はじめに
ペットシッターの仕事では、大雨や台風、大雪の日に訪問が必要になることもあります。
保護者さんが出張や旅行で不在の場合、天気が悪いからといって、簡単にお世話を中止できない場面もあります。とくに、食事やトイレの確認、空調管理、持病のある子の様子確認などが必要な場合は、訪問そのものが大切な役割になります。
一方で、悪天候の日は、移動中の事故、道路状況の悪化、停電、雷、犬の散歩中の危険など、通常の訪問とは違うリスクも増えます。
この記事では、ペットシッターになりたい方や開業したばかりの方に向けて、悪天候の日の訪問で考えたい安全判断、犬の散歩への対応、保護者さんと事前に確認しておきたいことを整理します。
『何があっても必ず通常通りにお世話を行う』と考えるのではなく、ペットと人の安全を守るために、どのように判断するかを一緒に考えていきましょう。
悪天候の日でも訪問が必要になることはある
ペットシッターは、保護者さんの不在中にペットのお世話を行う仕事です。
そのため、予約日が大雨や台風、大雪と重なることもあります。
天候が悪いからといって、すぐに訪問を取りやめるわけにはいかないケースも少なくありません。
保護者さんが不在の場合は、お世話が必要になる
保護者さんが出張や旅行などで家を空けている場合、ペットの食事、水、トイレ、室温などを確認する人がいなくなります。
猫や小動物の場合でも、フードや水の補充、トイレ掃除、体調確認は必要です。
犬の場合は、排せつのために外へ出る必要がある子もいます。
このような場合、悪天候であっても、ペットシッターの訪問が必要になることがあります。
ただし、訪問が必要だからといって、すべてを通常の内容で行う必要があるとは限りません。
天候や交通状況、ペットの状態に合わせて、内容を調整する判断も大切です。
室内のお世話は大きく変わらないことも多い
猫や小動物など、室内で完結するお世話の場合は、悪天候でも作業内容そのものは大きく変わらないことが多いです。
たとえば、次のようなお世話です。
ただし、悪天候の日は、室内でも注意したいことがあります。
雷の音に驚いて隠れてしまう子、気圧の変化で落ち着かなくなる子、あるいは、停電によって空調が止まる可能性にも配慮したいところです。
室内のお世話だから安心と決めつけず、環境の変化にも目を向けることが大切です。
無理に訪問することが正解とは限らない
悪天候の日の対応で大切なのは、『訪問するか、しないか』だけで判断しないことです。
もちろん、ペットのお世話が必要な場合は、できる限り対応を考える必要があります。
しかし、道路が冠水している、暴風で外出が危険、公共交通機関が止まっている、警戒レベルが高いといった状況では、シッター自身が事故に巻き込まれる可能性もあります。
シッターが安全にたどり着けなければ、お世話を続けることもできません。
悪天候の日は、ペットの安全、保護者さんの希望、シッター自身の安全を分けて考えず、すべてを含めて判断する必要があります。
事前に保護者さんと決めておきたいこと
悪天候の日の対応は、当日になってから考えると迷いやすくなります。
シッターのお世話に入る前には、基本的に数日前に事前打ち合わせを行います。その時にはおおよその天気予報が出ているはずですので、その段階で、悪天候時の対応について確認しておくと安心です。
悪天候でも訪問が必要か確認しておく
まず確認しておきたいのは、悪天候の日でも必ず訪問が必要かどうかです。
たとえば、猫のお世話でフードや水に余裕がある場合、天候によっては訪問時間を遅らせる判断ができるかもしれません。一方で、持病がある子、体調確認が欠かせない子、排せつ確認が必要な子の場合は、時間の調整が難しいこともあります。
事前に、次のような点を確認しておくと判断しやすくなります。
『悪天候時は相談のうえ対応します』だけでは、実際の場面で迷いやすくなります。
どこまで対応できるのか、どの程度調整できるのかを、できるだけ具体的に確認しておくことが大切です。
犬の散歩をどうするか決めておく
悪天候の日にもっとも判断が難しいのが、犬の散歩です。
犬の中には、室内トイレを使える子もいれば、外でしか排せつしない子もいます。
外でしか排せつしない子の場合、雨や雪でも外に出る必要が出てきます。
ただし、大雨や強風、雷、大雪の日に長時間散歩をするのは危険です。
