はじめに
葉酸は、人だけでなく犬にとっても大切なビタミンのひとつです。体の細胞をつくったり、健康を保ったりするうえで役立つ栄養素として知られています。
このことをお伝えすると、
と質問をくださる保護者さんがいらっしゃいます。
葉酸は野菜などの食材にも含まれており、食事を通して摂ることもできます。
この記事では、犬にとっての葉酸の働きや、与えるときの注意点、葉酸がとれる身近な野菜について、できるだけわかりやすく解説します。
手作り食の栄養バランスが気になる方や、サプリを使うべきか迷っている方に参考にしていただければ幸いです。
葉酸とは?
葉酸は、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンのひとつです。『ビタミンB9』と呼ばれることもあり、緑黄色野菜の葉の部分やレバーなどに多く含まれています。
犬にとっても葉酸は大切な栄養素で、体の細胞をつくったり、健康を維持したりするうえで役立ちます。水溶性ビタミンは体内に大量にため込んでおけないため、毎日の食事の中で適切に摂ることが大切です。
ただし、愛犬に総合栄養食のペットフードを与えている場合は、基本的に葉酸を特別に追加する必要はありません。
葉酸の働き
葉酸にはいくつかの大切な働きがありますが、犬の健康を考えるうえでは、次のような役割を押さえておくとわかりやすいです。
赤血球づくりを助ける
葉酸は、ビタミンB12などと関わりながら、新しい赤血球をつくる働きを助けます。
そのため、葉酸は『造血に関わるビタミン』として知られています。
細胞の分裂や成長を支える
葉酸は、細胞が分裂するときに必要となるDNAの合成に関わっています。
体の細胞が新しくつくられる場面で重要なため、成長期の犬や、体の組織を保つうえでも欠かせない栄養素です。
体の健康維持に関わる
葉酸は、体内のさまざまな代謝に関わり、健康維持を支える栄養素でもあります。
ビタミンB12とともに働くことで、体の調子を整えるうえで役立つとされています。

犬にとって葉酸が大切な理由
葉酸は、赤血球づくりや細胞の分裂に関わることから、犬が健康に暮らすために欠かせないビタミンのひとつです。不足すると、貧血や食欲不振など、さまざまな不調につながるおそれがあります。
とはいえ、総合栄養食を適切に与えている犬であれば、通常はフードの中に必要な葉酸が含まれています。
そのため、まず大切なのは『葉酸を特別に足すこと』ではなく、今の食事がきちんと整っているかを確認することです。
なお、総合栄養食のパッケージに『総合栄養食』と表示されているフードには、必要な栄養素がバランスよく含まれています。消費期限内のもの※を適切に保存して与えているのであれば、葉酸を追加で与えなくても足りていることがほとんどです。
犬に葉酸を与えるときの注意点
葉酸は犬にとって大切な栄養素ですが、不足も過剰も避けたい栄養素です。
特に、サプリメントや特定の食材を使って「足したほうがいいかも」と考えるときは、まず今の食事内容を確認することが大切です。
総合栄養食を与えている犬では、自己判断で葉酸を追加する必要がないことも多く、かえって全体の栄養バランスを崩してしまうこともあります。
手作り食や食事療法中の犬、持病のある犬では、なおさら慎重に考える必要があります。
葉酸が不足するとどうなる?
葉酸が不足すると、次のような不調がみられるおそれがあります。
葉酸は赤血球づくりや細胞分裂に関わるため、不足すると血液や粘膜、皮膚、全身状態に影響が出ることがあると考えられます。
ただし、日常的に総合栄養食を与えている場合、葉酸不足が単独で問題になるケースは多くありません。「なんとなく元気がないから葉酸不足かも」と自己判断するのではなく、気になる症状がある場合は、まず動物病院で相談するようにしましょう。
葉酸を摂りすぎるとどうなる?
