業に当たる】というプランをご案内することもあります。
なお、イヌさんの場合ですと100%その子の写真を撮って送ることができるのですが、シャイなネコさんの場合、どこにいるのか見つけられないことがあります。
保護者さんの要望があるときには、できるだけ本ネコさんをみつけて写真をお送りするようにしていますが、どうしても見つからない場合には、減ったご飯やトイレの跡などの痕跡だけをお送りすることになる可能性もお伝えするようにしています。

――さがさないでください

じつは、こういうご家庭では保護者さんがネコさんの性格を熟知されているため、【Furboドッグカメラ】などのペットカメラを設置してあることが多いです。
わたしが目視確認できなかったとしても「ペットカメラで確認するから大丈夫ですよ」と言っていただけると、こちらも本当に安心します。
小動物・鳥・爬虫類・魚などの場合
これまでわたしがお世話させていただいたことのある小動物は、ハムスター、リス、チンチラ、うずら、鶏、文鳥、十姉妹、インコ、グリーンイグアナ、ゼニガメ、ミドリガメ、グッピーなどの熱帯魚群など。
なかには、自分自身では飼育したことのない動物のお世話を頼まれることもあります。
そういうときは、自身に飼育経験がないことをお伝えし、それでもよければという条件でお引き受けするようにしています。
ペットシッターの仕事は、あくまで保護者さんの代わりです。
普段、保護者さんがされているお世話の内容をこまかいところまで聞き洩らさないように留意し、おうかがいした内容のお世話を間違いなく行うことが大切になります。
事前の打ち合わせでは、以下のようなことを聞き取ります。
飼育したことのない動物のお世話は、どんなことが起こるか予想を立てるのもなかなか難しいところ。
とはいえ、実際に飼育してみるというわけにもいきませんので、予約の日までにその動物に関する本や動物病院のサイトに書かれた記事などを読んで、できるだけの知識をもってお世話に当たれるよう、勉強だけはしっかりしておきます。
訪問中の報告の方法とポイント
作業の報告
先にもお伝えしましたとおり、保護者さんへの報告をどのように行うかは、ペットシッターによってまちまちです。
- LINEなどを用いて、その場でリアルタイムで報告する
- 作業に当たった内容を紙の報告書として記載し、お部屋に残しておく
- 後日、作業報告書として記載したものを送付する など
どの方法が最良ということはなく、保護者さんとシッターとの間で相談して決めることになります。
わたしは❶の方法を取ることが多いですが、携帯電話を持っていない、携帯の連絡先は教えたくないという方もいらっしゃいますので、その際には❷や❸の方法を取ることもあります。
❶、❷、❸では報告書の作成にかかる時間も違いますので、その辺は時間配分を間違わないように注意しなければなりません。
ちなみに、❶のリアルタイムで報告する場合には、写真や画像などのデータは、どのくらいお送りしても良いかについても事前に確認しておくと良いですね。

