はじめに
近年は人間だけでなく、犬も長寿になってきました。大切な家族と長く一緒にいられることは、とても喜ばしいことです。
しかしその一方で、年齢を重ねた犬では介護が必要になる時間が増えるケースも。実際に老犬介護を経験してみると「考えていた以上に大変」と感じる保護者さんも少なくありません。
特に、介護の備えや心構えがないまま老犬期に入ってしまうと、食事・排泄・歩行のサポートなど、日々のケアが時間的にも体力的にも大きな負担になってしまうこともあります。
これまで、わたしはペットシッター兼老犬介護士として、多くのご家庭で老犬のお世話をさせていただきました。
また、わたし自身も約7か月間、寝たきりの愛犬の介護を経験しました。
そこで今回は、
をもとに、老犬介護で本当に役立つグッズ9選を紹介します。
老犬介護の最中の方はもちろん、「これからのために備えておきたい」という方にも参考になれば幸いです。
老犬介護で役立つグッズ
老犬が滑らないための滑り止めマット
老犬になると、若い頃に比べて足腰の筋力が弱くなり、踏ん張る力も徐々に落ちていきます。そのため、それまで問題なく歩けていた場所でも、うまく立ち上がれなかったり、滑ってしまったりすることがあります。
特にフローリングの床は滑りやすく、老犬にとっては足腰に大きな負担になります。
ちょっとしたきっかけで転倒(及びそれが原因の骨折)してしまうこともあるため、足裏にしっかり引っかかる素材の滑り止めマットを敷いておくと安心です。
まだ若い犬でも、フローリングで滑った拍子に関節を痛めたり、脱臼してしまうことは珍しくありません。
そのため、階段の近くや段差のある場所など、ケガにつながりやすい場所にはあらかじめ滑り止めマットを敷いておくと、老犬になってからだけでなく、若いうちからのケガ予防にもなります。
現在、わが家に犬はいませんが猫がおり、猫がよく通る棚の上には滑り止めマットを貼っています。

▼▼▼おすすめは完全防水のシート。おもらしや吐き戻しがあってもサッと拭くだけでいいのは本当にらくちん。透明なのでインテリアの邪魔もしません。
歩行補助に役立つ介護ハーネス
犬は歩くとき、前足に約70%、後ろ足に約30%の体重をかけて歩いていると言われています。老化が進んでくると、まず後ろ足の筋力から弱くなっていくことが多いです。
若い犬が使う一般的なハーネスは、前足を中心に固定するタイプがほとんどです。ですが、後ろ足が弱ってくると、このタイプのハーネスでは、後ろ足がくにゃっとなってしまって体を支えることが難しくなります。
そこで役立つのが、後ろ足を支えるタイプの介護ハーネスです。
後ろ足の部分にハーネスを装着し、飼い主が少し持ち上げる形で歩行をサポートすることで、足腰が弱くなった犬でも散歩を続けることができます。
老犬でも、前足の力が残っているうちは、適度に体を動かすことが大切です。
散歩をやめてしまうと、筋力がさらに落ちてしまうこともあるため、無理のない範囲で歩く機会を作ってあげることが重要になります。
とはいえ、大型犬の場合は体重があるため、ハーネスで支えるのが難しいこともあります。
そのような場合には、『犬用の車椅子』を利用するという方法もあります。
犬用の車椅子は購入だけでなくレンタルサービスもあり、レンタルを利用すれば初期費用を抑えることもできます。老犬の状態に合わせて、無理のないサポート方法を選んであげると良いでしょう。

