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ジビエ生肉は危険?E型肝炎・O157・寄生虫など犬と人のリスクを解説

ジビエ生肉は危険?E型肝炎・O157・寄生虫など犬と人のリスクを解説 コラム
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はじめに

ジビエとは、シカやイノシシなど、狩猟や有害鳥獣として捕獲された野生鳥獣、またはその肉のことです。近年は『栄養がありそう』『自然のものだから安心』といったイメージから、ジビエに興味を持つ方も増えています。

しかし、野生鳥獣の肉は、家畜のように飼育段階で衛生管理されているわけではありません

そのため、生や加熱不十分な状態で食べると、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、寄生虫などによる食中毒や感染症のリスクがあります。厚生労働省も、ジビエは中心部までしっかり加熱して食べるよう呼びかけています。

また、生のジビエ肉には衛生面でのリスクもあります。

この記事では、ジビエ生肉にひそむ主な危険と、犬にも人にも安全に扱うためのポイントをわかりやすく解説します。

ジビエ食に興味がある方にお読みいただければ幸いです。

忙しい方への三行まとめ
  • ジビエ生肉には、E型肝炎ウイルス、O157、サルモネラ、寄生虫などのリスクがある
  • 食べるだけでなく、生肉に触れた手や器具から二次汚染を起こすこともあるため、手洗いと消毒が大切
  • 人が食べるときも、犬に与えるときも、生ではなく必ず十分に加熱する
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ジビエ生肉にはどのような感染症にかかるリスクがある?

E型肝炎ウイルス(HEV)

E型肝炎ウイルスは、イノシシやシカの肉やレバーを生、または加熱不十分な状態で食べることで感染することがあります。

人では肝炎を起こすことが知られており、ジビエ生肉を扱う上で注意したいウイルスのひとつです。

一方、犬については、これまでの報告では感染してもはっきりした肝炎症状がみられなかったとされています。ただし、日本獣医学会のQ&Aでも、犬や猫に今後発症がみられる可能性や、ウイルスの性質の変化によって症状を引き起こす可能性までは否定できないとされています。

これまで『感染しても症状が出なかった』とされていても、今後も絶対に安全とは言い切れません。愛犬に与える場合も、人が食べる場合も、ジビエ肉は必ず十分に加熱してからにしましょう。

住肉胞子虫(サルコシスティス)

住肉胞子虫(サルコシスティス)は、動物の筋肉内に寄生する寄生虫です。シカ肉の生食が原因と疑われる食中毒事例も報告されています。

実際に、2011年12月と2015年12月には滋賀県で、2018年6月には和歌山県で、シカ肉が原因と疑われる食中毒事案が発生しています。また、調査したシカ36頭のうち36頭すべてで虫体が確認されたという報告もあり、シカでの保有率の高さがうかがえます。

住肉胞子虫は馬肉でも問題になることがあり、一定条件での冷凍により失活するとされています。

ただし、ジビエ全体で考えると、冷凍だけで十分とは言い切れません。なかには冷凍に強い寄生虫もいるため、冷凍に頼りすぎず、最終的にはしっかり加熱することが大切です。

トリヒナ(旋毛虫)

トリヒナは、筋肉内に寄生する寄生虫です。

日本ではクマの刺身を食べた人で感染が確認されており、そのほかイノシシ、ブタ、ウマなども宿主となりえます。また、海外では、生のスッポンを食べた人で集団発症が起こった例もあります。

