ペットシッターは儲からないのか
ペットシッターをしていると、「大変でしょう」と言われることがよくあります。
それは動物のお世話の大変さを想像しての言葉であることもあれば、「生活は成り立つの?」という経済面を心配しての言葉であることもあります。
そういうとき、「じつは、勤め人をしていた頃より休みは少ないんですよ」と答えると、「そんなに忙しいんですか」と驚かれることも少なくありません。
ペットシッターという仕事は少し特殊に見えるため、「儲からないのではないか」と思われがちですが、わたしの経験上、需要自体は決して少なくありません。
今回は、ペットシッターを目指す人なら誰もが気になるであろう、月の収支についてまとめてみました。
ただし、ペットシッターの収入は地域や単価、働き方によって大きく異なるため、平均値を出すのは難しいのが現実です。
そこで本記事では、わたし自身(専業ペットシッター)の実際の収支をもとに、具体的にお伝えできればと思います。
あくまで一例ではありますが、これからペットシッターを目指す方の参考になれば幸いです。
リアルな収支シミュレーション
ひと月あたりの収入:約25~30万円
わたしの場合、月によって差があるので一律には言えないのですが、年間の収入から平均を出すとすると専業ペットシッターとしての月収は、おおよそ25万〜30万円ほどです。
内訳を整理すると、
という働き方になります。
繁忙期と閑散期の差
ペットシッターの収入は、年間を通して一定ではありません。
年末年始やゴールデンウィーク、お盆などの大型連休は繁忙期になりやすく、反対に、大きな連休のない月は閑散期になることもあります。
多くの人は、ペットシッターについて『旅行に行くときなど、留守にする間だけ利用する仕事』というイメージを持っています。たしかに、旅行中の留守番依頼は多いです。しかし、実際の依頼理由はそれだけではありません。
実際の依頼例
これまでわたしが受けた依頼の例を挙げると、
- 旅行時の留守ペットのお世話
- 出張時の留守ペットのお世話
- 他のペットを病院に連れて行く間の様子見
- 保護者さん自身の通院中のお世話
- 冠婚葬祭時の留守番
- 忙しくて散歩に行けない日の代行散歩
- 動物病院への送迎
- 老犬・老猫介護の息抜きサポート
このように、利用理由は多岐にわたります。
留守中の世話が中心であることは間違いありませんが、旅行だけが理由ではありません。
ときには、保護者さんが在宅しているにもかかわらず、「介護の息抜きがほしい」「誰かと話したい」という理由で呼ばれることもあります。つまり、ペットシッターの需要は、『レジャー依存』の仕事ではないということです。
この需要の幅広さが、安定的な依頼につながっています。

ひと月あたりの支出:約30,000円
想定される固定費(一般例)
個人で開業しているペットシッターの場合、毎月おおよそ以下のような固定費が発生します。
地域や集客方法によってかなり差が出ますが、これらの固定費がかかることは念頭に置いておいた方が良いと思います。
わたし自身の実際の支出
わたしの場合、月の固定支出はおよそ30,000円ほどです。
内訳は、
というところでしょうか。
ちなみに、わたしは自宅を仕事場として登録していますが、自宅とは別に仕事場を持つ場合などは、その費用もかかることになります。
現在はとくに広告はしておらず、ブログはありますが、無料ブログを利用しているため維持費もかかりません。
固定費以外にかかる「租税公課」
会社に所属せず個人で活動する場合、以下の支払いも自分で行う必要があります。
これらは売上から直接引かれるわけではありませんが、実質的には『経費と同じ』と考えるべき支出です。
仮にひと月の売上が25万円あったとしても、固定費と租税公課を差し引けば、実質手取りは18万円前後になる可能性があります。
つまり、
売上 = 手取りではない
という点を理解したうえで、料金設定を考える必要があります。
なぜ「ペットシッターは儲からない」と言われるのか
「ペットシッターは儲からない」と言われる理由には、いくつかの要因があると考えますが、わたしが思いつく主な理由は、次の3つです。
閑散期があると思われているため
ペットシッターの仕事は、年末年始や夏休み、ゴールデンウィークなどの長期休暇に集中する、というイメージを持たれがちです。
実際、大型連休は繁忙期になりやすく、スケジュールが埋まりすぎて軽いパニック状態になることもあります(;”)
一方で、それ以外の月は「ヒマなのでは」と思われがちです。
たしかに、わたしも開業から2〜3年目までは、繁忙期はそこそこ忙しいものの、閑散期は月2〜3万円しか売上がない、という状態でした。
しかし、活動を続け、リピーターが増えていくと状況は一変します。
最近では、「◯日は空いていますか?」と確認してから休みを取られる保護者さんもいらっしゃいます。一般的な繁忙期を避けて、あえて閑散期に旅行を計画されるケースもあります。
さらに、上記のとおり、依頼理由は旅行だけではありません。
こうした依頼は、休日や大型連休とは無関係に発生します。
つまり、そのような理由で利用してくださるリピーターが増えるほど、繁忙期と閑散期の差は小さくなってきます。
開業初期は波が大きく、それが「儲からない」と言われる一因になっているのではないかと考えますが、保護者さんとの関係性が積み上がっていくと、その波は次第に穏やかになります。
移動時間が無給であるため
「ペットシッターは儲からない」と言われる理由のひとつが、移動時間です。
多くのペットシッターは、移動そのものに料金を設定していません。ガソリン代などの実費はいただいていても、それはあくまで経費の補填であり、利益にはなりません。
つまり、移動時間は実質『無給』です。
たとえば、1件1時間4,000円の依頼があったとします。
- 市内の依頼で往復移動が1時間の場合
→ 合計2時間で4,000円 - 県内の遠方で往復移動が3時間の場合
→ 合計4時間で4,000円
同じ4,000円でも、かかる時間が増えれば、実質的な時給が半分になることもあります。
わたしは県外の依頼も引き受けることがありますが、基本料金は市内と変えていないため、移動が長くなればなるほど時給換算は下がります。
では、対応エリアを仕事場から近い範囲に限定にすればよいのでしょうか。
たしかに移動時間は減りますが、そのぶん対象となる見込み顧客数も減ります。反対に、対応エリアを広げれば見込み客は増えますが、遠方依頼が増えすぎると、移動時間ばかりがかさむ可能性があります。
このバランスをどう取るかは、シッターそれぞれの判断に委ねられます。
ただし、ひとつ言えるのは、時給換算が国の定める最低賃金を下回るような働き方では、長期的な継続は難しいということです。
収入を考える際には、売上だけでなく、『実際に自分は何時間働いているのか』という視点を持つことも重要です。