ちなみに、ペット保険の種類によっては、車椅子の購入に対して保険金が出るものも。もしもペット保険に加入しているのであれば、自分の保険で車椅子購入が保険適用が調べてから購入されることをおすすめします!
老犬でも立ち上がりやすい低床ベッド
前述のとおり、老犬になると後ろ足の筋力が弱くなり、立ち上がる力も徐々に落ちていきます。
そのため、体を起こすときに負担の少ない低床タイプのベッドを用意しておくと、ひとりでも立ち上がりやすくなります。
また、身体の状態によっては『寝たきり』になってしまうこともありますが、ひと言に寝たきりといっても、
- ほとんど体を動かさず横になったままの状態
- 体を引きずるようにして少しずつ動き回る、動く寝たきりの状態
のふたつのパターンがあります。
❷の場合、ベッドに高さがあると、動いたときに落ちてしまう危険があります。
また、❶のほとんど動かない子でも、何かのきっかけで咄嗟に動いてしまうこともあり、そのような場合に備える意味でも床に近い位置で使える低床ベッドの方が安全だとわたしは考えています。
さらに、老犬介護では『床ずれ(褥瘡)』にも注意が必要ですが、使用するベッドの種類によって、床ずれの出来やすさや進行の程度が大きく変わることもあります。
愛犬が寝たきり、あるいは寝たきりとまでは言えなくても寝ている時間が増えてきたときには、寝せるベッドについて、かかりつけ医と相談してみるのも良いかと思います。
ただし、どれだけ体にやさしいベッドを用意していても、定期的に体位を変えることはとても重要です。同じ姿勢が長く続かないよう、適度な時間ごとに体の向きを変えてあげるようにしましょう。

老犬の排せつトラブル対策に役立つ防水シート
人間と同じように、犬も年齢を重ねると、尿意や便意を感じてもすぐに体を動かせなくなることがあります。その結果、トイレまで間に合わずお漏らしをしてしまうことがあります。
保護者の側では『おしっこが出てくれたこと』を喜び、お漏らしに何も思っていなかったとしても、犬の性格によっては、このお漏らし経験が大きなショック(心の傷)につながってしまうことがあります。
特に、もともときれい好きな子や繊細な性格の子は、失敗をきっかけに自信を失い、おしっこをガマンしてしまうことも。
失敗してしまったときは、決して怒らず、いつもどおりの優しさでしっかり慰めてあげたいところです。
とはいえ、トイレ以外の場所で排せつされてしまった場合、掃除が大変な場所だと、どうしても人間の側にも焦りやため息が出てしまう。わたしもそうでしたので、お気持ちとても分かります。
そこで役立つのが防水シート。
あらかじめベッドの周りやよく過ごす場所に防水シートを敷いておくことで、万が一汚れてしまっても掃除がしやすくなります。
犬は人間の表情や雰囲気をとてもよく観察しています。
たとえ視力が落ちていても、ちょっとした動作や息づかいから、飼い主の気持ちを感じ取ってしまう。
その点、掃除が簡単になると、人間の心にも余裕が生まれます。
その心の余裕は、愛犬にも伝わります。
▲▲▲裁縫が苦にならない方であれば、人間用の大きめの防水シートを購入して、犬のサイズに合わせて使うのもおすすめ。わたし自身もこの方法で人間用の防水シートから愛犬サイズに作り変えて使っていました。

端を切りっぱなしにすると、そこから漏れてしまいます。大きめサイズを切って使うときは、防水性のバイアスなどを使って端の始末をしてから使うようにしてくださいね。
食事をサポートする老犬向け食事補助グッズ
老犬になると、寝たきりになる前の段階でも足腰が弱くなり、立った姿勢で食事をすること自体が難しくなることがあります。
その結果、本当は食べたい気持ちがあっても、体を支えられないために食事をあきらめてしまうケースもあります。
食べる量が減ると、当然ながら体力も落ちてしまいます。そのため、口元まで食事を持っていけば食べる意欲がある場合には、できる範囲で食事をサポートしてあげることが大切です。
このとき役立つのが、老犬向けの食事補助グッズです。
高さを調整できる食器台や、体を支えるクッションなどを使うことで、無理のない姿勢で食事を取れるようになります。
ただし、老犬の食事介助では注意点もあります。体勢が不安定なまま食べさせてしまうと、『誤嚥(ごえん)』を引き起こす可能性があるからです。
体力をつけるための食事で体調を崩してしまっては本末転倒です。食事補助グッズを使う際には、その子の体の状態に合わせて、安全な姿勢を保ちながら食事を与えることを心がけましょう。
排せつケアに役立つ老犬用おむつ
排せつに関しては、動き回る力が残っている場合、おむつを使用するという方法もあります。
ただし、犬は人間と違って全身が毛で覆われているため、おむつの中を清潔に保つにはこまめなケアが必要になります。蒸れや皮膚トラブルを防ぐためにも、定期的な交換と清潔な管理が大切です。
それでも、部屋のあちこちで排せつしてしまう状態が続くような場合には、衛生面や介護の負担を考えても、おむつの使用を検討する価値はあります。
ちなみに、子犬の頃からマナーベルトや洋服に慣れている犬は、おむつにも比較的抵抗が少ない傾向があります。
シニア期になってきたら、たまにおむつを装着した状態でペット同伴OKのお店にやカフェに出かけるなど、散歩コースの中に小さな楽しみを取り入れるのも、愛犬との良い思い出づくりになるかもしれません。

