はじめに
今回は、キシリトールについてまとめていきます。
犬に与えてはいけないものはいろいろありますが、キシリトールもそのひとつ。
人にとっては身近な甘味料ですが、犬が食べると急激な低血糖を起こすことがあり、量や状況によっては重い症状につながることもあります。
この記事では、キシリトールとは何か、なぜ犬に危険なのか、もし口にしてしまったときはどう対応すればよいのかを、順番にわかりやすく整理していきます。
ご心配な方の参考になれば幸いです。
キシリトールって何?
キシリトールは、白樺(しらかば)や樫(かし)などに由来する天然の甘味料で、糖アルコールの一種です。
また、藁(わら)やとうもろこしの皮・芯などに含まれる『キシロース(木糖)』を加工して作られることもあります。
甘さは砂糖に近い一方で、カロリーは砂糖より低めとされており、ダイエット食品やシュガーレス食品などに広く使われています。
また、虫歯の原因になりにくい甘味料として知られていることから、ガムやタブレット、歯みがき用品などにもよく使われています。
人にとっては身近で便利な成分ですが、犬にとっては注意が必要な成分です。
『糖アルコール』ということはお酒なの?
『糖アルコール』と聞くと、お酒に関係する成分なのかな?と思うかもしれません。
ですが、ここでいうアルコールは、化学的な分類の名前であり、お酒のアルコール(エチルアルコール)とは別のものです。
糖質は、大きく分けると次のように分類されます。
| ①糖類 | ・砂糖…甘藷(さとうきび)糖、甜菜(てんさい)糖 ・でんぷん由来の糖…ブドウ糖(グルコース)、果糖、麦芽糖など |
| ②その他の糖類 | オリゴ糖、乳糖など |
| ③糖アルコール | 糖質に水素を添加する、または微生物による発酵で作られる。キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、還元水飴など |
つまり、キシリトールは『糖アルコール』という名前ではありますが、お酒の成分を含んでいるわけではありません。

