はじめに
犬のなかには、留守番があまり得意ではない子がいます。
そんな子では、保護者さんの姿が見えなくなると落ち着かなくなったり、吠え続けてしまったり、物を壊してしまったりすることも。なかには、分離不安の傾向があり、留守番そのものに強い不安を感じる子もいます。
とはいえ、どれだけ大切に思っていても、保護者さんが24時間ずっとそばにいるのは現実的ではありません。仕事や買い物、通院など、どうしても外出しなければならない場面はあります。
そんなとき大切なのは、できるだけ不安を感じにくい環境を整えておくことです。
この記事では、留守番が苦手な犬のために見直したい環境づくりや、外出前にできる工夫について、ペットシッターの視点で感じていることなどをわかりやすくまとめます。
留守番が苦手な犬には、まず『環境の見直し』を
しつけだけでは片づけられないこともある
留守番が苦手な犬は少なくありません。
ですが、いざ自分の愛犬が留守番が苦手となると、
そのように考えて、自分を責めてしまう保護者さんがいらっしゃいます。
たしかに保護者さんへの依存が強い子や、生活の変化が苦手な子、急にひとりになる時間が増えた子などは、不安を感じやすい傾向があります。
しかし、それだけではなく、留守番が苦手な理由には、もともとの性格や生活歴、年齢、家族との関わり方、過去の体験など、さまざまな要因が重なっていることがあります。
保護者さんがきちんとしつけられていない、ということだけが原因ではない場合も少なくありません。
留守番中の困りごとは、犬からのサインでもある
留守番中に見られやすい行動としては、たとえば次のようなものがあります。
もちろん、これらがすべて留守に対する不満や分離不安によるものとは限りません。運動不足や退屈、暑さ寒さ、騒音などが影響していることもあります。
だからこそ、まずは『犬が安心して留守番しやすい環境になっているか』を見直すことが大切です。

もしも気温への不満が原因であれば、犬のまわりの環境を適温に設定することでその行動がやむかもしれません。
留守番しやすい部屋づくりで見直したいポイント
落ち着ける居場所を決めておく
犬が留守番をするときは、家の中のどこで過ごすのかをある程度決めておいた方が落ち着きやすくなります。
部屋の中を自由に行き来できる方が向いている子もいますが、広すぎる空間がかえって不安につながる子もいます。そういう場合は、サークルやクレート、あるいは過ごす部屋を限定して、安心できる範囲をはっきりさせてあげる方が向いていることがあります。
大切なのは『どこかに閉じ込める』ことではなく、その子がひとりでも落ち着いて過ごせる居場所を作ることです。
留守番のしやすさは年齢によっても変わります。シニア犬ならではの配慮については、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
音・光・室温をできるだけ一定にする
留守番中の不安は、静かすぎる環境や急な物音でも強くなることがあります。
そのため、保護者さんのなかには、外出中にテレビやラジオをつけておいたり、部屋の電気を少しつけたままにしたりする方もいます。実際、完全に無音・真っ暗な状態よりも、少し人の気配がある方が落ち着きやすい子もいます。
また、室温管理も大切です。暑すぎる、寒すぎるといった不快感は、それだけで留守番のストレスを強くしてしまいます。エアコンや換気、日当たりの調整も含めて、その子が無理なく過ごせる環境を整えておきたいところです。
誤飲や事故につながるものは片づけておく
不安が強い犬は、普段は触らない物に反応してしまうことがあります。コード類、ティッシュ、ビニール、観葉植物、小物、薬などは、留守番前に片づけておいた方が安心です。
『いたずらしたことないから、大丈夫』と思っていても、ひとりになって落ち着かなくなった拍子に、思わぬ事故につながることがあります。
ペットシッターとして伺う立場でも、留守番が苦手な子ほど、まず先に部屋の安全確認をしたくなる場面は少なくありません。環境づくりは、安心のためであると同時に、事故防止のためにも重要です。

大事には至りませんでしたが、電源コードをかじって感電した犬さんもいます。届く範囲のコンセントは抜くか、カバーなどをつけて対策しておく方が賢明です。
お出かけ前にできる、不安をやわらげる工夫
まずは短い時間から慣れさせる
留守番が苦手な犬に対して、いきなり長い留守番を求めるのは負担が大きいことがあります。
いま現在、少しの時間も離れられないということであれば、まずは数分から、少しずつひとりで過ごす時間に慣れていく方が、犬にとっても無理が少なくなります。
たとえば、ゴミ出しや近所への短い買い物など、短時間の外出から始めて、落ち着いて過ごせた経験を積み重ねていく方法です。
少しずつ『保護者さんはいなくなっても、必ずまた戻ってくる』と感じられるようになると、留守番への不安がやわらぐことがあります。
外出前に軽く発散させておく
体力や気持ちが有り余ったまま留守番に入ると、不安や落ち着かなさが出やすくなることがあります。
そのため、外出前に軽い散歩をしたり、少し遊んであげたりして、気持ちを発散させておくのは有効です。ただし、興奮を高めすぎる遊びを直前に行うと、かえって気持ちが切り替わりにくくなることもあります。
お出かけ前は、激しく盛り上げるというより、ほどよく動いて、穏やかに過ごせる状態に整えるくらいがちょうどよいことが多いです。