犬もシッターも濡れて体が冷えますし、視界が悪い中で車や自転車に気づきにくくなることもあります。
事前に、次のような内容を確認しておくとよいでしょう。
犬の安全を守るためにも、悪天候の日の散歩は、通常の運動量を満たすことよりも、排せつと安全確認を優先した方がよい場面があります。

雨具やタオルの置き場所を確認しておく
雨の日の訪問では、タオルが想像以上に必要になります。
犬の体、足先、リード、ハーネス、玄関まわり、床など、拭く場所が多いからです。
シッター自身でタオルを用意していても、足りなくなることがあります。
そのため、保護者さんにも事前に、ペット用タオルを多めに用意してもらえると安心です。
あわせて、次のようなものの有無も確認しておくとよいでしょう。
雨具がない場合の対応も、事前に相談しておくと安心です。

わたしの場合、保護者さんが犬用の雨具を持っていないときは、透明のゴミ袋などを使って簡易的な雨具を作ることもあります。
もちろん、犬が嫌がる場合や、動きにくそうな場合は無理に着せず、短時間の排せつだけに切り替えるようにしています。
使い捨てにできるので扱いやすいのですが、未使用の物とはいえゴミ袋を犬に着せてしまう形になるため、必ず事前に保護者さんの了承を得ておくようにしています。
『濡らさないための工夫』も、保護者さんによって受け止め方が違うことがあります。
よかれと思って行ったことでも、事前確認がないと不安につながる場合があるため、ひとこと確認しておくことが大切です。
犬の散歩は安全を最優先に考える
悪天候の日の犬の散歩では、『普段の散歩量をこなすこと』よりも、安全に排せつを済ませることを優先した方がよい場面があります。
とくに、大雨、強風、雷、大雪、路面凍結がある日は、散歩中の危険が増えます。
排せつ目的なら短時間で済ませる
外でしか排せつしない犬の場合、悪天候でも外へ出る必要があることがあります。その場合は、散歩というよりも、排せつのための短時間外出と考えるとよいでしょう。
長い距離を歩くのではなく、家の近くで安全に排せつできる場所を選び、できるだけ短い時間で戻るようにします。
その際は、次のような点に注意します。
雨の日は、犬が急に走り出したり、音に驚いて後ずさりしたりすることもあります。
リードやハーネスが緩んでいないか、外に出る前に確認しておくことも大切です。
雷や強風の日は無理をしない
雷が鳴っているときや、台風や突風などで風が強い日は、犬が強い不安を感じることがあります。
雷の音に驚いてパニックになる子もいますし、風で看板や枝が動く音に反応する子もいます。
その状態で外に出ると、逃走や転倒、交通事故につながる可能性があります。
保護者さんから「排せつのために外へ出してほしい」と依頼されている場合でも、雷や強風の状況によっては、すぐに外へ出ない判断が必要になることもあります。
そのため、事前に『雷が鳴っている場合は、少し様子を見てから外へ出る』『危険と判断した場合は散歩を短縮または中止する』などの取り決めをしておくと安心です。
危険が大きいと判断したとき、無理をしないことも大切な責任の取り方です。
屋根のある場所に移動する場合も確認が必要
犬によっては、車に乗せて屋根のある場所まで移動し、そこで排せつを済ませる方法を取ることもあります。ただし、この方法は、どの犬にも向いているわけではありません。
車が苦手な子、乗り降りで興奮しやすい子、知らない場所で不安になる子もいます。
また、車に乗せる場合は、ペットシッター側の車に乗せてよいか、保険や安全対策はどうするかも考える必要があります。
屋根のある場所へ移動する対応をするなら、事前に保護者さんへ確認しておきましょう。
悪天候の日は、『少しでも濡れない場所へ連れて行ってあげたい』と考えたくなります。
しかし、移動そのものが犬の負担になることもあるため、犬の性格や体調に合わせて判断することが大切です。
室内のお世話でも停電や雷に注意する
猫や小動物など、室内でお世話が完結する場合でも、悪天候の日は確認したいことがあります。
とくに注意したいのが、停電、雷、空調、窓やカーテンの状態です。
夏場は停電による室温上昇に気をつける
雷や強風の影響で停電が起こることがあります。
夏に停電すると、エアコンが止まり、室温が上がってしまう可能性があります。
