犬と猫では、ペットシッターとして気をつけるべきポイントが少し違います。
犬は散歩や運動、外での安全管理が重要になりやすい一方で、猫は環境の変化や人の出入りに敏感な子が多いため、より繊細な配慮が必要です。
実際、猫は知らない人が家に入るだけでも緊張したり、いつもと違う空気を感じ取って隠れてしまったりすることがあります。
そのため、猫のシッティングでは「しっかりお世話をすること」だけでなく、「できるだけ普段どおりの環境を保つこと」を意識しなくてはなりません。
また、猫のお世話では、食事やトイレ掃除のような基本的な作業だけでなく、脱走防止やストレスへの配慮など、犬とは違う注意点もあります。
この記事では、猫のペットシッターとして知っておきたい基本的な仕事内容と、猫にストレスを与えないために気をつけたいことについて、犬との違いもふまえながらわかりやすくまとめてみました。
猫のシッティング前に確認しておきたいこと
猫は、犬以上に個体差が大きく、性格や生活習慣によって対応がかなり変わります。
そのため、当日になってから、その場で判断しようとすると困ることが少なくありません。猫のお世話については、事前打ち合わせの段階で細かいところまで確認しておくことが重要です。
食事やトイレのルール
まず確認しておきたいのが、毎日の食事やお水、トイレに関する「その子のルール」です。
ごはんの回数や量、おやつの有無、食器の場所、トイレ掃除の方法などは、家庭によって(あるいは猫によって)かなり違います。
「事前の打ち合わせで聞き忘れていたけれど、これはこういうことだろう」と自己判断してしまうと、猫が戸惑ったり、保護者さんの希望とずれてしまったりすることがあります。
できるだけ普段どおりにお世話ができるよう、細かいこともあらかじめ確認しておくと安心です。

多頭飼育の場合、猫ごとにご飯の種類や器が違ったり、食べる場所、器に盛るご飯の量などまで細かい差があることも。猫ごとに細かくメモを取り、間違いのないよう注意が必要です。

猫の性格や苦手なこと
猫は性格の違いがとても大きい動物です。
初対面でもぐんぐん寄ってきてくれる子もいれば、知らない人が来るとすぐに隠れてしまう子、人に触られること自体が苦手な子もいます。
そのため、
を事前に聞いて頭に入れておくと、当日の対応がしやすくなります。
緊急時の連絡先や受診の方針
これは犬のお世話時も一緒ですが、体調不良や事故などが起きたときに備えて、保護者の連絡先、かかりつけの動物病院、緊急時の対応方針も確認しておかなければなりません。
特に猫は、体調不良をわかりやすく見せないことがあります。
そもそも完全に隠れてしまって、姿を見ることさえ叶わないケースも少なくありません。
などを事前に確認しておくと、いざというときにも落ち着いて対応しやすくなります。
猫のペットシッターが行う基本的なお世話
猫のペットシッターの仕事内容も、犬と同じように「ご飯や水を用意する」「生活環境を整える」といった基本的なお世話が中心です。
ただし、猫の場合は散歩が不要なことが多いため、その分、室内での様子をよく観察することが大切になります。
食事の用意と食べた量の確認
食事の与え方は、それぞれの家によって(あるいは猫によって)さまざまです。
置き餌にしている子もいれば、時間を決めて食べている子もいます。床に器を直置きしたい子もいれば、キャットタワーの一番上で食べる子もいるため、保護者さんから事前に聞き取った方法に合わせて対応するようにしましょう。
また、猫は体調不良やストレスがあると食欲に変化が出やすいため、
といった点も確認しておくと安心です。

お水の交換
猫にとって飲水量の確認はとても大切です。
とくに猫は泌尿器系のトラブルが起こりやすい動物でもあるため、いつもよりお水の減り方が極端に少ない、多いといった変化にも目を向けたいところです。
わたしがしていることとしては、1日2回のお世話の際は、1回目に入れた水の量を測っておき、2回目の訪問時に減っている水量を報告する、ということをしていました。