介護環境を快適にする消臭用品
老犬介護が始まると、排せつの失敗などが増え、部屋のあちこちに臭いが残ってしまうことも。そういうとき、消臭剤をわーっと使いたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、老犬で視力や聴力が弱くなっていても、嗅覚は比較的残っていることが多いと言われています。犬は匂いを頼りに飼い主の居場所を把握していることもあるため、強い香りの消臭剤を使いすぎると、不安を感じさせてしまうこともあります。
そのため、消臭対策は消臭剤だけに頼るのではなく、日常的なケアを組み合わせることが大切です。
これらのことを積極的に行うことでも、臭いの発生を抑えることはできます。
臭いが消えれば清潔、ということはありません。
老犬介護では、犬にとっても人にとっても衛生的な環境づくりが大切です。消臭剤に頼り過ぎず、日常のケアで快適な生活環境を整えていきましょう。
当然のことながら、人間用の消臭剤には犬にとって刺激が強い成分が含まれている場合もあるため、ペットの生活空間で使うものは必ずペット用の消臭用品を使用するようにしましょう。
徘徊を防ぐためのクッション壁の囲い
老犬介護でよく耳にする症状のひとつが『徘徊(はいかい)』。徘徊とは、認知機能の低下などが原因で、同じ場所をぐるぐると歩き続けるようになることです。
わたしがお世話させていただいた子でも徘徊をしてしまう子がいました。このような行動が見られると、保護者としては「疲れてしまうのではないか」「少しでも休ませたい」と思うものです。
しかし、無理に寝かせようとしても、なかなか落ち着かず、また起き上がって歩き出す、ということをくり返す子も少なくありません。
そのような場合には、安全に歩き回れるスペースを作ってあげるという方法があります。
犬が動ける範囲を囲いで作り、その中で自由に歩けるようにしておくと、犬にとっても保護者にとっても安心です。
囲いを作る際には、次のような点に注意するとよいでしょう。
※転んでもケガをしないように床面は柔らかくしておくべきですが、毛布やバスタオルなどを敷いてしまうと、歩きにくくなり転倒が増えてしまう可能性も。
老犬はあまり足を上げずに歩くので、床面は段差がなく、足に引っかかりにくく、柔らかい『ジョイントマット(パズルマット)』がおすすめです。

ジョイントマットは1枚だけ外して洗えるし、軽くて、安いとメリットも大きいのですが、使っているうちにパズル部分がへこんで溝ができることがあります。
わたしは、なるべく大きいサイズのマットを使い、かつ、パズル部分にマスキングテープを貼って使用していました。
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完璧なものはなかなか無いので、自分なりの妥協点を見つけながら、使いやすいものが見つかると良いですね。
囲いの作り方はさまざまで、❶クッション性のある壁材を貼り合わせたり、❷いま使っているケージの内側に毛布を貼ったりする方法があります。
小型犬であれば、❸ビニールプールを利用して囲いを作るという工夫をしている保護者さんもいます。
▼▼▼空気入れも不要で置くだけなので設置が超簡単。こんな方法があるのかと保護者さんの工夫に脱帽しました。
徘徊を完全に止めることは難しい場合もありますが、安全な環境を整えることで、犬さんも安心して動くことができるようになります。
夜鳴き対策としての簡易防音スペース
老犬介護では、夜鳴きや遠吠えに悩むケースも少なくありません。夜中に鳴き続けるようになると、介護する人の睡眠が妨げられてしまうことがあります。
対策のひとつとして、防音スペースを用意する方法があります。
YouTuberなどが使用している、人が入れるタイプの本格的な防音室もありますが、価格は比較的高め。
DIYが得意な方であれば、ホームセンターなどに吸音材や消音材が売っていますので、それで簡易的な防音スペースを自作するのもいいでしょう。
高いものは買えないし、自作も難しいという場合には、月額でレンタルできる防音室サービスを利用する方法もあります。
多くの保護者が忘れがちですが、老犬介護中は愛犬だけではなく、介護をする人自身の健康を守ることも大切です。
十分な睡眠が取れない状態が続くと、心身ともに疲れてしまい、結果として介護そのものが続けにくくなってしまうこともあります。
愛犬にできるだけ良い介護を続けていくためにも、飼い主自身の体調管理は欠かせません。
夜鳴きが続いて睡眠時間の確保が難しい場合には、深夜帯だけ防音スペースを活用するといった方法を検討してみるのもひとつの選択肢かとわたしは考えます。
グッズを選ぶときの注意点
現在では、老犬介護に使えるさまざまな便利グッズが販売されています。しかし、どんなに便利な道具でも、選び方や使い方を間違えるとかえって危険になってしまうことも。
ここでは、老犬介護グッズを選ぶときに意識しておきたいポイントをいくつか紹介します。購入する際には、ぜひこのあたりのことに気をつけて選ぶようになさっていただければと存じます。
サイズ
サイズ違いで使えなかったという話は、意外とよく聞きます。
特に、
など、体に装着するタイプの介護用品はサイズを間違えやすいものです。
サイズが合っていないと、犬の体に負担がかかるだけでなく、思わぬ事故につながる可能性もあります。

