はじめに
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症(以下、「C・ウルセランス感染症」といいます。)は、犬や猫などの動物から人にうつることがある動物由来感染症です。厚生労働省によると、国内の人での感染事例の多くは、犬や猫からの感染が確認されています。
犬や猫と暮らしている保護者さんに知っておいていただきたいポイントは、以下のとおりです。
この記事では、C・ウルセランス感染症について、保護者さん向けにわかりやすく整理していきます。
ペットの体調や、ご自身の感染予防が気になる方の参考になれば幸いです。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症とは
コリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans)という細菌によって起こる感染症です。
ジフテリア菌と同じコリネバクテリウム属に分類され、ジフテリアに似た症状を示すことがあります。
(なお、ジフテリアは感染症法上の2類感染症ですが、C・ウルセランス感染症そのものは同じ扱いではありません。)
厚生労働省も、犬や猫などの動物から人にうつることがある感染症として案内しています。人にも影響する可能性があるため、ペットの体調管理や日ごろの衛生対策が大切です。
どのように感染する?
感染経路はまだ十分に解明されていません。
ただ、国内では犬や猫などの感染動物との接触による感染が多く報告されており、人への感染源としてペットが重要視されています。また、海外では、牛などの畜産動物との接触や、殺菌されていない生乳による感染例も報告されています。
また、犬どうしでの感染も国内で確認されているため、咳や鼻水など気になる症状がある犬同士の接触には注意が必要です。
一方で、人から人への感染はまれで、厚生労働省Q&Aでは国内での報告はないとされています。
人とペット、それぞれに見られる症状
人でのおもな症状
人では、のどの痛み、咳、発熱、リンパ節の腫れなど、風邪に似た症状がみられることがあります。
また、のどの奥に白色の偽膜や白苔がみられることもあり、重症化すると呼吸困難、心筋障害、神経症状などを起こすことがあります。

犬でのおもな症状
犬では、咳やくしゃみ、鼻水、目やに、元気がないなど、呼吸器症状を中心とした体調不良がみられることがあります。また、皮ふや口の中などに炎症や病変が出ることもあります。
このような症状が愛犬に見られたときは、早めに動物病院を受診しましょう。
また、症状が続いている間は過度な接触を控え、動物に触れたあとは石けんと流水でしっかり手を洗うことが大切です。
予防のためにできること
動物に触れたあとは、手を洗う
感染している動物のなかには、目立った症状がない場合もあります。そのため、健康そうに見える犬や猫であっても、触れたあとは石けんと流水で手を洗う習慣をつけましょう。
動物由来感染症の予防では、基本的な手洗いが大切です。
多頭飼育では、同居動物についても相談する
C・ウルセランス感染症は、犬どうしで感染した事例も報告されています。
多頭飼育で1頭に気になる症状がある場合は、その子だけでなく、同居しているほかの動物についても動物病院に相談すると安心です。
人では定期接種が一定の予防につながる
日本では人に対して定期ワクチンの接種が行われていますが、この予防接種にジフテリアトキソイドが含まれており、これがC・ウルセランス菌に対する抵抗力として、ある程度の予防効果をもつと考えられています。
ただし、これを打っておけば完全に防げるとは限らず、接種から長い時間がたっている場合には抵抗力が低下している可能性もあります。
動物との接触が多い方や、感染動物との接触が疑われる場合は、医師に相談のうえ、ワクチン接種歴を確認しておくことも大切です。
ペットの感染が気になるときはどうする?
気になる症状がある場合は、まず動物病院に相談しましょう。
症状や状況に応じて、検体を採取して検査が行われることがあります。検査の流れは病院によって異なるため、くわしくはかかりつけ医に確認してみてください。
ただし、この病気は感染症ですので、動物病院を受診する際には、念のため、事前に電話やメールなどで確認されてみてから受診するほうが良いかと思います。

動物病院を受診している子は、基本的に免疫力が低下しています。ほかの動物へ感染を広げないための対策としても事前の連絡があると安心ですね。
検査方法
検査では、口の中や鼻、目やになどから検体を採取し、菌がいないかどうかを調べます。
厚労省Q&Aでは、口腔咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、眼脂、皮膚ぬぐい液などを用いた菌分離や、必要に応じたPCRによる毒素遺伝子検出が示されています。
検体採取そのものは大きな負担になりにくいことが多いですが、病院が苦手な子では配慮が必要な場合もあります。

治療について
C・ウルセランス感染症は、早めに発見して治療につなげることが大切です。
人では、ジフテリアと同様に抗菌薬や抗毒素による治療が有効とされており、重症例では抗毒素が重要になることがあります。また、抗菌薬としては、マクロライド系やペニシリン系などが有効とされています。
ただし、動物での治療方針は症状や状態によって異なるため、自己判断せず、動物病院の指示に従いましょう。
まとめ
C・ウルセランス感染症は、犬や猫などの動物から人にうつることがある感染症です。押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
- 人と動物のあいだで感染することがある
- 犬どうしで感染した事例も報告されている
- 無症状で菌を保有している動物が確認された報告もある
- 動物に触れたあとは、石けんと流水で手を洗うことが大切
- 多頭飼育で1頭に気になる症状があるときは、同居動物についても動物病院に相談する
- 早めに受診し、適切な診断と治療につなげることが大切
もしも愛犬に、咳、鼻水、くしゃみ、目やに、元気消失、皮膚や口の中の異常などが見られる場合は、早めに動物病院に相談してみてください。
早めの対応は、動物自身の負担を減らすだけでなく、周囲への感染リスクを下げることにもつながります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)



コメント