とくに、暑さに弱い犬や猫、シニアの子、持病のある子、小動物は注意が必要です。
保護者さんが遠方にいる場合、停電にすぐ気づけないこともあります。
訪問時に異変を感じたら、写真や状況を添えて早めに連絡することが大切です。
また、停電後に電気が復旧しても、エアコンが自動で再起動しない機種もあります。
夏場の長期不在では、停電時の対応を保護者さんと事前に相談しておくと安心です。
各地域の電力会社では、停電情報を確認できるページを用意していることがあります。悪天候の日は、必要に応じて地域の停電情報も確認しておくと安心です。
雷が苦手な子には環境づくりが必要なこともある
雷が苦手なペットは少なくありません。
犬の場合は震える、吠える、隠れる、落ち着きなく歩き回るといった反応が見られることがあります。
猫の場合は、押し入れやベッドの下などに隠れて出てこないこともあります。
保護者さんによっては、「雷の日は電気をつけたままにしてほしい」「カーテンを閉めておいてほしい」「テレビやラジオをつけておいてほしい」といった希望があるかもしれません。
シッターが自己判断で家電を使う場合は注意が必要です。
保護者さんの許可なくテレビやエアコン、照明などを使うと、電気代や設定変更の面で不安につながる可能性もあります。
雷が苦手な子への対応は、保護者さんの希望を確認したうえで行うようにしましょう。
窓や換気の状態も確認する
悪天候の日は、窓の閉め忘れや雨の吹き込みにも注意が必要です。
訪問したときに窓が開いている、換気口付近から雨が入り込んでいる、ベランダの物が倒れているといったことがあれば、その旨を保護者さんに連絡したうえで対応しましょう。
ただし、家の設備や物の移動は、勝手に判断しすぎない配慮も大切です。
たとえば、窓を閉める、カーテンを閉める、倒れた物を安全な場所に寄せるといった対応は必要になることがあります。一方で、家電のコンセントを抜く、ブレーカーを操作する、家具を大きく動かすといった対応は、事前確認や保護者さんへの連絡が必要です。
悪天候の日は、ペットだけでなく、家の中の変化にも目を配るようにしましょう。
当日の判断は記録と連絡を残す
悪天候の日は、予定していた内容をそのまま行えない場合もあります。
散歩を短縮した、訪問時間が遅れた、雷のため外に出るのを見合わせた、停電の可能性があったなど、判断が必要な場面では、記録と連絡がとても大切です。
到着が遅れそうなときは早めに連絡する
大雨や雪の日は、道路の渋滞、冠水、公共交通機関の遅れなどで、到着時間がずれることがあります。
遅れそうなことがわかった時点で、できるだけ早めに保護者さんへ連絡するようにしましょう。
報告は、たとえば次のような文章で行うとよいでしょう。
本日、悪天候の影響で道路が混雑しているため、到着が予定より少し遅れる可能性があります。安全を確認しながら向かいますので、到着次第あらためてご連絡いたします。
連絡がないまま遅れると、保護者さんは不安になります。
悪天候の日ほど、こまめな連絡が安心につながります。
悪天候の日は、予定変更や緊急判断が必要になることもあります。
保護者さんと連絡がつかない場合に備えた考え方は、こちらの記事でも整理しています。
お世話内容を変更した理由を報告する
悪天候の日に、散歩時間を短くしたり、外出を見合わせたりすることがあります。
その場合は、ただ「散歩は短めにしました」と書くだけでなく、理由もあわせて伝えるようにしましょう。保護者さんにも理解してもらいやすくなります。
たとえば、次のような報告です。
雨風が強く、道路の見通しも悪かったため、本日は排せつ確認を中心に短時間で戻りました。帰宅後は足と体をタオルで拭き、室内では落ち着いて過ごしています。
雷の音に強く反応していたため、すぐに外へ出るのは危険と判断し、少し様子を見ることにしました。その後、雨が弱まったタイミングで短時間だけ外へ連れ出しました。
判断の理由を残しておくと、保護者さんにも納得してもらいやすくなります。シッター自身を守る意味でも、事前に決めていた内容と違う対応をした場合は、理由とあわせて記録しておくことが大切です。
写真だけでなく状況説明も添える
ペットシッターの報告では、写真があると安心感につながります。
ただし、悪天候の日は、写真だけでは伝わりにくいこともあります。
