はじめに
シニア犬やシニア猫のお世話を依頼されることは、ペットシッターの仕事では珍しくありません。
見た目には元気そうに見えても、年齢を重ねた子は、歩く速さや食べ方、聞こえ方、見え方などに少しずつ変化が出ていることがあります。
そのため、若い子と同じ感覚でお世話をすると、思わぬ負担をかけてしまうこともあります。
大切なのは、保護者さんと相談して決めたことをそのまま機械的にこなすことではなく、その子が無理なく安心して過ごせるように調整することです。
わたしはペットシッター士と別に老犬介護士の資格をもっています。そのため、時々、介護が必要な子のお世話を担当させていただくのですが、その際、つねに意識しているのは『無理をさせていないか』ということ。
今回は、シニア犬・シニア猫のお世話で意識したいことを、若い犬や猫との違いがわかる形で整理していきます。
保護者さんと事前に確認しておきたいこと
シニア犬・シニア猫のお世話では、若い子以上に、事前確認がとても重要な意味を持ちます。
『こういう場合は、いつもはどうしているか』『何をどこまで手伝う必要があるか』『されて嫌なことはどんなことか』など、細かいところまで共有しておけるよう、しっかり保護者さんと事前に打ち合わせをしておくことが大切です。
たとえば、以下のようなことは確認しておきたいところです。
シニアの子では、保護者さんが行う『普段どおりのお世話』の中に、その子ならではの工夫がたくさんあります。
そこを最初にしっかり共有してもらえると、シッター側も落ち着いて対応しやすくなります。
シニア犬・シニア猫のお世話は『決めた通り』でよいとは限らない
シニア期の子のお世話でまず意識したいのは、若い犬や猫と同じ感覚で考えないことです。
たとえば、
こうした変化は、シニアの子では特別なことではありません。
若い頃からお世話にあたらせてもらっている子だと、ついついその時の記憶で対応してしまいがちですが、その子に会うのが久しぶりであれば、経過した年数のことをしっかり考えたお世話の方法を考えてあげるようにしたいものです。
保護者さん側が『前もできていたから大丈夫』とおっしゃられたとしても、そのまま受け入れるのではなく、目の前の様子を見ながら対応を考えることが大切です。
シニア期のお世話で意識したい5つの違い
動きがゆっくりになる
シニア犬・シニア猫は、若い子に比べて動きがゆっくりになります。立ち上がるときに少し時間がかかったり、歩き始めがぎこちなかったり、方向転換に間が空いたりすることもあります。
ここで気をつけたいのは、けっして急がせないことです。
訪問時間の中でやることが多いと、ついこちらのペースで進めたくなりますが、急かしてしまうと、ふらつきや転倒につながることがあります。とくに床が滑りやすい場所では、移動時の様子をよく見ながら対応したいところです。
若い子なら問題なくできる動きでも、シニアの子には負担になっていることがあります。
何事もプラスアルファの時間がかかることを念頭において、ゆとりのあるお世話プランを考えておくようにしましょう。
食事に補助が必要になることがある
シニア期に入ると、食事の場面でも配慮が必要になることがあります。
たとえば、
といったことがあります。
また、勢いよく食べようとしてむせたり、うまく飲み込めなかったりすることもあるため、そういう子では食事の量を減らして回数を増やすなどの対策も必要です。
シニアの子の食事は、落ち着いて安全に食べられるかの見守りが重要になります。
少しの手助けで食べやすくなる子や、目が不自由でご飯を見つけられない子などもいますので、その子に合った補助ができるよう、食べ終わるまでは食事に付き添ってあげられるといいですね。
シニア期の子では、体を支える道具が役立つ場面もあります。介護グッズについては、こちらの記事でも詳しくまとめています。
聞こえ方・見え方が変わってくる
シニアの子では、耳が聞こえにくくなったり、目が見えにくくなったりすることがあります。
そのため、若い犬や猫では問題のない接し方でも、シニア期に入った子には驚かせてしまうことがあります。
たとえば、後ろから急に触る、見えにくい位置から手を出す、大きな声で何度も呼ぶ、などは不安を感じさせやすいので、やめておいた方がいいかと思います。
呼びかけに反応しなくても、無視しているとは限りません。単純に聞こえていない、気づいていない場合もあります。
シニアの子に接するときは、
といった配慮を意識すると、お互いに落ち着いて過ごしやすくなります。