価格競争に入ると続かない
もうひとつ、これは『儲からないと言われる理由』ではないのですが、『自分の行いが原因で儲からなくなるケース』があります。
それは、勝手に価格競争に入ってしまうことです。簡単にいうと『自分の安売り』ですね。
ペットシッターを始めたばかりの頃は、自分の腕に自信がないのが普通です。どれだけ長く動物と暮らしてきたとしても、自分の家族だった犬さんのお世話と、他者の家族である犬さんのお世話とでは責任の重さがまったく違います。
その不安から「私はまだ未熟なので」と料金を安く設定してしまう方がいますが、これはおすすめできません。
同じ地域に1時間4,000円で活動しているシッターがいるとしても、新規開業者がそれより安くしなければならない決まりはありません。
料金の中には、
が含まれています。
安く設定すれば一時的に依頼は増えるかもしれません。しかし、移動時間や税金を差し引けば手元に残る金額は少なくなり、結果的に『忙しいのに儲からない』という最悪の状態に陥ります。
それでは、長く続けることは難しくなります。
ペットシッターは命を預かる仕事です。『初心者だから』『料金を安くしているから』といって、その責任が軽くなるわけではありません。
適正な料金をいただき、そのぶん誠実に責任を果たす。それがプロとしての姿勢だと、わたしは考えています。