食材から葉酸を摂っているだけで、過剰摂取が問題になることはあまりありません。現在のところ、犬や猫で葉酸の過剰摂取による中毒の報告はほぼありません。
ただし、サプリメントなどで必要以上に補うと、過剰摂取のリスクは高まります。
一般に、過剰な葉酸摂取では次のような点が問題になる可能性があります。
そのため、葉酸を含む犬用サプリメントを使う場合は、自己判断で始めないことが大切です。サプリメントを与えようと考えている場合、必ず事前に獣医師に相談し、製品に記載された用量を守るようにしましょう。

どれくらいを目安にすればよい?
犬に必要な栄養素(ここでは葉酸量)の目安にはいくつかの基準があり、どの基準を採用するかによって数値は少し異なります。
| 基準 | 成長期 | 維持期 |
|---|---|---|
| AAFCO(2016) | 54μg | 54μg |
| NRC(2006) | 67.5μg | 67.5μg |
| FEDIAF(2008) | 67.5μg | 45μg |
※いずれも1,000kcalあたり
- AAFCO……米国飼料検査官協会
- NRC…… 米国学術研究会議
- FEDIAF……欧州ペットフード工業会連合
このように、基準によって多少の違いはありますが、大きな差はありません。
今回は計算しやすさと一般的なわかりやすさから、『AAFCO(2016)の「1,000kcalあたり54μg」』を目安として考えていきます。
計算式は次のとおりです。
計算式:(愛犬の1日の必要カロリー × 54μg)÷ 1,000
たとえば、1日の必要カロリーが300kcalの犬であれば、
(300 × 54)÷ 1,000 = 16.2μg
となり、葉酸の目安量は約16.2μg/日になります。
ただし、この数値はあくまで食事全体で考える目安です。1種類の野菜だけでぴったり合わせる必要はなく、普段与えているフードやほかの食材に含まれる葉酸も合算して考えることが大切です。
葉酸がとれるおすすめ野菜4選

葉酸を含む食材には、レバー、菜の花、卵黄、ニラなどさまざまなものがあります。今回はその中から、犬が食べやすく、家庭でも取り入れやすい野菜として、次の4つを選びました。
- 犬が食べても問題のないもの
- 葉酸以外の栄養素で過剰症の心配が少ないもの
- スーパーなどで手に入りやすいもの
- 調理が簡単なもの
なお、ここでご紹介する量は、『その野菜だけで葉酸の目安量を満たすならこれくらい』という計算上の目安です。実際には、主食やほかの食材にも葉酸は含まれているため、1種類の野菜だけでぴったり合わせる必要はありません。
また、今回は例として、1日の必要カロリー(DER)が300kcalの犬を想定して計算しています。
AAFCO(2016)の基準で考えると、この場合の葉酸の目安量は1日約16.2μgです。
【例】1日の必要カロリーが300kcalの犬の場合➡([300]×54㎍)÷1,000 = 16.2㎍
愛犬に置きかえて考えたい場合は、上の[300]の部分を、愛犬の1日の必要カロリーに差し替えて計算してみてください。
\ 愛犬に必要なカロリーが分からない場合はこちら /
アスパラガス
【ゆでたアスパラガス】にふくまれる葉酸の量:100gあたり180μg
ゆでたアスパラガスには、100gあたり約180μgの葉酸が含まれています。1日16.2μgの葉酸を目安にする場合、アスパラガスだけで考えると約9gが目安になります。
計算式:(100 × 16.2)÷ 180 = 9g
ゆでたアスパラガス1本はおよそ16gほどなので、約1/2本が目安です。
アスパラガスは比較的少ない量で葉酸をとりやすく、取り入れやすい野菜のひとつです。βカロテンやカリウムも含まれていますが、今回のような少量であれば、通常そこまで神経質になる必要はありません。
さやえんどう
【ゆでたさやえんどう】にふくまれる葉酸の量:100gあたり56μg
ゆでたさやえんどうには、100gあたり約56μgの葉酸が含まれています。
1日16.2μgの葉酸を目安にする場合、さやえんどうだけで考えると約28.9gが必要になります。
計算式:(100 × 16.2)÷ 56 = 28.9g
ゆでたさやえんどう1さやは約2gほどなので、14〜15さや前後が目安です。今回ご紹介する4つの中では、必要量はやや多めです。