このように、見た目ではわからなくても、生肉には寄生虫が潜んでいることがあります。

トリヒナは冷凍に強い種類もあり、冷凍しただけでは十分な予防にならない場合があります。そのため、感染を防ぐには中心部までしっかり加熱することが基本です。

ウエステルマン肺吸虫

ウエステルマン肺吸虫は、肺に寄生する吸虫の一種です。サワガニやモズクガニが感染に関わる生物として知られています。

雑食性のイノシシがこれらのカニを食べて感染することがあるのは想像しやすいですが、草食動物と思われがちなシカでも、サワガニ由来のDNAが検出された報告があります。

さらに、そのシカ肉を生で食べた人で肺吸虫症が報告された例もあります。

『草食動物だから安全そう』とは言い切れないのが、野生動物の難しいところです。ジビエは種類にかかわらず、生ではなく十分に加熱して食べることが重要です。

腸管出血性大腸菌(EHEC)O157

腸管出血性大腸菌O157は、人で重い食中毒を起こすことがある細菌です。

シカやイノシシなどの野生動物だけでなく、さまざまな動物が保有している可能性があります。

犬にO157を投与した実験では、はっきりした感染や定着の徴候はみられなかったものの、投与後しばらくの間、便のなかに生きた菌が排出されたと報告されています。

つまり、犬自身に症状が出なくても、排せつ物を通じて周囲を汚染する可能性があります。

そのため、野生動物の生肉に触れるときはもちろん、犬の便を処理したあとの手洗いもとても大切です。

とくに小さなお子さんや高齢の方がいる家庭では、便の処理後の手洗い、トイレまわりの清潔保持、調理器具の使い分けなどを意識すると安心です。

サルモネラ属菌

サルモネラ属菌は、動物や自然環境のなかに広く存在する細菌で、食中毒の原因としてよく知られています。

犬が保有していることもありますが、問題になるのは『細菌がいるかどうか』よりも、肉や便、調理器具などを介して人や動物に広がる可能性があることです。

犬用ローフードおよび犬用フリーズドライ食品を調べた報告では、犬用ローフード46検体中7検体からサルモネラ属菌が検出されています。

フリーズドライ食品ではサルモネラ属菌は検出されなかったものの、別の細菌が検出されており、生肉由来食品には衛生面で注意が必要であることがわかります。また、シカの刺身を食べた人でサルモネラ属菌による食中毒が起きた例もあります。

『犬用だから安全』『見た目がきれいだから大丈夫』とは考えず、生肉や非加熱食品は慎重に扱うことが大切です。

※ローフード……加熱しない生の状態、もしくは48℃以下で調理した食材を使用した食品

カンピロバクター

カンピロバクターは、シカやイノシシなどの野生動物のほか、牛・豚・鶏などの家畜、さらに犬や猫などのペットも保有しうる細菌です。

食中毒の原因菌として非常に身近で、少量でも感染が成立することがあります。

2015年4月には、北海道の飲食店でカンピロバクター食中毒が疑われる事例があり、死亡例も報告されました。ジビエに限らず、生肉や加熱不十分な肉は危険です。

カンピロバクターなどの細菌は肉の表面に付着していることが多いとされますが、表面だけを加熱するのではなく、中心部までしっかり火を通すことで、食中毒のリスクを下げることができます。

また、犬がカンピロバクターを保有していることもあり、特に若い犬や下痢をしている犬では注意が必要です。愛犬の便を片づけたあとは、必ず石けんで手を洗うようにしましょう。

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補足:野生動物に関連して知っておきたい感染症

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSはE型肝炎やO157のように『食べたことが原因で感染する』ものではありませんが、主にマダニが媒介し、感染した動物の血液や体液への接触でも感染が問題になることがある病気です。

SFTSは、主にマダニが媒介するウイルス感染症で、人だけでなく、犬や猫などの動物にも感染することがあります。

通常はマダニに刺されることで感染しますが、感染した動物の血液や体液に触れることで感染したと考えられる事例も報告されています。

野生動物の肉や内臓を扱うときは、素手で触らず、手袋を着用するなどの対策が大切です。

にこやま
にこやま

食べなくても、生肉や血液に触れることで感染症のリスクが生じることがあります。生肉を扱ったあとの手洗いや、調理器具の洗浄・消毒も忘れないようにしてくださいね。

慢性消耗病(CWD)

慢性消耗病(CWD)は、シカやシカ科動物でみられるプリオン病のひとつです。

異常なプリオンたんぱくが脳などにたまることで起こる病気で、同じプリオン病には牛海綿状脳症(BSE)があります。

日本では現在のところCWDの発生は確認されていませんが、海外では、アメリカのミュールジカ、カナダのアメリカアカシカ、ノルウェーのトナカイなどで感染が確認されています。

また、排せつ物などを通じて環境中に広がる可能性があることも問題視されています。現在のところ、CWDが人に感染することは確認されていません。ただし、完全に可能性が否定されたわけでもないため、海外では慎重な対応がとられています。

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愛犬にジビエを与えるときに気をつけたいこと

ジビエには、ふだんの食肉よりも衛生面で注意したい点があります。

野生動物の肉は、家畜のように飼育段階から管理されているわけではないため、ウイルスや細菌、寄生虫などのリスクを前提に扱うことが大切です。

せっかくの食事で、愛犬や家族が体調を崩してしまっては元も子もありません。

人が食べる場合はもちろん、愛犬に与える場合も、「新鮮そうだから大丈夫」「冷凍したから安心」とは考えず、しっかり加熱し、清潔に扱うことを基本にしましょう。

生食は避ける

ジビエ肉は、愛犬に与える場合でも生食は避けるのが安心です。

生肉には、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、カンピロバクター、寄生虫などが潜んでいる可能性があります。

なかには冷凍で失活するものもありますが、すべての細菌や寄生虫に同じ方法が通用するわけではありません。たとえば、住肉胞子虫では冷凍が予防に役立つことがありますが、トリヒナのように冷凍に強い寄生虫も知られています。

そのため、『冷凍したから安全』とは言い切れません。愛犬に与えるときは、生のままではなく、中心部までしっかり火を通したものを与えるようにしましょう。

調理器具を分ける

ジビエ肉を調理するときは、できればまな板や包丁を分けると安心です。

生肉の表面には細菌が付着していることがあり、そのままサラダや果物など、加熱しない食品に菌が移ってしまうことがあります。

こうした二次汚染は、肉そのものをしっかり加熱していても起こることがあります。『火を通すから大丈夫』と油断せず、生肉を扱った器具はほかの食品に使い回さないようにしましょう。

