はじめに
ペットフードの袋や缶に、『この商品は、ペットフード公正取引協議会の定める分析(または給与)試験の結果、○○用の総合栄養食の基準を満たすことが証明されています』と書かれているのを見たことはないでしょうか。
この表示があると、なんとなく「しっかりしたフードなんだな」と感じますよね。実際、この表示は総合栄養食であることを示すうえで大切なものです。
ただ、その一文だけでフードの中身をすべて判断できるわけではありません。
そこで今回は、この表示が何を意味しているのか、そしてフード選びではほかにどこを見ればよいのかを、できるだけわかりやすく整理してみます。
ペットフード公正取引協議会とは?
ペットフード公正取引協議会(以下「PF協議会」)は、1974年に設立された事業者団体です。PF協議会の概要によると、2026年1月1日現在の会員数は、正会員80社、準会員4社の計84社となっています。
PF協議会は、
といった自主的なルールを円滑かつ適正に運営し、ペットフードの適正な表示を進めるために活動しています。
会員になるには
PF協議会の入会案内によると、加入対象となるのは、ペットフードを製造又は輸入して販売する事業者や、それに準ずる事業者・団体などです。入会にあたっては、申込書類の提出後、理事会での審議・承認を経て会員となる流れが案内されています。
なお、PF協議会への加入は任意であり、会員でなければペットフードを製造・販売できないというわけではありません。一方で、PF協議会では、国内で販売されているペットフードの90%以上を会員企業がカバーしていると案内しています。

有名メーカーも多く参加している
PF協議会の会員一覧を見ると、よく知られたメーカーや販売会社も数多く参加しています。
たとえば、アイリスオーヤマ株式会社、いなばペットフード株式会社、ドギーマンハヤシ株式会社、日本ヒルズ・コルゲート株式会社、ユニ・チャーム株式会社、ロイヤルカナンジャポン合同会社などです。
これらの会員企業は、PF協議会の公正競争規約に基づく表示ルールのもとで、製品表示を行っています。
これらの会社はPF協議会の会員ですので、当然、PF協議会が自主的にさだめている公正競争規約を遵守したペットフードを取りあつかっている、ということになります。
すべての会員はPF協議会のホームページ上の会員一覧から見ることが可能です。自分の購入するペットフードがPF協議会に所属する会社のものかどうかを知っておきたいという方は、PF協議会のホームページでご確認いただければと思います。
自主的ルールである『公正競争規約』とは?
PF協議会の会員について見たところで、次にPF協議会が自主的に定めている『公正競争規約』について見ていきましょう。
PF協議会では、
という2つのルールを運用しています。これらは、景品表示法に基づいて事業者や事業者団体が自主的に設定する業界のルールです。
目的は不当な顧客の誘因防止
それぞれの規約の第1条には、目的が定められています。
第 1 条(目的)
この公正競争規約(以下「規約」という。)は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37 年法律第 134 号)第 31 条第 1 項の規定に基づき、ペットフードの取引について行う表示に関する事項を定めることにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とする。
第1条(目的)
この公正競争規約(以下「規約」という。)は、ペットフード業における景品類の提供の制限を実施することにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とする。
つまり、表示や景品に関するルールを設けることで、事実と異なる説明や行きすぎたアピールによって消費者を誤認させ、不当に自社商品を選ばせることを防ごうとしているわけです。
たとえば、根拠がないのに『無添加』『無着色』と表示したり、『○○に効果がある』といった誤解を招く表現を用いたりすれば、消費者は実際以上に良い商品だと思ってしまうかもしれません。
一般消費者は、パッケージや商品説明に書かれた情報を手がかりに商品を選ぶことが多いため、表示が正確であることはとても重要です。
誤解を招く表示はしてはいけない
たとえば、実際には同じような原材料で作られているペットフードなのに、A社の商品には根拠なく『オーガニック』と書かれていて、B社の商品にはその表示がなかったとします。
その場合、価格が同じくらいなら、『オーガニック』と表示された商品のほうを選ぶ人は少なくないでしょう。
このように、根拠のない表示や誇大な表示は、消費者の選択をゆがめるだけでなく、まじめに表示している他社との競争も不公平にしてしまいます。
公正競争規約は、こうした不当な表示や景品類の提供を、会員事業者同士が自主的なルールとして防ぐためのものです。PF協議会でも、公正競争規約の目的は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択と、事業者間の公正な競争を確保することだと説明しています。
したがって、PF協議会の公正競争規約は、ペットフードの栄養学的な価値そのものを直接評価する制度というより、表示や景品に関するルールを定めることで、消費者が誤解しないようにし、事業者同士の公正な競争を確保するためのものと理解するとよいでしょう。
では、こうした表示ルールの中で、実際にパッケージでよく見かける『総合栄養食の基準を満たすことが証明されています』という文言は、どのような意味を持つのでしょうか。
「総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」とはどういう意味?
総合栄養食とは、そのフードと水だけで、表示された成長段階にある犬や猫の健康を維持できるよう、栄養面に配慮して作られたフードのことです。PF協議会でも、総合栄養食については、分析試験または給与試験によって基準適合を示すことが求められています。
PF協議会の会員会社がペットフードを『総合栄養食』として表示する場合には、
といった表示を行うことになります。さらに、事業者はその表示の根拠となる試験内容や試験結果の保管場所をPF協議会に報告することとされています。
このうち分析試験では、AAFCOの栄養基準が土台になっています。つまり、この表示は、そのフードが定められた方法で栄養基準への適合を示していることを意味します。