わたしが目指すのはペットシッターの数が増えること。
動物が好きで動物のために尽くしたいという気持は大切ですが、それだけでは事業として長く続けていくことは難しい。
–
長く続けていくためには収入も大切な要因です。決して自分を安売りするようなことはしないようにしてくださいね。
黒字にするために必要な条件
単価3,000円以下にしない
黒字で続けるための第一条件は、『安くしすぎないこと』です。
依頼がなかなか増えない時期には、基本料金を下げたくなる気持ちも理解できます。しかし、一度安い料金で引き受けてしまうと、あとから値上げするのは想像以上に難しいものです。
価格は、そのまま『あなた自身の価値』として認識されます。
もし、「私にはまだ、この料金に見合う自信がない」と感じるのであれば、基本料金を下げることを考えるのではなく、①資格を取得する、②本を読んで知識を増やす、③知人や友人などのペットをお世話させてもらって経験を積むなどして研鑽し、その料金に見合う実力を身につければよいのです。
最低でも、『固定費+租税公課+移動時間分の時給』を計算し、黒字になるラインを把握したうえで基本料金を設定することが重要です。
地域差はあるかと思いますが、地方都市で営むわたし自身の目安としては、1時間3,000円を下回る設定は、移動が発生する業態では継続が難しくなる可能性が高いと感じています。
知人からの依頼について
ときには、知人から依頼を受けることもあるかもしれません。
その際、「おともだちだから」と軽い気持ちで値引きをしたくなるかもしれませんが、これはあまりおすすめはできません。
どこで誰がどう繋がっているか分からないからです。
自分に置きかえて考えてみてください。
たとえば、自分とおなじサービスを受けた友人が、なぜか自分より安かったとしたらどう思います?
たとえ、それがほんの数百円の差だったとしても、『料金が不透明』という状態は不信に繋がりやすい。なんとなく、そのサービスを受けたお店には足が向かなくなりませんか。
ペットシッターは信頼の仕事です。料金体系は一貫させておくようにしましょう。
対応エリアを広げすぎない
前章でも触れたとおり、移動時間の増加は、そのまま時間単価の低下につながります。
依頼が入らない時期ほど、「少し遠くても引き受けよう」と思いがちですが、その積み重ねが、実質時給を押し下げる原因になります。
目安としては、
など、あらかじめ自分なりの基準を決めておくことが大切です。
エリアを広げれば見込み客は増えます。しかし、遠方依頼が増えすぎると、移動ばかりに時間を取られ、結果的に1日に受けられる件数が減ってしまいます。
とはいえ、開業初期は実績を積むことも重要です。
その場合は、一時的に対応エリアを広めに設定し、仕事が安定してきた段階でエリアを絞っていく、という方法もあります。
たとえば、
といった形です。
エリアは『ただ漠然と広げるもの』ではなく、『状況に応じて調整するもの』と考えるとよいでしょう。
リピーター比率50%以上を目指す
長期的に黒字で続けていくためには、リピーターの存在が欠かせません。
理想をいえば、ご依頼いただいた方のうち、少なくとも半数には継続してお願いしていただける状態が望ましいと感じています。
人も動物も、会う回数を重ねることで相互理解が深まります。
頻繁に顔を合わせる相手には、動物たちも次第に慣れてくれますし、『されて嬉しいこと』『嫌がること』が分かってくれば、怖がりの子や人見知りの子たちのストレスを最小限に抑える行動もとれるようになってきます。
では、リピーターになっていただくために必要なものは何でしょうか。
わたしの個人的な思いですが、特別な営業トークや小技よりも『真摯であること』。これに尽きると考えています。

保護者さんの立場に立てば、自分のいないときに、自宅に、見知らぬ他人が上がり、そして大切な家族であるペットの世話を任せるのです。懸念材料のフルコンボです。不安がないはずがありません。
その不安をゼロにすることはできませんが、ゼロに近づけようとする姿勢は必ず伝わります。
たとえば、
自分の家であればこそ、ほんのわずかな違和感にも気づくものです。
真摯に、誠実に、丁寧に。「家の中には無数のカメラがあり、自分の一挙手一投足が記録されている」という心構えで仕事をする。
派手さはなくても、その積み重ねが信頼となり、結果としてリピーターの増加につながります。
繁忙期に稼ぎ、閑散期に備える
ペットシッターの仕事は、開業初期ほど収入の波が大きくなりがちです。
年末年始や大型連休などの繁忙期には、スケジュールが埋まり、収入も増えます。しかし、その増えた分をそのまま使ってしまうと、依頼が少ない月に資金繰りが苦しくなる可能性があります。
とくに独立開業の場合、
などの固定支出は、仕事量に関係なく発生します。
だからこそ、繁忙期の売上は閑散期のための準備資金として残しておくことが重要です。
固定費と生活費の数か月分を確保できれば、精神的にも余裕が生まれます。その余裕は、価格を安くしすぎない判断や、あせって無理な依頼を引き受けないといった判断にもつながります。
経験と実績を積み、リピーターが増えれば、繁忙期と閑散期の差は徐々に小さくなっていきます。
それまでの期間を乗り越えるためには、『貯める力』をつけておくこともまた、経営の一部だといえるでしょう。
まとめ
ペットシッターは、極端な話、自分の体ひとつあれば始められる仕事です。
店舗を構える必要もなく、大きな設備投資もいりません。ほかの事業と比べれば、毎月の固定支出は比較的少ない部類に入るでしょう。
しかも、収入が増えたからといって固定費が大きく跳ね上がる構造でもありません。そのため、仕組みを整え、依頼件数が安定すれば、収入は着実に積み上がっていきます。
たしかに、ペットシッターという仕事は、大金持ちを目指す業種ではありません。
しかし、事業計画を立て、単価を守り、リピーターを増やし、誠実に積み重ねていけば、専業として生活していくことは十分可能です。
『ペットシッターは儲からない』と言われることもありますが、『正しく設計しなければ続かない』というのが実態に近いでしょう。
もし、さらに上を目指すのであれば、自分の実力が備わった段階で、会社経営という選択肢について考えてみてもいいかもしれません。
自分ひとりで働く限り、時間には上限がありますが、仕組みを作り、人を育て、組織として動かすなら、収入の天井は大きく変わります。
まずは、目の前の一件を誠実に。
そこから始まる積み重ねが生活できるラインをつくり、やがて長く続く、つねに誰かに必要とされる事業へと育っていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)







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