キシリトールが含まれる食品・生活用品
キシリトールは、さまざまな食品や生活用品に使われています。
野菜・果物
プラム、いちご、ラズベリー、バナナなどの果物、カリフラワー、なす、レタス、ほうれん草、にんじんなどの野菜にも、少量含まれています。
菓子類
チューイングガム、タブレット、グミ、キャンディー、クッキー、ジャム、ゼリー、プリン、ジュース、ケーキなどに使われることがあります。
とくに、『ノンシュガー』『シュガーレス』『おくちすっきり』などといった表示のある商品には、使われていることがあります。
生活用品
歯みがき粉、口腔洗浄液などのデンタルケア用品のほか、トローチ、ウェットティッシュ、ハンドクリーム、消臭剤などに使われていることもあります。
なぜ犬にキシリトールを与えてはいけないの?
人の体と犬の体とで、キシリトールの働きがちがうから
人の場合
キシリトールは、人では血糖値を急激に上げにくく、インスリン分泌を強く刺激しにくい甘味料です。
そのため、シュガーレス製品などによく使われています。
犬の場合
一方で、犬ではキシリトールの働き方が大きく異なります。
犬がキシリトールを摂取すると、急激にインスリンが放出され、血糖値が大きく下がることがあります。
Cornell大学の解説では、犬ではキシリトール摂取後のインスリン放出が、通常の糖を代謝するのに必要な量の3~7倍になるとされています。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませるはたらきを持っています。
そのため、インスリンが急にたくさん出ると、血液中の糖が不足して低血糖を起こしてしまいます。
これが、犬にキシリトールを与えてはいけない大きな理由です。
犬がキシリトールを食べてしまった場合、どんな症状が現れる?
犬がキシリトールを食べてしまうと、低血糖の影響で、次のような症状が見られることがあります。
また、一部の犬では重い肝障害が起こることがあります。
ただし、キシリトールを食べた犬すべてに肝障害が起こるわけではなく、その仕組みもまだ十分にはわかっていません。
肝障害の原因については、これまでにいくつかの説※が挙げられていますが、MerckやASPCAも肝障害の機序は不明としています。
※いくつかの説とは、たとえば、
- ATP(アデノシン三リン酸)の枯渇による肝細胞への影響
- 活性酸素による障害
- 低血糖や代謝異常にともなう影響
などが考えられていますが、現時点では決め手となる説明はありません。
キシリトールを摂取した後、症状が現れるまでの時間は?
キシリトールによる低血糖の症状は、早ければ摂取後30分前後で出ることがあります。
一方で、ガムなど吸収が遅くなる製品では、12~18時間ほど遅れて症状が出ることもあるとされています。
また、肝障害による症状は、24~48時間以降に目立ってくることがあります。
そのため、キシリトールを食べた可能性があるときは、「今は元気だから大丈夫」と自己判断せず、すぐに動物病院へ相談することが大切です。
どのくらいの量を食べると危険なの?
シリトールは、少量でも犬に危険です。
PubMed掲載の総説やMerck Veterinary Manualでは、0.1g/kg以上で低血糖のリスク、0.5g/kg以上で急性肝障害のリスクが示されています。
また、市販のガム1粒あたりに含まれるキシリトール量は商品によって差があり、500mg~1,500mg程度とされることがあります。
これを、1粒あたり1,500mgとして計算すると、低血糖のリスクが出てくる目安は次のようになります。
| 犬の体重 | 低血糖リスクの目安 | キシリトールガム換算の目安 |
| 5kg | 0.5g | 約1/3粒 |
| 10kg | 1g | 約2/3粒 |
| 15kg | 1.5g | 約1粒 |
ただし、これはあくまで目安です。
実際には、
などによって、症状の出方は変わります。
そのため、「この量なら平気」とは考えず、少しでも食べた可能性があれば相談するのが安全です。
誤飲時の対処法について
まだ口の中にある場合は、無理のない範囲で取り出す
まだ口の中で噛んでいるようであれば、無理のない範囲で取り出してください。
ただし、慌てて手を入れると噛まれてしまうことがあります。タオルなどを使って口元を確認しながら、ご自身がけがをしないよう十分に注意しましょう。
取り出せた場合でも、その後は自己判断せず、できるだけ早く動物病院へ連絡してください。商品名や食べた量がわかると、相談がスムーズです。
すでに飲み込んでしまった場合は、できるだけ早く動物病院へ連絡する
すでに飲み込んでしまった場合は、まず動物病院へ連絡し、
を伝えて、その後の指示をあおぎましょう。
キシリトールは、少量でも低血糖を起こすことがあり、症状が出るまでの時間にも幅があります。そのため、家庭で様子を見るより、早めに相談することが大切です。
ちなみに、食べた物の商品パッケージがあれば、原材料表示やキシリトールの含有量が確認できることがあるため、受診時に持参すると役立つことがあります。

自己判断で吐かせてはいけない
吐かせる行為は危険をともなうため、自己判断で行わないようにしてください。
動物病院に連絡した結果、吐かせる処置が必要と判断された場合は、必ず獣医師の指示に従って対応しましょう。
キシリトールは早ければ摂取後30分ほどで吸収が始まることもあり、時間がたってから無理に吐かせても、効果が期待できない場合があります。
犬が届く場所にキシリトール入りの製品を置いていませんか?
キシリトールは、人にとっては身近な甘味料ですが、犬が食べると低血糖や、場合によっては肝障害を起こすことがあります。
まだわかっていない点もありますが、少なくとも犬にとって安全とは言えないことは、これまでの報告から明らかです。
キシリトールは犬にとって必要な栄養素ではありません。
わざわざ与える理由がない以上、最初から口に入らないようにしておくことが、いちばん確実な予防になります。
ガムやタブレットだけでなく、歯みがき用品や日用品に含まれていることもあるため、『犬の届く場所には置かないこと』、『家族みんなで気をつけること』を意識しておくと安心です。
愛犬が誤って食べてしまわないよう、身の回りの置き場所を見直すきっかけになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)



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