「あまりたくさんの画像を送られると契約しているギガ数を超えてしまうので困る」という場合もあるかもしれません。
「たくさん画像見たいので送ってください」と言われた場合には、遠慮なくバシバシ撮って、お送りするようにしています。
報告内容の例(食事・排泄・体調・機嫌)
どのようなことを、どのような形で報告するか。動物のお世話をしながら文章を考えるのは、なかなか難しいので、テンプレートを作っておくようにしています。
テンプレートを用意しておくことで、文章作成にかける時間をなるべく減らすことができるとともに、伝え忘れを防止することも可能になります。
わたしは、以下のような感じで作業が終わるたびに報告をいれるようにしています。
| 到着したとき | ❶到着の連絡 ❷ペットの様子 ❸周囲の様子 ❹次に行うこと | 「❶ただ今、到着しました。 ❷■ちゃんはケージの中でお利口さんに寝ていたようです。 ❸ケージのまわりに変わった様子はありません。 ❹(これからお散歩に行ってきます/ご飯を食べさせます)」 |
| 散歩から帰ったとき | ❶散歩終了の報告 ❷排泄物について ❸散歩中の様子について ❹次に行う作業について | 「❶ただ今、お散歩から戻りました。 ❷おしっこを■回(色、しぶりなど)、うんちを■回(色、形、硬さなど)しました。 ❸お散歩中の歩き方は(おかしな様子はありませんでした/いつもよりハイスピードでした/途中、希望により何度か抱っこしました、など)。 ❹これから食事にします。」 |
| 食事が終わったとき | ❶食事終了の報告 ❷食べた物の内容について ❸食事の際の様子について ❹次に行う作業について | 「❶ただ今、夕ご飯を食べさせました。 ❷●フードを■g食べました。 ❸(いつもどおり、しっかり完食してくれました/途中で一度休みましたが、またすぐに食べ始めて完食しました、など)。 ❹これから清掃をしていきます。」 |
| 清掃が終わったとき | ❶清掃終了の報告 ❷(あれば)室内トイレ内の排泄物について ❸行った清掃の内容について ❹次に行う作業について | 「❶ケージまわりを清掃しました。 ❷トイレにおしっこ跡が■か所(色など)、うんち跡が■か所(色、形、硬さなど)ありました。 ❸ケージ内のクッションは散歩中、日干ししました。 ❹これから食事にしていきます。」 |
| 帰るとき | ❶作業終了の報告 ❷鍵の返却について | 「それでは、今回はこれで帰ります。お預かりしていた鍵をお返しいたしますので、●月●日~●日までのご都合の良い日時をお知らせください。」 |
どんなに短い文章だとしても、報告文を作るときには動物から目を離すことになってしまいます。
お散歩中など、目を離すことができない間は無理に報告はせず、動物から目を離しても安全な場所に帰ってきてから報告をするようにしています。
トラブルが起きたとき
歩道を歩いていたら車が突っ込んできた、あるいは、ノーリードのイヌが飛びかかってきた、などなど。
幸運なことに、わたし自身はこれまでにトラブルに遭遇したことはありませんが、自分がどれだけ気をつけていても、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうことはあり得ます。
トラブルに巻き込まれたとき、一番大事なことはパニックにならないことです。そのために大切なことは、普段から「●●に巻き込まれたら、どう対処するか」などについて考えておくこと。
あとは、保護者さんに対しても、トラブルに巻き込まれる可能性と「●●のときには、■■しようと思います」と自分で考えている対応策もきちんと伝えておくことが重要です。(その際、保護者さんから代替案をお願いされれば、その方法に変えます。)
あわせて「トラブル発生時には、メールではなく電話でご連絡を入れます。こちらからの着信が電話だった場合には、すぐに出ていただけると助かります」という旨も伝えておくようにしています。

帰るときのルーティンと報告
依頼されたすべての作業を終えたら、最終確認を行います。
リアルタイム報告の場合には、これらの最終的な確認報告を保護者さんに送ります。
最後の報告とあわせて、「お預かりした鍵をいつお返しするか、返却希望日時をご連絡ください」とお願いしておきます。
その際、こちら側で空いている日時を先にお伝えしておくと、保護者さんも日時を考えやすくなりますし、こちらも自分の希望する日時に調整できます。

鍵のご返却に参ります。以下の日時でご都合の良い時間帯をお知らせください。
いずれもご都合悪ければ再調整しますので、またご連絡くださいませ。
みたいな感じですね。
ちなみに、どれだけ注意深く何度も確認をしたとしても、家を出た後に鍵を閉めたか不安になることは多々あります。
確認のためにもう一度見に行く、なんてことにならないよう、動物のまわりや鍵を閉めた場所などは写真を撮っておくことを忘れずに。帰宅後に「あれ?」と思うことがあっても、写真で状況を確認できれば安心です。
帰るときの確認事項は、鍵の施錠や電気系統の確認など、ほとんどの家庭でおなじようなものになります。抜けがありそうで不安という場合は、チェックボックスを作成してルーティンとして確認していくというのもひとつの方法ですね。
ペットシッターに大切なのは、誠実な報告と細やかな気配り
ペットシッターが到着してから帰るまでの流れについて、具体的にご紹介しました。
ペットシッターにとって一番大切なのは、保護者さんに安心していただくこと。そのためにも、シッター作業の内容は逐一報告することが大切です。
「これは伝えるほどのことだろうか」と思うような些末なことでも、事実を余さず伝える姿勢が信頼につながります。
ただし、報告に集中しすぎて動物の安全確認がおろそかになってはいけません。あくまでも動物の安全確保を最優先し、そのうえで適切なタイミングで報告・連絡を行うように留意します。
また、写真を送れないときでも、後日保護者さんからの希望があるときにすぐに写真をお見せすることができるよう、かならず写真は残しておきましょう。これはシッターの責任問題を回避するうえでも重要になってきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また☻



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