AAFCOの基準を満たしていれば、それだけで十分?
AAFCOの基準を満たしていることは、総合栄養食としての重要な目安です。ただし、フード選びのときには、その表示だけで十分とは言い切れません。
たとえば、AAFCOの栄養基準には最小値が中心となっている項目もあります。
犬のたんぱく質がそのひとつで、2016年版では成長・繁殖期で22.5%、成犬維持期で18.0%が最小値として示されています。
こうした基準を満たしていること自体は大切ですが、フードを選ぶときは、その表示だけで判断せず、成分値全体や原材料名、どの成長段階向けの製品なのかもあわせて確認したいところです。
表示の有無だけでなく、原材料名や成分値も確認しよう
「総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」という表示は、フード選びのうえで重要な手がかりになります。一方で、その一文だけで原材料の特徴や、各成分がどのように配合されているか、すべての犬猫に合うかどうかまでは分かりません。
そのため、フードを選ぶときは、
まであわせて確認するのがおすすめです。PF協議会の表示ルールでも、総合栄養食には成長段階や給与量などの表示が求められています。
なお、安全面については、ペットフード安全法により、一部添加物、かび毒、重金属などに上限値が設けられています。したがって、ペットフードの表示は『総合栄養食』の表示の有無だけを見るのではなく、制度上の表示と原材料・成分値の両方を見て判断するのがよいでしょう。
まとめ
ペットの栄養については、今も研究が続いている分野が多くあります。
また、ひとくちに犬や猫といっても体格や体質、成長段階には幅があるため、どの個体にもまったく同じように当てはまる『完璧な基準』を考えるのは簡単ではありません。
AAFCOの栄養基準も、そうした知見の積み重ねの中で見直しが行われてきました。
実際、犬や猫の栄養素プロファイルは改訂されており、基準は今後も更新される可能性があります。
そのため、『この商品は、ペットフード公正取引協議会の定める分析試験の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています』という表示は、フード選びのうえで大切な目安ではあるものの、それだけでフードの特徴のすべてが分かるわけではありません。
PF協議会の制度上、この表示は総合栄養食としての基準適合を示す正式な表示ですが、原材料の内容や成分の傾向、どの犬猫にも合うかどうかまでは、この一文だけでは判断できないからです。
ペットフードを選ぶときは、PF協議会の表示の有無だけを見るのではなく、総合栄養食かどうか、対象の成長段階、原材料名、保証成分値まであわせて確認することが大切です。
表示をうのみにしない、でも表示を無意味だと思わない。
その両方を意識すると、フードをより落ち着いて選びやすくなるでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)




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