2016年5月、とある細菌に感染した60代の女性が亡くなりました。
細菌の名前は【コリネバクテリウム・ウルセランス】。この細菌が引き起こす【コリネバクテリウム・ウルセランス感染症】はヒトにも感染する『人畜共通感染症』です。
今回はこのコリネバクテリウム・ウルセランス感染症について
などについて調べてみました。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症の感染事例報告
まずは、こちらのニュースをご覧ください。
犬や猫などから人間にうつるとされる人獣共通感染症「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」による死者が国内で初めて確認されていたことが14日、厚生労働省への取材で分かった。厚労省は今月、自治体などに向けて通知を出し、情報提供を行った。
厚労省によると、この感染症で死亡したのは福岡県の60代の女性で、平成28年5月に呼吸困難で救急搬送され3日後に死亡。血液などから菌が検出された。女性は3匹の猫に屋外で餌をやっていたといい、そこからの感染が疑われている。
■参照元:産経ニュースHP(2018/1/15 06:00)
(https://www.sankei.com/life/news/180115/lif1801150015-n1.html)
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症ってどんな病気?
コリネバクテリウム属に分類される【コリネバクテリウム・ウルセランス(ウルセランス菌)】が産出する毒素が原因で起こる人畜共通の感染症です。
感染症法※1(第6条3項)で2類感染症※2に指定されている「ジフテリア」が同じく【コリネバクテリウム属】であり、「ジフテリア」とよく似た症状を示します。
※コリネバクテリウム・ウルセランス感染症(以下、「C・ウルセランス感染症」といいます。)自体は感染症法対象外疾患です。
| ※1…感染症法 | 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 |
| ※2…2類感染症の定義 | 感染力と罹患(りかん)した場合の重篤性などに基づき、危険性が高い感染症 |
C・ウルセランス感染症はどのように感染する?
「飛沫感染」の疑いが濃厚
感染のメカニズムは、厳密にはまだ解明されていませんが、おそらく飛沫感染ではないかと考えられています。
海外においては、(乳房炎などを起こした)牛の生乳から感染している例もありますが、最近のほとんどのケースは犬・猫など、ペットからの感染報告となっています。
ジフテリアは「ヒト⇔ヒト」間の感染にかぎられているのに対し、C・ウルセランス感染症は「ヒト⇔ヒト」間の感染はまれ(国内では報告なし)で、「ヒト⇔ヒト以外のさまざまな哺乳類」で感染が起こり得ます。
なお、「犬⇔犬」間の感染も国内で確認されているため、犬同士の接触にも注意が必要です。
各動物間での感染の可能性
| ヒト⇔ヒト | ヒト⇔ヒト以外の哺乳類 | 犬⇔犬 | |
|---|---|---|---|
| ジフテリア | ○ | ✖ | ✖ |
| C・ウルセランス感染症 | まれ | ○ | ○ |
C・ウルセランス感染症のおもな症状
ヒトでのおもな症状
初期症状は、のどの痛み、咳、発熱、リンパ節の腫れなど風邪に似た症状です。また、咽頭や扁桃(のどの奥)などに、白色の偽膜や白苔が見られることもあります。
重篤な場合には呼吸困難、心筋症、神経症状などを起こし、死に至ることもある危険な病気です。

犬でのおもな症状
咳やくしゃみ、鼻水、目やにがでる、元気がない、口内炎の偽膜などヒトと同じく風邪に似た症状を起こします。
また、皮ふや粘膜(口内など)に炎症が生じることもあります。
このような症状が愛犬に見られたときには、早めに獣医師の診察を受けるとともに、症状が見られる間は過度な接触はひかえ、動物にふれた後は必ず手洗い・うがいなどをするようにしてください。
C・ウルセランス感染症を予防するには
動物に触れたあとは、必ず手を洗う
感染動物のなかには、なんの症状もないけれど、実はC・ウルセランス感染症に感染していたという、いわゆる「無症状の保菌動物」もいます。
動物にふれたあとは、必ず手を洗うようにしてください。
大阪で行われた調査によると、犬の7.5%が無症状保菌動物(菌を持っているのに何の症状もなかった)とのことです。健康そうに見える子でも、触ったあとは必ず、手洗い、うがいを徹底するようにしましょう。
多頭飼育の方は「全員一斉診察」がベター
上述のとおり、「犬⇔犬」での感染した事例もあります。
動物間で感染してしまうと被害が広がってしまいます。
多頭飼育の場合、そのうち一頭に上記のような症状が見られた場合には、ほかの子も必ず一緒に診察を受けるようにしてください。
ヒトは定期ワクチンの接種で基本的には予防が可能
日本では、ヒトに対し定期の3種混合ワクチン(最近では4種混合ワクチン)の接種が行われています。
この予防接種にジフテリアトキソイド(ワクチン)が含まれており、これがC・ウルセランス菌に対する抵抗力として、ある程度有効と考えられています。
幼少期にワクチン接種を受けている、30代以下の方については、C・ウルセランスは基本的には感染しないとのことですが、残念ながら完全に予防できるわけではありません。
このジフテリアに対する抵抗力は、30代後半から年齢を経ることに徐々に低下することがわかっています。
C・ウルセランスへの抵抗力も同じように低下すると考えられます。
30代後半以上の年齢の方で、動物との接触が多い方は注意が必要です。
ペットがC・ウルセランス感染症に感染していないか調べたいとき
ほとんどの動物病院で検査が可能ですが、一部の動物病院では検査ができないこともあるかもしれません。くわしくはかかりつけ医に相談してみてください。
ただし、この病気は感染症ですので、動物病院を受診する際には、念のため、事前に電話やメールなどで確認されてみてから受診するほうが良いかと思います。

動物病院を受診している病気の子は、基本的に免疫力が低下しています。感染を広げないための対策を講じていただけると幸いです。
検査方法
綿棒などで口の中の粘膜または目ヤニを採取し、細菌がいないかどうか調べます。
ペットの体への負担は(よほど病院を怖がる子以外)ほとんどありません。
【コリネバクテリウム属菌】が検出された場合、特定機関で精密検査を行うことになるかと思います。

治療について
ヒトも犬も、早期発見、そして抗菌薬(マクロライド系抗菌薬)や抗毒素※による早期治療開始ができさえすれば、治療は十分に可能です。
※抗毒素療法はヒトの場合の治療法です。この方法をとる場合、アナフィラキシーや血清病などの可能性への留意が必要である、とも記載されています。
C・ウルセランス感染症についてのまとめ
ということで、C・ウルセランス感染症についてまとめてみました。
重要なポイントは、以下の6つ。
- 「ヒト⇔ヒト以外のさまざまな哺乳類」で感染が起こり得る。
- 「犬⇔犬」間の感染も国内で確認されている。
- 無症状保菌動物も多いので、動物との接触後は必ず手を洗う。
- 多頭飼育の場合、全員一斉に治療をすることが大事。
- 特に注意が必要なのは、30代後半以上の年齢で、動物との接触が多い方。
- 早期発見・早期治療ができれば治療も可能。
もしも愛犬がC・ウルセランス感染症に感染していたとしても、適切な治療を行えば治療は十分に可能で、かつ他の動物や人へ感染もしないと考えられています。
治療は初期段階で行う方が「動物の体への負担」はもちろん「経済的な負担」も軽く済むことが多いです。
愛犬に上記のような症状が見られた場合には、早めに動物病院への相談・受診をおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました☻
・厚生労働省 コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&A(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/corynebacterium_02.html)



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