ハーネスがすっぽ抜けて落下したり、車椅子の保定ベルトで腹部を圧迫してしまったり。あるいは、サイズが合っていないおむつを使っていたら、結局中身が全部出てしまっていた……、なんてことも。
購入する際は、商品紹介ページに掲載されているサイズの測り方をよく確認し、正確に測ったうえで選ぶことが大切です。
安全性
介護用品と聞くと、『老犬のために作られているものだから安全』と思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。
使い方を誤ると、思わぬ事故につながる可能性もあります。
例えば、
といったケースも考えられます。
老犬介護では、「ここまで考える必要があるの?」と思うくらい最悪のケースを想定しておくことが大切です。
そのうえで「この状態なら安全に使える」と確認できる環境を整えれば、介護用品はとても心強い味方になります。
使い勝手のよさ
どんなに便利なグッズでも、手入れが面倒なものは長続きしません。
老犬介護は毎日続くものなので、使いやすさもとても重要なポイントです。
ただし、すべての条件を満たす完璧なグッズというものは、なかなか存在しません。
例えば、
介護用品を選ぶ際は、次のようなポイントの中から、自分にとって優先したい条件を決めて選ぶとよいでしょう。
老犬介護では、保護者さんの負担を少しでも減らすことが大切。
無理なく続けられる道具を選ぶことが、結果的に愛犬にとっても良い環境を維持することにつながります。
まとめ|実際の現場で感じたこと
愛犬が介護状態になったとき、「大変だけれど、この子と一緒にいられる時間が嬉しいから、全然しんどくない」と話される保護者さんがいます。
本当に心の底から愛犬を大切にしていることが伝わってくる言葉です。けれど、こういう方ほど忘れてしまいがちなのが、自分自身のことです。
老犬介護では、『自分が健康でなければ介護は続けられない』という当たり前のことを、つい後回しにしてしまう保護者さんが多くおられます。
自分自身の寝る時間や食事の時間を削ってお世話を続け、気づかないうちに心身ともに疲れきってしまう。そして、だんだん追い込まれてしまって、ふとした瞬間に「もうしんどい……」と感じてしまった自分を責めてしまう。
そんな状態に陥ってしまう方も少なくありません。
愛犬の介護に対して少しでもネガティブな感情を抱いてしまうのは、十中八九、保護者さん自身が疲れているサイン。
疲れているときに負の感情が出てしまうのは、ごく自然なことです。決して「そんな気持ちを持つなんて保護者失格だ」と、自分を責める必要はありません。
この世のすべての命には寿命があり、嬉しいことも、つらいことも、永遠には続いてくれません。
愛犬との『いま、この瞬間』の時間を大切に過ごすためにも、便利な老犬介護グッズを取り入れたり、ペットシッターなどのサポートを利用したりして、少しでも穏やかな時間を過ごしていただけたら何よりうれしく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)






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