はじめに
愛犬がシニア期に入ると、これまでと同じように過ごしているつもりでも、少しずつ生活に変化が出てきます。
歩く速度がゆっくりになる。寝ている時間が増える。トイレや食事に気を配る場面が増える。そんな変化の先に、『介護』という問題が出てくることもあります。
この記事では、
を、わたし自身の老犬介護の体験や、まわりの老犬介護経験者の話をもとにまとめました。
まだ元気だからこそ知っておきたいこと、いまのうちに準備しておきたいことを、できるだけわかりやすくお伝えします。
シニア期はいつから?犬の平均寿命とあわせて確認
犬のシニア期は、犬種や体の大きさによって目安となる年齢が異なります。
一般的には、それまで普通にできていたことが少しずつ難しくなったり、動きがゆっくりになったり、散歩で歩ける時間が短くなったりと、年齢にともなう変化が見られるようになる時期です。
シニア期に入る目安は、次のとおりです。
たとえば、バーニーズ・マウンテン・ドッグやセント・バーナードなどの超大型犬では、6歳ごろからシニア期に入ると考えられています。
一方、犬の平均寿命は以下のとおりです。
| 超小型犬 | 小型犬 | 中・大型犬 | |
|---|---|---|---|
| 2010年 | 14.37歳 | 14.13歳 | 13.69歳 |
| 2017年 | 15.01歳 | 14.66歳 | 13.29歳 |
| 2023年 | 15.07歳 | 14.29歳 | 13.86歳 |
一般的に小型犬より大型犬のほうが短命になる傾向があるといわれています。
その理由としては、老化のスピードや遺伝子、がんの発症率、臓器への負担などが挙げられますが、現時点でははっきりと断定されているわけではありません。
ここで注目したいのは、犬にとってシニア期は意外と長いということです。
体の大きさによって差はありますが、シニア期に入ってから平均寿命までのあいだを、犬は『シニア犬として』過ごしていくことになります。
もちろん、平均寿命を超えて元気に長生きする子もたくさんいます。その場合、シニア期の期間はさらに長くなります。
つまり、シニア期は『犬生最期の少し前』ではなく、一生の中でも大きな割合を占める時期ということ。
だからこそ、愛犬がまだ元気なうちから、シニア期の変化や老犬介護について少しずつ知っておくことが大切になります。
老犬介護士による要介護度1〜5の目安表
以下の表は、犬の介護状態の目安を、老犬介護士であるわたしの経験をもとに整理したものです。
人の要介護度の考え方も参考にしながら、24時間つきっきりの介護が必要な状態を要介護度5(100%)として、介護にかかる時間や労力の大きさを5段階でまとめました。
この表を作るにあたっては、自分の愛犬の介護経験だけでなく、シッティングでお世話してきたシニア犬たちの様子も参考にしています。
もちろん、実際の状態には個体差があるため、すべての犬にそのまま当てはまるわけではありません。あくまで大まかな目安としてご覧ください。
まずは以下の表で、愛犬がどの段階に近いかを確認してみましょう。そのあとで、各要介護度の状態や必要な備えを詳しく解説していきます。
要介護度1〜5の目安表
※表の割合は、要介護度5の状態を100%とした場合の、時間的・体力的負担のおおよその目安です。
| 介護度 | 要介護度1 [10%] | 要介護度2 [25%] | 要介護度3 [50%] | 要介護度4 [70%] | 要介護度5 [100%] |
|---|---|---|---|---|---|
| 起き上がり/ 立ち上がり | ■やや不安定。 ■時間はかかるが自力で立ち上がることができる。 | ■自力で起き上がれるときと起き上がれないときがある。 ■少し支えがあれば立ち上がれる。 | ■自力で起き上がれないことのほうが多くなる。 | ■介助なしでは起き上がれないが、起き上がれば自力で体勢を保てる。 | ■介助なしでは起き上がれず、起き上がっても自力で体勢を保てない。 |
| 散歩/ 歩行 | ■足元がふらついたり、つまずいたり、後ろ足を引きずることがある。 | ■自力での歩行は難しいが、ハーネスなどの補助があれば歩ける。 | ■吊り上げ補助がないと歩けない。 ■体重によっては車いすの検討が必要。 | ■車いすに乗せれば、自力で動けることがある。 | ■車いすに乗せても自力では動けず、抱っこやカートでの移動が中心になる。 |