愛犬用に少量だけ調理する場合でも、できれば専用の器具を用意し、使ったあとはすぐに洗浄・消毒する習慣をつけておくと安心です。

手洗い・消毒を徹底する

ジビエ肉を扱ったあとは、手洗いと調理器具の消毒を徹底するようにしましょう。

感染症や食中毒は、食べたときだけでなく、生肉に触れた手や調理器具を介して起こることもあります。

とくに、肉汁が手についたまま冷蔵庫の取っ手や蛇口、食器などに触れると、そこから菌が広がるおそれがあります。

調理後は石けんを使ってしっかり手を洗い、まな板や包丁、ボウルなども丁寧に洗浄しましょう。ふきんやスポンジにも菌が残ることがあるため、使いっぱなしにしないことも大切です。

体調不良時は中止して受診する

もしジビエを食べたあとに、愛犬が下痢、嘔吐、元気消失、食欲不振などの症状を見せた場合は、すぐに与えるのをやめましょう。

「たまたまお腹をこわしただけかな」と様子を見たくなることもありますが、感染症や食中毒が関係している可能性もあります。

とくに、子犬、シニア犬、持病のある犬では、体調を崩したときの影響が大きくなりやすいです。症状が続く場合や、ぐったりしている場合は、早めに動物病院へ相談してください。

受診の際は、いつ、どの肉を、どのくらい食べたかを伝えられると診察の参考になります。可能であれば、食べた肉の種類や状態、加熱の有無などもメモしておくと安心です。

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ジビエ肉は必ず加熱を

ジビエ肉を安全に食べるために、もっとも大切なのは十分に加熱することです。これは人が食べるときだけでなく、愛犬に与える場合にも同様です。

野生動物の肉には、見た目やにおいだけではわからない細菌や寄生虫、ウイルスが潜んでいることがあります。『新鮮だから』『きれいな色をしているから』といった印象だけで、安全かどうかを判断することはできません。

そのため、ジビエを食べるときは、生食や加熱不十分な状態を避け、中心部までしっかり火を通すことを徹底しましょう。
あわせて、肉を触った手や調理器具の衛生管理にも気を配ることが大切です。

中心部までしっかり火を通す

加熱するときは、表面だけではなく、肉の中心部まで十分に火を通すことが大切です。外側が焼けていても、中が半生の状態では、細菌や寄生虫が残っている可能性があります。

とくに厚みのある肉やかたまり肉は、見た目だけで火の通り具合を判断しにくいため注意が必要です。レアや半生の状態は避け、切ったときに中心までしっかり加熱されていることを確認しましょう。

ジビエ肉はおいしさよりも、まずは安全第一。

愛犬用に調理するときも、「少しやわらかいほうが食べやすそう」と考えて火加減を弱めるのではなく、安全を最優先にして十分に加熱することが大切です。

生肉を触った手・まな板・包丁の消毒も大切

ジビエの危険は、肉を食べることだけに限りません。生肉に触れた手や、まな板、包丁、ボウルなどを通じて、ほかの食品や口に入るものに菌が移ることがあります。

そのため、調理のあとは、器具をよく洗い、必要に応じて熱湯や台所用漂白剤などで消毒することが大切です。手も石けんを使って丁寧に洗い、爪の間まできちんと汚れを落としましょう。

また、調理台やシンクまわりに肉汁が飛んでいることもあるため、最後に周辺もふき取っておくと安心です。

にこやま
にこやま

①しっかり加熱することと②調理後の衛生管理は、どちらか一方ではなく、両方そろってはじめて意味があります。

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まとめ

ジビエは魅力のある食材ですが、生や加熱不十分な状態では、細菌や寄生虫、ウイルスなどによる健康リスクがあります。

なかには冷凍が予防に役立つものもありますが、それだけですべての危険を防げるわけではありません。ジビエ肉を食べるときは、人用も犬用も必ず十分に加熱すること、そして手洗いや器具の洗浄・消毒を徹底することが大切です。

せっかくの食事を安心して楽しむためにも、『しっかり加熱』と『清潔に扱う』の二点を大切にしていただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました(’ü’)

参考資料
  • 厚生労働省:野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)について
  • 生肉ジビエ料理の危険性,ペット栄養学会誌18(2),2015
  • ジビエの生食の危険性,ペット栄養学会誌21(1),2018
  • 日本における犬用非加熱フード(ローフード)からのサルモネラ属菌検出状況調査,ペット栄養学会誌21,2018
  • Sarcocystis属が寄生していた鹿肉を生で喫食したことによる食中毒事例,日獣会誌73,2020
  • シカ肉の生食による肺吸虫感染の可能性,日獣会誌71,2018
  • 腸管出血性大腸菌O157:H7の犬腸管内における挙動,日獣会誌57,2004
  • 日本獣医学会2017/9/4解答
  • イヌ、ネコからの感染が考えられるカンピロバクター腸炎―4月報道の食中毒死亡例は初症例か―,大塚薬報,No.706,2015

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