今回は愛犬の便検査についてまとめてみます。
便検査および尿検査は、血液検査とちがって、自然に排せつされたものを使えれば愛犬の体にいっさい負担をかけずに行える、愛犬に優しい検査です。
便を調べることでどんなことがわかるのか、血便は何が原因でおこるのかなどをまとめてみましたので、興味があればお付き合いください。
犬の便検査でわかる5つの項目
わかること❶ 腸内環境の状態
便を目視するだけでも分かることは多々あります。
便を取ったら、まずは便の形状、ニオイ、色などをチェックし、目に見える異常がないか確認しましょう。
便の硬さでチェック
正常
ビニール袋などを使って取り上げたとき、地面にうんちのあとが残らず、きれいに持ち上げることができる。
かつ、指で押さえた時に適度に弾力を感じるものを指します。
下痢便
地面にあとが残る、手で持ち上げられないなど、水分が多い状態の便をいいます。
一言で下痢といっても軟便(ちょっと軟め)のこともあれば水様便(水のようにびしゃびしゃ)のこともあります。
考えられる原因には、以下のものがあります。
下痢を起こしている場合、伝染性の病気にかかっている可能性もあります。
多頭飼いをされているご家庭では❶他の動物たちと触れ合わせないようにすること、❷下痢便を清掃した手や器具などの洗浄を徹底すること、に留意しつつ、すぐに動物病院を受診するようにしてください。
また、お尻のまわりに便が付いてしまい、そのまま放置してしまうと皮ふ炎の原因にもなります。
愛犬が下痢だったときは、しっぽを持ち上げ、肛門のまわりをきれいに拭き、そのまわりの毛に便が付着していないかも確認するようにしてください。
長毛種で下痢が続いている場合には、完治までお尻まわりの毛だけを刈るというのも一手だと思います。わたしも数度、愛犬の下痢を経験しましたが、その際、動物病院でお願いしたところバリカンでささっと刈ってくれました。幸い、下痢も一週間ほどでおさまりましたが、毛がないとちゃちゃっと水洗いも出来るので、その間の清拭がとてもラクで助かりました☻

便秘気味・便が硬い
便にヒビが入っていたり、持ち上げたとき指で押してもゴチゴチで弾力がまったくないなど、水分が少ない状態の便をいいます。
考えられる原因には、以下のものがあります。
便が硬かった場合、お尻が切れている(いわゆる切れ痔)になっている可能性があります。
肛門のまわりから血が出ていないかも気をつけて見てあげてください。
便の色でチェック
正常な便の色
黄土色→こげ茶色のあいだくらいの色といわれています。
便の色はビリルビンとよばれる黄色い色素によって茶色に着色されています。
色が茶色でない場合、まずは肝臓ないし胆嚢の障害などが疑われます。
色が薄い・白っぽい
などの原因が考えられます。
赤いものが混じっている
などの原因が考えられます。
黄緑色っぽい
※腸内環境が悪化すると悪玉菌が増殖し、腸内が酸性。その結果、ビリルビンが酸化され緑色になる。
などが原因として考えられます。
黒っぽい・タール状
胃や十二指腸、小腸周辺などでの出血している可能性があります。
その便をもって、早急に動物病院を受診されるようにしてください。
とくにどす黒いタール状の便は、緊急に治療が必要な場合があります。