| 食事/ 日常生活 | ■おおむね自力で過ごせている。 | ■食事や散歩のときなど、部分的な介助が必要。 | ■食事や散歩のときなど、部分的な介助が頻繁に必要。 | ■介護なしで生活することは難しい。 | ■介護なしで生活することはできない。 |
| 排泄 | ■ほぼ自力でできる | ■部分的に介助が必要 | ■ほぼ全面的に介助が必要だが、排泄自体は自力でできる。 | ■介護なしでの排泄は困難 | ■介護なしでの排泄は不可能 |
| 夜鳴き※ | ■ときどき小さな声で鳴くことがある。 | ■要求の有無にかかわらず、小さな声で頻繁に鳴く。 | ■要求があるとき、大きめの声で鳴く。 | ■要求があるとき、それが達成されるまで大きな声で鳴く。 | ■要求の有無にかかわらず、大きな声で頻繁に鳴く。 |
| 徘徊※ | ■ふらふらと自力で歩き、ベッドではないところで力尽きて眠っていることがある。 | ■まれに狭い所に入り込み抜けなくなるなど、人手がかかるようになる。 (旋回運動) | ■ケガをしかねない危険な徘徊がみられる。 ■頻繁に人手がかかるようになる。 | ■病気などの影響で、同じ場所をぐるぐる回り続けることがあるが、寝かせれば休める。 | ■病気などの影響で、同じ場所をぐるぐる回り続けることがあり、寝かせても落ち着かない。 ■床ずれが生じやすい。 |
要介護度1|まだ自力で過ごせるが変化が出始める時期
階段を上るのをためらうようになったり、散歩の途中で帰りたがったりと、これまでできていたことが少しずつ難しくなったと感じる場面が増えてきます。
動物病院を受診すると、関節の薬やサプリメントなどを勧められることも多く、それらを使う場合は金銭的な負担が少しずつ増えていきます。
この段階では、まだ時間的・体力的な負担はそれほど大きくありません。
要介護度2|部分的な介助が必要になってくる時期
立ち上がろうとして失敗したり、散歩中に足がもたついたり、よろけたりするようになります。
少し体を支えてあげたり、食事のときに食器を持ってあげたりと、部分的な介助が必要になってきます。
犬の大きさや保護者さん自身の体力にもよりますが、超小型犬であっても、時間的・体力的な負担を感じるようになる段階です。

要介護度3|見守りと補助の負担が大きくなる時期
愛犬が自分の力だけで動くことが難しくなりはじめる段階です。
段差がない場所でもよろめいたり、無理な起き上がり方をして転んだりすることがあり、ケガにつながる危険性が高くなります。そのため、食事や排泄のときだけでなく、日常生活のなかでも気を張る時間が増えてきます。
獣医師から散歩を止められていなければ、気分転換のためにも外へ連れ出してあげたいところですが、自力で歩くのが難しくなるため、補助具で支える、あるいは体重によっては車いすを使う必要が出てきます。
金銭面では、通院費の増加に加えて、こうした補助具や介護用品の費用もかかりはじめます。
なお、散歩には、日光浴によって体内時計を整える、ストレスをやわらげる、外からの刺激で心地よく疲れさせるといったメリットがあります。老犬では昼夜逆転現象はよく見られます。夜に寝ないというときは、日中の無理のない範囲でのお散歩が、結果として夜の睡眠をうながす効果も期待できます。
要介護度4|介護なしでの生活が難しくなる時期
人の介護なしでは生活することが難しくなる段階です。
何らかの支えがあれば立っていられても、向きを変えたり座ったりすることは難しくなるため、食事や排泄など、何か行動を起こすたびに補助が必要になります。
また、自分の要求そのものはある程度わかっている様子でも、それが何なのかを見つけるのは簡単ではありません。鳴いている理由を探るために、こちらがいろいろ試してみる根気を求められます。
愛犬が鳴きやまないとき、わたしは次のようなことを試していました。

鳴きやむまで、いろいろ付き合いました。認知症もあったのかもしれず、自分でも何を求めているのかわからなくなっていたように感じることもありました。
愛犬の要求に早く気づけるかどうかには、それまでの信頼関係や、日頃どれだけその子の様子を見てきたかが大きく関わってくるように思います。