このとき、キッチンスケールがあると便利です。わたしは2kgまで測れるキッチンスケールを常備していました。
また、猫はキレイな水を好みます。お水を交換する際は器も洗浄し、できるだけ清潔な状態を保つようにしましょう。
なお、ひとつの水飲みだけではひっくり返ったり、おもちゃを入れて汚したりすることもありますので、普段、器がひとつしかないご家庭でも、留守時は3つ以上の器を用意していただくようにお願いしています。
トイレ掃除と排泄のチェック
猫のお世話で特に重要なのが、トイレ掃除と排泄状態の確認です。
猫はトイレが汚れていることを嫌がる子が多く、清潔さが保たれていないと排泄を我慢してしまうこともあります。
そのため、
を確認しながら、トイレまわりをきれいに整えましょう。
遊びや見守り
猫によっては、おもちゃで少し遊ぶことが気分転換になることもあります。ただし、すべての猫が「他人であるシッターとの遊び」を求めるわけではありません。
知らない人とは距離を取りたい子も多いため、その子の反応を見ながら無理のない範囲で対応することが大切です。
遊びよりも、静かに見守るほうが安心する猫もいます。
猫のシッティングでは「してあげられることを探して世話を焼く」よりも、「必要以上に関わりすぎない」ようにする方が大事な場合もあります。
猫のシッティングでは犬以上にストレスへの配慮が大切
猫のお世話では、作業をこなすこと以上に、猫にストレスを与えないことが大切です。犬では問題になりにくいことでも、猫にとっては大きな負担になる場合があります。
ここでは、猫のシッティングで特に意識したいポイントを紹介します。
無理にさわらない・写真を撮らない
猫が近づいてこない、姿を見せないときは、無理に触ろうとしないことが重要です。
「早く自分に慣れてもらいたい」「保護者さんに姿を見せてあげたいから写真を撮りたい」という気持ちは分かりますが、猫にとってはそれが緊張や警戒につながることがあります。
とくに初回や、もともと人見知りの強い子の場合は、そっと見守るくらいの距離感のほうが安心できることも少なくありません。写真についても、保護者への報告用に必要な場合を除き、猫の負担にならないよう配慮したいところです。

事前の打ち合わせの段階で姿を見せない子に関しては、写真を撮れない可能性についても保護者さんにお伝えしておき、「見えない場合は、わざわざ探し出すまではしない」ほうがよいかどうか相談しておくと当日の作業がスムーズに行えます。

保護者が決めたルールを守る
猫のシッティングでは、保護者が普段どのように接しているかをできるだけ崩さないことが大切です。
たとえば、
といったルールがある場合は、それをきちんと守る必要があります。
善意で行ったことでも、普段と違う対応が猫のストレスになってしまうケースは少なくありません。猫のためを思うなら、まずは「いつもどおり」を大事にしたいところです。
静かに作業し、驚かせない
猫は物音や人の気配に敏感な子が多いため、シッティング中はできるだけ静かに行動することを意識しましょう。
ドアの開閉、足音、物を動かす音などが大きいと、それだけで驚かせてしまうこともあります。
声かけをする場合も、明るく大きな声というよりは、低めの落ち着いたトーンのほうが安心しやすいことがあります。
必要以上に環境を変えない
猫は環境の変化に敏感です。
そのため、食器やトイレの位置を変えたり、家具の置き方を変えたり、よかれと思って片づけすぎたりするのは避けたほうが賢明です。
たとえ少し散らかって見えたとしても、それがその猫さんにとっての「いつもの景色」であれば、誤食やケガの危険がない限り、勝手に変えないようにしましょう。
万が一、食器とトイレの位置が近い、家具が邪魔でトイレに入りにくそう、などという気づきがあれば、事前の打ち合わせの段階で伝えるか、後日、お世話が終わった後の報告メールで保護者さんにお伝えするのが良いと思います。
猫の様子に気を配る
猫は犬に比べて、不調や痛みをわかりやすく見せないことがあります。
そのため、トイレやご飯の器などに残された痕跡などから違和感にも気づけるようにしたいところです。
たとえば、
といった様子が見られた場合は、気づき次第、保護者さんへ報告するようにしましょう。