雨の強さ、犬の様子、室温、雷への反応、散歩を短縮した理由などは、文章で補足した方がわかりやすくなります。
お伝えしたい情報がある場合には、たとえば、次のように知らせるとよいでしょう。
玄関前は雨で濡れていましたが、室内への雨の吹き込みはありませんでした。エアコンも作動しており、室温は問題ありませんでした。
散歩後は足元がかなり濡れたため、保護者さんにご用意いただいたタオルで拭いています。追加でこちらのタオルも使用しました。
どのように判断し、どのように対応したのかが伝わると、悪天候の日でも保護者さんは安心しやすくなります。
無理をしないためにも事前の取り決めが大切
悪天候の日の訪問は、ペットシッターにとって判断が難しい場面のひとつです。
『頼まれたから全部やらなければ』と考えすぎると、シッター自身が危険な状況におちいってしまうことがあります。一方で、「天気が悪いので行けません」とだけ伝えると、保護者さんには心配を抱かせることになってしまいます。
だからこそ、事前の取り決めが大切です。
悪天候時の対応は、初回打ち合わせの段階で確認しておくと安心です。
初回打ち合わせで聞いておきたい項目については、こちらの記事でも詳しくまとめています。
契約前に悪天候時の対応を伝えておく
開業したばかりの頃は、悪天候時の対応まで細かく考えていないこともあるかもしれません。ですが、実際には、大雨、台風、大雪、雷、停電などは、どの地域でも起こる可能性があります。
契約前や初回打ち合わせの段階で、次のような内容を伝えておくと安心です。
ここをあいまいにしておくと、当日になって『どこまで対応すべきか』で悩みやすくなります。
悪天候時の対応は、シッター側の都合ではなく、ペットの安全を守るためのルールとして伝えると、保護者さんにも理解してもらいやすくなります。

対応できない状況も明確にしておく
悪天候の日でも、できる限り対応したいと思うシッターは多いと思います。とはいえ、シッター自身に命の危険があるような状況では、無理をしない判断も必要です。
たとえば、次のような場合です。
このような状況では、訪問時間の変更、内容の調整、緊急連絡先への相談などを検討する必要があります。
「どんな状況でも必ず行きます」と約束してしまうと、シッター自身を追い込むことになります。
対応できる範囲と、危険時の判断基準は、あらかじめ決めておきましょう。
ひとりで判断しない仕組みを作る
悪天候の日は、判断に迷うことがあります。
そのため、保護者さんの連絡先だけでなく、緊急連絡先、かかりつけ動物病院、必要に応じて近隣の家族や知人など、連絡できる先を確認しておくと安心です。
もちろん、個人情報の扱いには注意が必要です。
連絡先を預かる場合は、どのような場面で使うのかを説明し、保護者さんの了承を得ておきましょう。
ペットシッターはひとりで訪問することが多い仕事です。
だからこそ、困ったときに誰へ連絡するのかを決めておくことが、悪天候の日の落ち着いた対応につながります。
まとめ|悪天候の日は『がんばる』より『安全に判断する』
悪天候の日の訪問では、ペットのお世話を続ける責任と、無理をしない判断の両方が必要になります。
保護者さんが不在の場合、大雨や台風、大雪の日でも、食事、水、トイレ、室温の確認が必要になることがあります。
犬の場合は、排せつのために外へ出る必要がある子もいるでしょう。
ただし、悪天候の日に優先すべきなのは、予定していた内容をすべてこなすことではありません。
ペットの状態、天候、道路状況、雷や停電の可能性、シッター自身の安全を見ながら、その日の状況に合った対応を選ぶことです。
そのためには、初回打ち合わせや契約前の段階で、悪天候時の訪問、散歩の短縮、停電時の対応、緊急連絡先などを確認しておくことが大切です。
ペットシッターの仕事は、ただ訪問するだけの仕事ではありません。
その場の状況を見て、ペットと保護者さんにとって安全な方法を考える仕事です。
悪天候の日こそ、無理にがんばるのではなく、落ち着いて、安全を優先した判断をしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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