だからこそ、愛犬が若いうちから、
といった小さなサインに気を配る習慣をつけておくのは、とても良いことです。これは介護に限らず、普段の小さな異変や病気の早期発見にもつながります。
トイレに連れて行けば自力で排泄でき、食器を口元に持っていけば食事もできる。
そんな力はまだ残っていても、起きているあいだは常に神経を使う場面が多く、なかなか気が休まらない時間が続きます。
要介護度5|24時間介護を考える段階
寝たきりになり、自力では起き上がれず、起こしても支えなしでは体勢を保てない状態です。
食事や排泄も自力では難しくなるため、介助しながら行う必要があります。
※ここでいう介助とは、『トイレまで抱っこして連れて行く』『トイレの上で体を支えながら排泄を待つ』といったことです。排泄行為を無理に行わせること(強制排便)は危険を伴うため、獣医師から直接指導を受けた場合を除き、自己判断では行わないようにしてください。
起き上がることはできなくても、寝たまま体を動かすことはあるため、その動きが原因で床ずれを起こすおそれがあります。
床ずれを防ぐには、2〜3時間おきに体の向きを変えたり、床ずれができにくいベッドを用意したりする必要があり、時間的にも金銭的にも負担が大きくなります。
この段階になると、寝ている時間でさえ気が抜けず、24時間介護に近い状態が続きます。愛犬を大切に思う保護者さんほど、精神的にも肉体的にも限界に近づきやすくなります。
だからこそ、このような状態になったときに備えて、事前に頼れる人や場所を見つけておくことが大切です。
また、金銭的な負担も確実に増えるため、ペット保険の加入や、いざというときのための資金を準備しておくことも安心材料になります。

老犬介護に備えて元気なうちからできること
もちろん犬には個体差があるため、すべての子が上記の表のとおりに介護状態へ進むわけではありません。上記の表は、あくまで大まかな目安としてご覧ください。
また、介護期間がまったくなく、亡くなる前日まで大きな異変に気づかなかったというケースもあります。
前日の昼までいつもどおりにご飯を食べ、散歩をし、普段と変わらない様子で過ごしていたのに、その日の夕方に急に体調を崩し、翌深夜に息を引き取った。そんな子もいました。
老犬介護は、ゆっくり始まることもあれば、ある日を境に一気に現実味を帯びることもあります。
だからこそ、愛犬が元気なうちから少しずつ備えておくことが大切です。これは体力的、金銭的な備えだけではなく、心の備えも意味しています。
たとえば、次のような準備があります。
いざ介護が始まってから、心身ともに余裕のない状態でひとつひとつ調べたり、判断したりするのはとても大変です。
愛犬が元気なうちから備えておくことが、いずれ保護者さんと愛犬の両方を助ける力になります。
まとめ|目標は「介護」ではなく健康寿命を延ばすこと
今回は、老犬介護の目安や、介護が必要になったときの負担、元気なうちからできる備えについてまとめました。
ただ、保護者さんに何より目標にしていただきたいのは、介護を前提にすることではなく、シニア期の健康寿命をできるだけ延ばすことです。
普段から愛犬の様子にしっかり目を配り、少しの変化にも気づけるようにしておくこと。
そして、異変があれば早めに動物病院へ相談し、早期発見・早期治療につなげること。
そうした日々の積み重ねが、介護期間を短くしたり、場合によっては回避したりすることにつながります。
もちろん、どれだけ気をつけていても、年齢や病気によって介護が必要になることはあります。それでも、知識と準備があるだけで、避けられる混乱や負担は少なくありません。
愛犬がこれから迎えるシニア期が、できるだけ穏やかで、その子らしく過ごせる時間になりますように。そして願わくば、介護が必要になったとしても、保護者さんがひとりで抱え込まずに済みますように。
皆さまの愛犬が、できるだけ長く『介護不要の元気なシニア犬生』を送れることを、心より願っております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)



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