留守番中の楽しみを用意しておく
留守番が苦手な子には、『ただ待つだけ』の時間にならない工夫も役立ちます。
たとえば、知育トイ、おやつが入れられるおもちゃ、長く楽しめるガム類などを活用すると、気持ちがそちらに向きやすくなることがあります。保護者さんが出かけること自体を、少しでも前向きな出来事に結びつけられれば、留守番への印象がやわらぐこともあります。
ただし、誤飲しやすいおもちゃや、留守番中に使うには危険な物は避ける必要があります。安全に使えるものを選び、その子の様子を見ながら取り入れることが大切です。
出かける直前に大げさな声かけをしすぎない
犬が不安になりやすい場合、保護者さんもつい「すぐ帰るからね」「いい子で待っててね」と何度も声をかけたくなるかもしれません。
もちろん気持ちはよくわかるのですが、出かける前の雰囲気が特別なものになると、かえって『これからひとりになるんだ』と犬が意識しやすくなることがあります。
外出前は、できるだけいつも通り、落ち着いた流れで過ごす方が向いていることもあります。帰宅時も同じで、最初から大興奮で接するのではなく、少し落ち着いてから声をかける方が安心につながる場合があります。
ペットシッターとして意識したい『事前確認』のポイント
留守番が苦手かどうかは先に確認しておく
ペットシッターとして訪問する場合、その子が留守番を苦手としているかどうかは、事前に聞いておきたい大切なポイントです。
たとえば、
こうしたことがわかっているだけでも、訪問時の対応が変わってきます。
いつもの過ごし方を崩しすぎない
留守番が苦手な犬ほど、急な変化に弱いことがあります。
保護者さんが普段、テレビをつけて出かけているなら同じようにする。照明を少しつけているなら、それも合わせる。お気に入りのおもちゃがあるなら、いつもの場所に置いておく。
こうした小さなことでも、その子にとっては安心材料になります。その子が慣れている普段の生活の流れにできるだけ寄せることが大切です。
テレビをつけるか、照明をどうするか、おもちゃは何を使うかといったことも、事前にすり合わせておけると安心です。初回打ち合わせで確認したいポイントは、こちらの記事も参考にしてみてください。
無理が強い場合は、環境づくりだけで解決しないこともある
なかには、工夫をしてもなお、強い不安症状が続く子もいます。長時間の留守番が難しいケースや、体調面・行動面のケアが必要なケースもあります。
その場合は、環境づくりだけでどうにかしようとせず、獣医師やドッグトレーナーなど専門家への相談を考えることも大切です。
また、ペットシッターとしても、このようなときに「ひとまず様子を見ましょう」で済ませず、必要に応じて相談先を案内できるよう、そういった場合の近隣の窓口を事前に調べておくようにしましょう。
大切なのは『留守番に慣れさせること』より『安心して待てること』
完璧を目指すより、その子に合う形を探していく
犬の留守番の得意・不得意には個体差があります。短時間なら平気な子もいれば、少しの外出でも不安が強く出る子もいます。
静かな部屋が合う子もいれば、テレビの音があった方が落ち着く子もいます。おもちゃで気がまぎれる子もいれば、かえって興奮する子もいます。
その子の反応を見ながら環境を整えていくことが、無理のない留守番につながります。

保護者さんが安心できることも、犬の安心につながる
犬は、保護者さんの気配や雰囲気にも敏感です。出かけるたびに「かわいそう」「大丈夫かな」と不安が強くなると、その空気が伝わってしまうこともあります。
もちろん心配する気持ちは自然なことですが、24時間365日つきっきりというわけにもいきません。できる準備をしたうえで、保護者さんが出かけることに慣れさせるのも大切です。
安全で落ちつける空間で待っていれば、必ず保護者さんは帰ってくるという安心感の積み重ねが、その子の不安をやわらげる助けになります。
まとめ
留守番が苦手な犬がいると、保護者さんも『できるだけひとりにしたくない』と思うものです。けれど、現実には外出しなければならない日もあります。
だからこそ大切なのは、留守番そのものを無理に我慢させることではなく、少しでも安心して過ごせる環境を整えておくことです。
落ち着ける場所を作ること、音や室温を見直すこと、危険な物を片づけること、留守番中の楽しみを用意すること。どれも地味な工夫ですが、犬にとっては大きな助けになることがあります。
ペットシッターとしても、こうした視点を持っておくと、保護者さんへの提案や事前確認に深みが出ます。留守番が苦手な子に寄り添いながら、その子に合った過ごし方を一緒に探していけるとよいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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