便は食べた物の影響を強く受けます。
色のついた野菜を食べたときなど、一部未消化で排泄されたものが異物に見える場合もありますので、注意して見てみてください。
犬は食べ物をしっかり噛みませんので、飲み込んだものがそのまま出てくることもままありますし、おやつやフードなどに含まれる着色料が原因で便に色がつくこともあります。
着色料は肝臓に負担をかける原因にもなりますので、ペットのごはんは、なるべく添加物の入っていないものを選んでいただけるとうれしいです。
ニオイでチェック
そもそも「便はくさい」ものではありますが、それでも毎日片づけていれば、「いつもよりもニオイがきつい」と感じることもあるかと思います。
いつもよりもニオイがきつい、いつもと違うニオイがする、という場合には
などの原因が考えられます。
わかること❷ 体のどこかで出血していないか(血便)
血便とは、その名の通り便に血が混じっている状態をいいます。
便検査では体のどこかで出血していないかを知ることができます。
血便には、
それぞれ出血していると考えられる場所がちがいます。
| 血の色が赤い鮮血 | 大腸や肛門周辺からの出血 |
| 血の色が黒い・タール状 | 胃や小腸からの出血 |
なお、伝染性疾患ではトマトピューレ状の血便(および嘔吐)が見られます。
また、
でも疑われる病気は異なります。
| 一部に血が混じっている | 好酸球性腸炎、肉下腫性腸炎、リンパ腫、小腸がんなど |
| 全体が赤くなっている | 出血性腸炎(細菌・ウイルス感染)など |
血便が起こるおもな原因としては、以下のものがあります。
わかること❸ 寄生虫がいないかどうか
検便をすることで体内に寄生虫がいないかどうか調べることができます。
寄生虫は、大きく①原虫類、②蠕虫(ぜんちゅう)類の2種に分類されます。
| 原虫類(微細で目視できない) | 蠕虫類(成虫は目視できる) |
|---|---|
| ●赤痢アメーバ ●大腸アメーバ ●ランブル鞭毛虫 ●クリプトスポリジウム ●コクシジウム ●ジアルジア | ●回虫 ●糞詮虫 ●鞭中 ●東洋毛様線虫 ●ズビニ鉤虫 ●蟯虫 ●無鉤条虫 ●肝吸虫 ●横川吸虫 ●日本海裂頭条虫 ●ウエステルマン肺吸虫の卵 |
ここで注意。
寄生虫が体のなかにいるにもかかわらず、採取した便の中に、たまたま寄生虫がいなかったためにマイナス(寄生虫なし)という結果になってしまう可能性があります。
寄生虫をうたがわせる症状があるにもかかわらず、マイナスという結果になった場合には、かかりつけの獣医師と相談のうえ、再検査をしてみるのもありかと思います。
なお、原虫ジアルジアは人畜共通感染症(ズーノーシス)です。
可能性は低いようですが、ヒトに感染することもありえます。
ペットの排せつ物を片づけるときは手などにつかないよう気をつけるとともに、きちんと消毒するようにしてください。
わかること❹ ウイルス性の感染症にかかっていないか
愛犬の便を調べることで、ウイルス性の感染症にかかっていないかどうかを調べることができます。
わかること❺ 腸炎の原因菌(細菌)がいないか
腸炎の原因のひとつに細菌性のものがあります。
ペットに下痢がある場合、細菌性の腸炎を起こしている可能性もあるため、
などの細菌がいないかを調べる必要があります。
これらも検便でチェックすることができます。
結果が出るまで時間がかかることもある
専門的な検査は個人の動物病院で行うことが難しいケースもあるようです。
その場合には、外部の検査機関などに検査を依頼することになるため、結果が出るまで時間がかかってしまうこともあります。
結果が出るまで不安だとは思いますが、その間は悲観せずに、獣医師の指示にしたがって、その時にできることを、できるだけしてあげるようにしましょう。
便は身体からのお”便”り
便は全身のさまざまな情報を運んできてくれる、大事なお”便”り。
→ いろんな器官を通過
→ そのときに各器官より書面を預かる
→ 預かった書面をもって出てくる(便)
→ 書面を読んで(検便をして)苦情のある器官を知る
便検査は比較的安い費用で、かつ、自然排便できればペットの体に負荷をかけることなくできる検査です。
まだ表面上には出てきていない身体の異常がわかるかもしれません。
動物病院を受診する用事がある場合には、追加で便検査もしてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!



コメント