お水が異常に減っていると思ったら、ひっくり返してあたり一面が水浸しということもありました。お水はひっくり返せない重ための器に入れておくことをおすすめします。
猫のお世話で特に気をつけたい脱走防止
猫のシッティングで、食事やトイレと同じくらい、あるいはそれ以上に気をつけたいのが脱走防止です。
猫は静かに過ごしているように見えても、ドアや玄関が開いた一瞬を見て動くことがあります。
わたしも、脱走につながりかねない場面にヒヤッとしたことがあります。
猫のシッティングにあたる際は、「興味がないみたいだから、大丈夫そう」に見えても油断せず、毎回ひとつひとつ丁寧に確認することが大切だと痛感しています。

室内の扉を開ける前に確認したところ、離れた場所でくつろいでいたので扉を開けたら、信じられない勢いで走ってきた子がいました。隣の部屋につながっているだけなので、別に問題はないのですが、これが玄関ドアだったらと思うとヒヤリとしました。
玄関や部屋のドアの開閉に注意する
室内への出入りの際は、玄関や部屋のドアを開ける前に、猫がどこにいるかを確認することが大切です。気配なく足元に来ていることもあるため、見えていないから大丈夫とは限りません。
また、荷物の出し入れや掃除などで、普段より長くドアを開ける場面があると、その隙に動く可能性があります。
「出てほしくない場所」につながる扉を開ける際は、先に猫の位置を確認してから(できれば、その瞬間だけ別の部屋に移すなどしてから)行動するようにしたいところです。

ベランダや網戸からの脱走
換気のために窓を開ける場合、網戸があっても安心してはいけません。器用にツメをひっかけて開けたり、網戸を破って脱走する可能性があります。保護者さんから許可されていない限り、窓などは安易に開けないほうが安全です。
「猫は液体」と言われるように、信じられないほどの小さな隙間でも、脱走のきっかけになることがあります。
室内の換気をお願いされている場合は、閉め切った別室に猫を移動させ、その間だけ窓を開けて換気するようにしましょう。
宅配や来客対応にも気をつける
猫のお世話中にインターホンが鳴ったり、宅配が来たりすることがあります。
「出なくていい」と指示されている場合には出ることはありませんが、なかには荷物の受け取りもお願いされることもあります。
普段はおとなしい子でも、インターホンの音や知らない人の気配で慌てて動くことがあります。
脱走は、特別な場面よりも、こうした日常の一瞬で起こりやすいものです。
シッティング中は、最初から最後まで脱走の可能性を意識して行動することが大切です。
猫には短時間のシッティングプランが向いていることも
「長く家にいて、丁寧にお世話をすること」が、必ずしもすべての猫にとって最善とは限りません。猫の中には、知らない人が家にいること自体を強いストレスに感じる子もいます。
わたしは、そうした猫のために、通常の1時間プランだけでなく、30分程度の短時間プランを設けて対応することがあります。
必要なお世話だけを手早く済ませ、猫への負担をできるだけ減らすためです。
「その子の性格や反応を見ながら、滞在時間も含めて臨機応変な対応ができるシッター」というのは「仕事の差別化」としても有益だと思います。
ホテルが難しい猫には、ペットシッターは大切な選択肢
猫は犬よりも環境の変化に弱い子が多く、ペットホテルの利用が難しい場合があります。
実際に、わたしのお客様の中にも、ペットホテルに預けたところ、1日中飲まず食わずで、おしっこもしなかったという子がいました。
そのような猫にとって、自宅でいつもどおりに過ごせるペットシッターは、とても大切な存在です。
知らない場所へ連れて行かずに済むこと、猫が慣れた環境で過ごせることは、猫にとっても保護者にとっても大きな安心につながります。
まとめ|猫の特性を理解し、ストレスを与えない配慮を
猫によっては知らない人が家にいること自体が負担になることもあります。
そのため、猫のお世話では、食事や水の交換、トイレ掃除といった基本的なお世話に加えて、猫にストレスを与えない配慮がとても重要になります。
まとめると、猫のシッティングでは、
といった姿勢が特に求められます。
また、ペットホテルでのお留守番が難しい猫と保護者さんにとっても、ペットシッターは大切な支えになれる仕事です。
それぞれの猫の特性を理解し、事前打ち合わせで性格や生活習慣を確認したうえで、その子に合った距離感でのお世話ができると、猫にも保護者さんにも安心してもらえると思います。
動物が好きで動物に関する仕事に興味があるという方に、ぜひペットシッターもひとつの候補にしていただけるとうれしく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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