疲れやすく、無理がききにくい
シニア犬・シニア猫は、見た目以上に疲れやすいことがあります。
若い子のように『少し頑張っても後で回復する』ということが難しくなってくるため、疲れさせすぎないことがとても大切です。
その子が歩きたそうだからといって、歩けるだけ歩かせるのが正解とは限りません。お散歩時はテンションがあがっていたため、はしゃいでしまったけれど、帰宅後に疲れでぐったりしてしまう、ということもあります。
シニアの子では、外の散歩は『少し物足りないくらい』で終えて、それでも遊びたそうであれば室内で遊ぶ、とするほうが、結果的に無理がありません。

わたし自身は、シニア期の犬さんのお散歩では、保護者さんが普段行っている量を100としたら、70~80くらいでやめておく、くらいを目安にしています。
体調の変化が出たときの影響が大きい
年齢を重ねた子では、ちょっとした不調でも体力を崩しやすいことがあります。
若い子なら少し様子を見てもよさそうな変化でも、シニアの子では慎重に見たほうがよいという場面もあります。
たとえば、
といった変化です。
ペットシッターが診断をすることはできませんが、いつもと違う様子に気づいて早めに保護者さんへ共有することはできます。
シニアの子のお世話では、あとになって、このときの観察と報告がとても重要な意味を持つことになった、ということも少なくありません。
年齢を重ねた子は体調の変化が大きく出やすいため、急変時の連絡や対応手順も事前に確認しておくと安心です。
シニア犬の散歩で気をつけたいこと
シニア犬のお世話で、若い犬との違いが出やすいのが散歩です。
若い頃はしっかり歩いていた子でも、シニアになると、
といった変化が出てくることがあります。
その子に任せて自由に歩かせるのではなく、帰りの体力をほどほどに残しておけるよう、こちら側がペースを作ってあげることが大切です。
わたしも介護が必要な子のお世話をさせていただくことがあるのですが、普段の保護者さんとのお散歩は自分の足で歩く子でも、わたしのお世話には、カートを使っての散歩を希望される保護者さんもいらっしゃいます。
『散歩に時間がかかることはわかっているものの、少しでも外の匂いを感じさせてあげたい』という気持ちと『歩きだと時間が読めないので、カートを使ってほしい』という保護者さんの気配りの結果、そのような形でのお散歩となったためです。
距離が短かったり、大半をカートの上で過ごしていたとしても、外のにおいをかいだり、気分転換をしたりするだけで十分なこともあります。
若い頃と同じ散歩を目指すのではなく、その子に合った形に調整してあげることが大切です。
シニア猫のお世話で気をつけたいこと
シニア猫は犬のように散歩がない分、家の中での変化に気づけるかどうかが大切になります。
たとえば、
といった変化が見られることがあります。
また、これはシニアに限らずですが、猫は不調を隠しやすいと言われるため、訪問時には、
ひとつひとつの動作にしっかり目を配り、ささいなことでも確認と報告を徹底するようにしましょう。
また、見えづらさや聞こえづらさがある子では、急に抱き上げたり、死角から手を出したりすると驚かせてしまうことがあります。
落ち着いて過ごしてもらうためにも、必要がない限りは無理に近づかず、また、近づく必要がある際には、その子が気づける形でそっと近づくことを意識したいところです。

まとめ
シニア犬・シニア猫のお世話にあたる際は、若い犬・猫とは異なる多くの配慮が必要となります。
また、シニアになってくると、さまざまな個性が出てきます。『シニア犬だからこう』『シニア猫だからこう』というような判で押したような対応ではうまくいかないこともあるため、ペットシッターには『その子に合わせて行動を変える視点』が求められます。
無理をさせず、急がせず、よく観察すること。
そして必要な補助や配慮をしながら、その子が安心して過ごせる時間をつくること。それが、シニア犬・シニア猫のお世話で大切にしたいことではないでしょうか。
シニア期のペットを見る際は、その子に合った安心感や気持ちよさをつくることを目標にしてお世話にあたりましょう。その子にとって安心できる時間をつくることが、結果として保護者さんの安心にもつながっていくはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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