さやえんどうにもβカロテンが含まれていますが、通常の食事の範囲であれば、過度に心配する必要はないでしょう。ただし、量が多くなりやすいぶん、与えすぎには注意したい野菜です。
オクラ
【ゆでたオクラ】にふくまれる葉酸の量:100gあたり110μg
ゆでたオクラには、100gあたり約110μgの葉酸が含まれています。
1日16.2μgの葉酸を目安にする場合、オクラだけで考えると約14.7gが必要です。
計算式:(100 × 16.2)÷ 110 = 14.7g
ゆでたオクラ1本は約10gほどなので、1.5本くらいが目安になります。
オクラは比較的少ない本数で葉酸をとりやすく、刻んで混ぜやすいのも使いやすいところです。こちらもβカロテンを含みますが、一般的なトッピング量であれば、あまり気にしすぎなくてよいでしょう。
ブロッコリー
【ゆでたブロッコリー】にふくまれる葉酸の量:100gあたり120μg
ゆでたブロッコリーには、100gあたり約120μgの葉酸が含まれています。
1日16.2μgの葉酸を目安にする場合、ブロッコリーだけで考えると約13.5gが必要です。
計算式:(100 × 16.2)÷ 120 = 13.5g
小房から一口サイズに切り分けたブロッコリー1切れは、おおよそ10〜16gほどなので、中〜大サイズで1切れくらいが目安になります。
切り方によって重さが変わるため、気になる場合は家庭用スケールで量ってみると安心です。
ブロッコリーにはβカロテンやビタミンKも含まれています。ただし、今回のような少量を食事に添える範囲であれば、通常は過度に心配する必要はありません。
愛犬に葉酸を与えるときのポイント
葉酸を意識するときに大切なのは、ひとつの食材だけで完璧にしようとしないことです。
食事は全体のバランスで考えるものなので、『この野菜を●gだけ食べさせればOK』と単純に考えすぎないほうがうまくいきます。
いろいろな食材の合計で考える
ここまでご紹介した数値は、あくまで『その野菜だけで葉酸の目安量を満たすなら』という計算です。
実際の手作りご飯では、ほかの野菜や肉、主食など、さまざまな食材を組み合わせることになるため、『全体として少しずつ葉酸がとれているか』を見ることが大切です。
なお、人では食べ物から摂った葉酸の吸収率は50%程度ともいわれています。
犬では人と同じとは限りませんし、腸内細菌によってある程度の葉酸がつくられているとも考えられています。そのため、細かく数字を合わせすぎるよりも、食事全体で目安量を少し上回るくらいを意識するほうが実践しやすいでしょう。
療法食や持病がある場合は自己判断で追加しない
愛犬が療法食を食べている場合や、療法食でなくても食事管理をしている場合は、『少しだけだから大丈夫』と自己判断で食材を足すことで、せっかくの食事設計が崩れてしまうことがあります。
葉酸に限ったことではありませんが、食事療法中の犬、持病のある犬、栄養バランスを細かく調整している犬には、自己判断で食材やサプリを追加しないことが大切です。
気になることがある場合は、「これを少し足したいのですが大丈夫でしょうか」と、事前に獣医師に相談してみるようにしてくださいね。
まとめ|『愛犬のため』でも神経質になりすぎないで
今回は、葉酸についてできるだけ正確にお伝えしたかったので、少し細かい計算もご紹介しました。
ただ、わたし自身は、毎日の食事を考えるうえでは、そこまでガチガチに数字を合わせなくても大丈夫と考えています。
カロリーオーバーにならない範囲で、愛犬の体調や好みを見ながら、無理のない形で食材を取り入れていけば十分。「葉酸を足さなきゃ」と気負いすぎるより、まずは今の食事全体が整っているかを見直すことのほうが大切です。
また、総合栄養食を与えている場合でも、愛犬が喜ぶなら、たまに少量の野菜をトッピングとして楽しむのもよいでしょう。
食事は栄養のためだけでなく、愛犬と保護者さんの楽しみの時間でもあります。
数字はあくまで目安として、あまり神経質になりすぎず、続けやすい形で取り入れてみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)




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